第51話

「そういえば、彼氏に逢うとか言ってなかったっけ?」


美咲の一言に反応を見せる澪。

その反応を見逃さない2人。


「彼氏と何かあった?」


ありさの言葉に、どう答えようか考えているのかが解る。

無理強いはしたくない。


「言いたくなかったら、言わなくていいからね」


言いながら、ありさが煙草に火をつける。

その動作に驚く澪は美咲の顔を見た。

美咲の手にも煙草の箱があり、1本取り出して火をつける。


「美咲も吸ってるの?」


澪がやっと発した言葉がそれだった。

2人とも顔を見合わせると苦笑いをする。


「この事はご内密に。

 学校では吸ってないからさ」


「嘘つけ、この前屋上で吸ってたじゃん」


「余計な事を言うでないっ」


「澪、こいつの発言の8割は嘘だから、迂闊に信じない方がいいよ」


「貴様、親友を裏切る気かっ」


「親友?

 へ~、ふ~ん」


「てめえっ、表出ろっ」


「1人で出ろっ!

 そんで帰れっ!」


2人の言葉のやり取りに、最初は戸惑った澪だったが、段々おかしくなってきた。

気が付いたら2人を見て笑っていた。


「あ、笑った」


ありさが澪を見ながらニカッと笑う。


「美咲ってそういうキャラだったの?」


興味津々という顔をしながら美咲に尋ねる。

それに対し、ありさが横から乱入する。


「こいつ学校じゃネコ被ってるけど、普段はこんなんだよ。

 学校だと人見知りしてるのもあるから、あんまり喋らないけど」


「しょうがないだろ、人に慣れるまで時間がかかるんだから」


「かかりすぎ」


「意外な一面を見た気がする」


「これからいくらでも見れるって。

 あ、そうだ。

 澪もご飯食べてく?

 今晩のご飯はオムライスだよん」


「出前でも取るの?」


「ありさの母ちゃんが生んだ卵を大量に貰ったから、オムライスを作る事になったんだ」


「美咲が作るの?」


「うん。

 料理は嫌いじゃないし」


「じゃあ…食べて行こうかな」


「だってさ。

 ほら、早く作れ。

 腹減った~、腹減った~」


「うっせえな~、解ったよ」


ぶちくさ言いながら、キッチンに向かう美咲だった。

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