第88話

美咲の携帯が鳴った。

ありさからの着信である。


「もしもし?

 ああ、今流れるプールに向かってる。

 テーブル?

 解った、そっちに向かうよ」


無事にありさ達と合流し、「浮き輪は持ってきてやったんだから、膨らますのは自分でやれ」と、しれっとした顔で浮き輪をありさ渡す美咲。

散々文句を言ったものの、聞き入れてもらう事が出来なかった為、梓にも手伝ってもらい、2つの浮き輪を膨らました。

「ああ、あそこに持ってくと無料で空気入れてくれるの忘れてた」と、棒読みで言った美咲に対し、怒りを露にしたありさだったが梓に止められたのだった。


適度に休憩を取ると、流れるプールに入った。

それまでの暑さは何処へ。

水中はとても冷たく、火照った体をすぐに冷やしてくれた。


浮き輪は2人で1つ使う事になり、1つはありさと梓。

もう1つは美咲と澪とで使った。


暫く遊んでから昼食をとる事にした。

美咲と梓が買いだしに行き、澪とありさはテーブルの確保に回った。

焼きそばやフランクフルトにおにぎり、更にはおでん等を買ってきて、4人で分けて食べた。


食事が済むと、ありさは梓を引っ張って再び流れるプールに向かった。

美咲は煙草を吸いに行くと言い、澪はそれについて行った。


煙草を吸い終わると、澪は波のプールに行きたいと言うのでそちらに向かった。

海を思わせる波が寄せては返し、足元を濡らす。


はしゃぐ澪を見て笑っていた美咲に、澪が水を掛ける。

やり返した美咲を見て、子供みたいと笑う澪。

端から見れば、何処にでもいる普通のカップルのようだ。


はしゃぎすぎて足を滑らし、転びそうになった澪を抱きかかえた。

目が合うと黙ったまま、なんとなく照れてしまった。


次はスライダーに行こうと美咲が言った。

美咲の腕に自分の腕を絡ませて歩く澪。

何も言わなかった美咲だが、本当は少し照れくさかった。


スライダーは2人一緒に滑る事が可能だったので、一緒に滑る事にした。

澪を先頭にし、後方に回った美咲は、澪の腰に手を回すと、勢いよく滑り出した。

最後は豪快に終着点のプールに投げ出され、水面から顔を出すと、お互いに笑った。


ありさ達と合流し、またまた流れるプールに入る。

陽もそろそろ暮れ始めている。

「もうちょいしたら出よう」というありさに、3人は首を縦に振った。

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