第19話

「まだまだいっぱいあるんだから、いっぱい食べなよ~」


キッチンの方からみどり声。

こんな風に、ありさの家でご飯を食べるのは久し振りだ。

やっぱりみどりちゃんの作る、ミートスパゲティは美味い。


「美咲~、学校はどうだった~?」


キッチンから居間に戻ってきたみどりが、煙草に火をつけながら美咲に問う。

ニヤリと笑うありさに、言葉を探す美咲。


「つまんなかったの?」


「いや、つまんなくはなかった、かな」


「も~さ、みさきちの自己紹介まじで面白かったんだよっ!」


「面白くないからっ!

 こっちは必死に話したというのにっ!」


「ムービーは撮ったの?」


「流石にそれは出来んかったわ~」


「人の苦労も知らないで呑気な事を…」


腹も満たされ、眠気に襲われるも、なんとかそれに耐える美咲とありさ。

先に口を開いたのは美咲だった。


「そういえば、佐山さんとありさは知り合いなの?」


「あ~、澪とは去年同じクラスだったんだ。

 面白い子だよ」


「確かに面白そうな感じだったよね。

 ちょっと挙動不審だったけど」


「あんなに挙動不審な澪、初めて見たよ。

 どうしたんだろ?」


「まあ、いいんじゃない?」


「隣同士なんだし、みさきちもすぐに仲良くなれるよ」


「うん、そうだね」


夕方になったので、自宅に帰る事にした。

帰り際にみどりから、昼の残りのミートソースを大量にいただいた。


家路を辿っている間、なんとなく澪の顔が浮かんだ。

早く仲良くなれたら嬉しいなという気持ちが、いつまでも溢れていた。


~余談~


次の日の事。

美咲の下駄箱には、大量のラブレターが押し込まれていた。

そう、今この学校で美咲を知らない者はいない。

久保との賭けには見事に負け、ジュースを奢ったのは言うまでもない。

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