新しい日々の始まり

第8話

春の陽射しは暖かく柔らかい。

部屋の窓を開けると、この季節特有の香りが部屋の中を包み込む。


目が覚めてから間もなくして、煙草に火をつける自分。

煙草から始まり、煙草から終わるようなったのはいつからだろう。


一服してからシャワーを浴び、仕度をしてから軽い朝食を食べた。

そろそろ家を出なくては。

ヘルメットを持ち、鍵を閉めて玄関を後にする。


ヘルメットを被る。

鍵を差し込み、クラッチを握りつつスターターを押せば、心地よいエンジン音が響く。

今日も絶好調な我が愛車に体を預け、静かに走り出した。


結局バイクはありさの家に停めさせてもらう事になった。

ありさの家に着くと、家の前で待っているありさの姿があった。


「すげ~っ、本当にバイク乗ってる~っ!!!」


ありさは目を輝かせながら、美咲のバイクを見つめる。


「いいだろ~」


それに得意気に答える美咲。


「このバイク、いくらで売れる?」


「て、てめえっ、人様のバイクを売る気か!?」


「にゃっはっは、半分冗談っ☆」


「半分は本気なのか…」


そんなやり取りをしていると、後方から名前を呼ばれた。

振り返るとありさの母、みどりが立っていた。


「うっす、美咲。

 久々だなあ」


「おはよう、みどりちゃん。

 ごめんね、バイクの事」


「気にする事ないよ。

 てか、謝る事もないし、そんなん気にする間柄でもないだろ。

 ほれ、早く行かないと遅刻すんぞ~」


相変わらず元気なみどりちゃん。

この人と話すと、昔から元気を貰えるんだよなあ。

そんな事を考えながら、ありさと学校へ向かった。

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