第83話

「つまり、みさきちが好きな人がいるって言ったのがショックで、上手く話せなくなったって事?」


ハンバーガーをぺろりと食べ終わり、ポテトをつまみながら澪の話を聞いていたありさ。


「うん…」


同じくハンバーガーを食べ終わった梓が澪に言う。


「なんでショックだったの?」


「なんでだろうね、解んない…」


「嘘だ、解ってるくせに」


しれっとした顔で言う梓を見る澪。


「佐山さんは、田山さんの事好きなんでしょ?

 好きでもなければ、そんなにショックを受ける事なんてないじゃん」


図星である。

まさにその通りである。

反論する事が出来ず、動揺を隠せない。


「えっ、澪はやっぱりみさきちの事好きだったの?」


思いもよらないありさの言葉に、思わず二度見してしまった。


「えっ、やっぱりって?」


「だってさ、みさきちが風邪ひいた時だって真っ先に飛んで行ったし。

 みさきちと喋ってる時の澪は、なんかこう、乙女というかなんと言うか。

 好き好きオーラ全快だったかな」


身近な人達には、もうバレていた。

むしろ自分は、美咲に対してどんだけ好き好きオーラを出していたのか。

そして、そのオーラは美咲にバレていたのだろうか。

色々考え出したら、なんだか急に恥ずかしくなってきた。


「で?

 澪はみさきちの事好きなんでしょ?」


ここまでバレてしまっているのだ。

今更「嘘です」とは言えない。


「…うん」


ありさや松本さんは、どんな反応をするだろう。

認めてしまったが、やはり気持ち悪いと思われるだろうか。


「そかそかっ、いいじゃんっ!

 美男美女カッポーじゃん」


「美男じゃ田山さん、男になっちゃうじゃない?」


「じゃあ、美少年?」


「ん~、なんか違うような」


2人は特に変わった様子を見せない。

何故?気を遣っているんだろうか?


「あたしの事、気持ち悪いって思わないの?

 女の子の事、好きだって言ってるのに」


「え?なんで?

 別に気持ち悪くないじゃん。

 澪が誰を好きになろうと自由だし。

 女だろうが男だろうが、関係ないもん」


「僕もありさの意見に同意」


自分は何で悩んでたんだろう。

目の前にいる2人は、否定せずに受け入れてくれた。

怖がる事なんて、何もなかったんだ…。

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