第52話

「はあ~、もう食えねえ~」


大盛りのオムライスを、ぺろりとたいらげたありさは、そのまま寝転がる。


「おい、皿片付けてから寝転がれ」


まだ食事を終えていない美咲が言う。

同じく食事中の澪は、2人のやり取りを黙って見ている。


「うっせえなあ、お母さんかよ」


「貴様なんざ産みたくねえ」


「おいこら、どういう意味だ、こら」


「言葉通りに決まってんだろ、ばぁか」


「てんめえっ!」


「まだご飯食べてるんだから、静かにしなさいっ!」


「やっぱお母さんじゃんっ!」


体を起こすとぷくっとほっぺたを膨らませながら、自分の皿を片付けたありさは、鞄から取り出した煙草を持ち出し、そのままキッチンの換気扇の所で煙草を吸い始めた。


「騒がしくてごめんね」


申し訳なさそうな表情を浮かべながら、美咲はそっと澪に謝る。


「ううん、気にしないで。

 うちもご飯の時は騒がしいし。

 妹がありさに似てるから、なんかおかしくて」


ニコニコしながら答える澪を見て、ほっとする美咲。


2人同時に食べ終わり、澪が皿を運ぼうと立ち上がろうとすると、美咲はそれを制し、澪の分の皿も持ってキッチンに向かった。

戻ってくると、紅茶が入ったマグカップを澪に差し出した。

煙草を吸い終えたありさが戻ってくると、当然のようにありさの分の紅茶は用意されていない。


「なんであたしの分は無いのですか~っ!」


「いちいちうるせえな、自分で用意しろよ」


「澪には優しくして、あたしには優しくしてくれない~っ!

 もう離婚よっ」


「澪、あのアホは放っておいていいからね」


「えっ!?」


「よ~く~な~い~っ!!!!!」


「冷蔵庫の中にアクエリ入ってるから、それでも飲んどけっ!」


「いやっふ~、よくやった~っ」


ご機嫌でキッチンから戻ってくると、澪と対面するように腰を下ろした。

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