第22話

相手からボールを奪おうとした時、バランスを崩して転んでしまった澪。

すぐに起き上がろうとしたが、苦痛に歪む表情。

足首を痛めてしまったのだった。


「あっ、澪ヤバいよ」


試合は一時中断。

ありさの言葉を聞き終える前に、澪の元に駆けつけた美咲。


「佐山さん、大丈夫?」


「た、田山さん…。

 ごめん、大丈夫…じゃないかも…」


痛みのせいで涙目になる澪。

久保もすぐに駆け付けた。


「あちゃ~、捻っちゃったか。

 保健委員っ、ちょっと澪を保健室に…」


久保が言い終わる前に、軽々しく澪を抱き抱えた美咲。


「私が連れて行きます」


その場を目にした人達の、悲しみと驚きの絶叫が体育館にこだまする。


「え、だって美咲は保健委員じゃないじゃん」


「自分、力はあるんでこのまま抱えて行った方が早いかと。

 佐山さんもかなり痛がってるし、早く保健室に連れて行ってあげないと」


「ん~、解った。

 じゃあ、よろしくね」


「はい」


美咲が澪を抱えて、体育館の出入り口に歩いて行く。

それを見ていた人達は、口々に「自分も抱っこしてほしい」と言っていた。

歩く速度をやや速め、保健室へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る