第11話

10分くらいは経っただろうか。

ガラガラとドアが開き、久保が笑顔を覗かせる。


「迎えに来たよ~。

 じゃあ、行こうか」


足取りが非常に重い。

逃げ出すのは今だろうか。

そんな事を考えていると、不意に久保が話しかけてきた。


「田山さんは背が高いよね。

 何cmあるの?」


「えと、確か175cmだったと思います」


「そんなにあるんだ、羨ましいなあ。

 細いし、モデルとかやればいいのに」


「いやあ、興味ないですもん」


「勿体無いなあ。

 私なら迷わずやるのに」


そう言いながら、くすくすと笑う。

なんというか、可愛らしい人だなあと思った。

悪い人ではなさそうだ。


「田山さんは背も高いし、格好いいから、きっとモテモテだよ」


「あんまり注目されたくないんですけどね。

 てか、女子にモテましても」


言いながら、困った笑顔を浮かべる美咲。


「そうなの?

 きっと明日の朝は、下駄箱にたくさんラブレター入ってるよ」


「無いですよ~」


すると、久保はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「賭ける?」


なんとなく引き下がるのは悔しい。


「いいですよ」


「もし1通でも入ってたら、私の勝ちだね」


「先生が勝ったらジュースでも奢ります。

 私が勝ったらどうします?」


「ん~、そうだなあ。

 ジュースを奢ってあげる~」


目が合うと、お互いに笑ってしまった。

気を遣って笑わせてくれたのだろうか。

そうだとしたら、とてもありがたい。

今のやり取りで、少しだけ気持ちが落ち着いた。


「さ、ここがうちのクラスよ。

 私が呼んだら入ってきてね」

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