第44話

少し考えてから、ゆっくりと口を開いた美咲。


「んとさ、私が言う事じゃないのは重々承知なんだけど…。

 そんな奴とは別れちゃえばいいんじゃないかな。

 浮気したりする奴は駄目だと思う。

 まして、そんなに放っておくのも酷いし。

 大事にされてなんぼじゃないかな」


敢えて澪と視線を合わさず、黒板の方を見ながら話す美咲。

蛍光灯に照らされた美咲の髪が、よりいっそう綺麗な色を放っている。

美咲の言葉を聞き終えた澪は、今度は本当に独り言を呟いた。



「美咲が彼氏だったらよかったのに」



消え入りそうな声だったが、この静寂の中で聞き逃す事もない。

慌てて澪の顔を見る美咲に、澪は先程のように悪戯な笑みを浮かべ、冗談だよと言った。


「日誌も書き終わったし、先生のとこに行こうか」


「あ、うん」


「ほらほら、行こう」


教室の電気を消し、職員室に向かい、久保に日誌を渡した。

2人でそのまま正門まで向かう。


「じゃあ、私駅に行くから」


「乗せて行こうか…ってメットないや」


「大丈夫だよ、ありがとね」


精一杯の笑顔を浮かべ、澪は歩いて行った。

澪の後姿を少し見届けた後、美咲はバイクが停めてあるありさの家に向かった。

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