第48話
涙は出なかった。
卓也のあの驚きまくった顔には、ちょっと笑いそうになってしまったけど。
勢いよく卓也の部屋を開けると、卓也の上に跨り、腰を振っていた女の子。
襖が開いた瞬間に2人同時に此方を向き、その表情は瞬時に固まった。
卓也は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になっていた。
口を鯉のようにぱくぱくするばかりで、言葉に出来ないようだ。
「随分よろしい事してるじゃない。
これであたしも脱いで、仲良く3人でヤろうって事?」
表情を変えないまま、冷たい声を発する。
「なっ、澪!?
なんでお前がここに!?」
本気で言っているようだ。
自分から会おうと言ってきたくせに。
固まったままの女の子に視線を向ける。
「あたしこいつの彼女な訳よ。
でも、もう今この瞬間で終わったから。
どうぞ末永くお幸せに」
短く吐き捨て、部屋を出ようとした。
すると、全裸なのもお構いなしに、跨がっていた女を押し退けると、卓也が澪の右手首を勢いよく掴んできた。
「おい、いい加減に…」
ニヤリと笑って見せる。
それが彼の苛立ちに油を注いだようだが、そんな事はどうでもいい。
「あんたばかぁ?
…ほんとにばかね」
腕を捻り、卓也の手から開放されると体勢を整える。
狙う場所は1つ。
「あんたなんかと付き合ったのは、あたしの人生の汚点だわ。
この苦しみと悲しみ、くれてやるから」
拳を作り、卓也の左頬に右ストレート。
勢いよくよろけ、そのまま尻餅をついた。
痛がる卓也の顎を蹴り上げ、倒れた卓也はぐうの音も出ない。
「さよなら」
最高の笑顔を浮かべ、早口で告げると、右足に渾身の力を込めて股間を蹴り上げた。
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