第89話

「いやあ~、遊んだ遊んだ」


ご満悦の様子のありさ。


「梓とありさは、ずっと流れるプールで流されてたの?」


「いや、ちゃんと波のプールにも行ったよ。

 でも、やっぱり流れるプールが1番楽しかった」


少し日に焼けた梓も楽しそうな表情をしている。


「これからどうすんの?

 これで解散?」


本日2本目のコーラを飲みながら美咲が言う。


「何を仰るうさぎさん。

 夜はまだまだこれからではないか。

 とりあえず地元に戻って、駅から少し歩いた所にある公園に向かうよ~」


「何すんの?

 すいか割り?」


「楽しい花火~」


「花火買ってないよ?」


「駅の近くにあるスーパーで買えばいいよ」


地元に着いてからは、すぐにスーパーに向かった。

お得用花火をたくさん買い込み、ついでにジュースやお菓子も買い、公園へと歩く。


美咲達と同じく、家族連れが花火を楽しんでいた。

少し離れて所に場所を移すと、早速袋から花火を取り出し、誰よりも先に火をつけるありさ。

それに続いて梓や澪も火をつけた。

美咲はといえば、花火には火をつけず、煙草に火をつけて吸い始めた。


「みさきちも早く花火やりなよ~。

 じゃないとあたしが全部やっちゃうぞい?」


なんとも楽しそうな顔をしながら、美咲に言うありさ。

笑いながら花火を取り出し、火をつけようとした。

すると、澪が近付いてきたかと思うと、火を分けてくれた。


しゅわ~っと音を立てながら、綺麗な火花が飛ぶ。

色取り取りの火が、美咲と澪の顔を染めていく。


「綺麗だね」


「うん、綺麗だね」


いい雰囲気も束の間、走り回って花火を振り回し騒ぐありさが五月蝿い。

持っていた花火が終わると、こっそり買ったねずみ花火に火をつけ、ありさの足元の近くに放り投げた。

慌てるありさを見て、3人で笑った。


ありさがトイレに行くと言い、梓も一緒について行ってしまった。

ベンチに残された2人は、ジュースを飲みながら休憩して2人を待つ事に。


「楽しい時間はあっという間だよね。

 もうこんな時間だもん」


「楽しい時間は経つのが早いもんな~」


「だよね。

 またこうやって遊びたいな」


「夏休みの間は、都合が合えばいくらでも遊べるよ。

 ありさもお盆とかなら、店も休みだろうし」


「そうだね。

 …ねえ、この前話した事覚えてる?」


「ん?」


「看病のお礼の事」

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