第72話

「いや~、これ4人までしかいけなくてさ」


「お金ならちゃんと払うし~。

 ね~、ありさいいでしょ?」


「ん~、どうでしょうねえ」


クラスメートとありさの会話を無視していると、ありさを見つめる人物が1人いた。

あれはえっと…松本…梓さんだっけ。


そういえばいつも私とありさが喋ってると、ありさの事を見ていたような。

ありさの事、好きなんか?


「ねえ、松本さん、良ければ一緒に行かない?」


急に美咲に名前を呼ばれた梓は、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をした。


「え、僕?」


部活は美術部で、よくコンクールで賞を貰っていると聞いた事がある。

背は美咲より低いが、それでも165cmはある。

物静かではあるが、たまにありさと楽しそうに話してる姿もしばしば見掛けている。


一人称は「僕」

確かに見た目はボーイッシュで、髪型はショートカットでアシメ。

髪色はやや明るめの茶髪。

こちらもぱっと見た感じは男の子に見える。

漫画に出てきそうな、女子にモテそうな人だなと思った。


「プール嫌い?」


「いや、そんな事ないけど…。

 てか、僕より他の人の方が行きたいんじゃないの?」


「いいじゃん、梓。

 前から遊ぼうって約束してたし」


嬉しそうに答えるありさを見た梓の顔が、少しだけ赤くなった。


「澪はいい?」


「うん、いいよ」


「という訳で、他の皆様はまた次回参加しておくれ~」



放課後。


「美咲、水着無いって言ってたよね」


鞄に荷物をしまいながら、澪が話しかけてきた。


「あ~、うん。

 去年の水着捨てちゃったはず」


「これから一緒に買いに行く?

 あたしも新しい水着欲しいし。

 ありさにも行こうって言ったんだけど、店の手伝いがあるから2人で行っおいでって」


「そっか。

 …少し待ってもらえるならいいよ」


「何か用ある?

 あるなら別の日でも…」


「いや、すぐに終わると思うから。

 どっかで待ってて。

 終わったら連絡するから」

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