第7話

大まかな片付けが終わったのは夕方だった。

もっと時間がかかるかと思っていたが、思いのほか早くに片付いた。


腹も減ってきたし、近くのコンビニまで行く事に。

適当に買った弁当やお茶を胃袋に流し込み、満腹になるとそのままその場に寝転ぶ。


「食った後に寝転ぶと、牛になるなんて誰が言い始めたんだろう」


「何で牛なんだろうね」


暫く寝転んでから起き上がり、煙草を持ってベランダに出た。

少し肌寒い、4月の風が頬を撫でる。


続いてありさもやってきた。


「あ~、高校生が煙草吸ってる~」


言いながら、煙草に火をつける。


「私に煙草を教えたのは、誰だっけかねえ」


煙が風に舞い、煙草の匂いも同じく舞う。

無言で景色を眺めながら煙草を吸っていたが、ありさがこちらに顔を向けた。


「まあ、なにはともあれ、また一緒に学校に行けるの嬉しいよ。

 騒がしくなるなあ」


「騒がしくなる理由の大半は、ありさだけどな」


「あはは。

 同じクラスになれるといいね」


「なったらいいけども。

 どうだかなあ」


「腐れ縁だけどさ、まあ、よろしく頼むよ」


煙草を咥えながら、悪戯な笑みを浮かべたありさを見て、美咲も笑った。

そうだな、同じクラスになれたらいいね。


始業式まであと1週間。

高校2年生が幕を開けようとしている。


何もかも新しい、真っ白な生活。

期待と不安に包まれながらも、密かに気合を入れた。

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