第55話

2人で格闘技の話を始めてから30分。

飽きてしまったありさは、帰りの支度を始めた。

それに気付いた美咲が声を掛ける。


「あれ、ありさ帰るの?」


溜息をつき、口を尖らせながら答えるありさ。


「だあってさ~、お2人さんがラブラブしながらお話してるから、あたしは邪魔かしら~って思って~」


「ラ、ラブラブじゃねえしっ」


「なんでちょっと頬を赤めてんだよ。

 嫌だねえ、いやらしいっ」


「ち、違えしっ」


同じく少々頬を赤らめていた澪が割り込む。


「あ、あたしもそろそろ帰ろうかな」


いそいそと帰る支度を始めた。

なんなんだ、この雰囲気。

なんとなくツッコミを入れたい美咲だった。


支度を終えた澪がありさに話しかける。


「ありさも電車で帰るんでしょ?」


「いや、あたしさ、みさきちに誘発されて、バイクの免許取っちゃったんだよね。

 だから、バイクで帰ります~」


「うええっ、まじでか!?」


2人の会話に割り込む美咲。


「そうなんだよ。

 大した用も無いのに、わざわざうちまでバイクを飛ばしてくるんよ~」


「そっか、じゃあ、あたしは…」


言いかけたところで。


「…よければ、バイクで送って行きましょうか?」


「えっ!?」


「ありさはまだ1年未満だから二ケツ出来ないし。

 バイクの方が電車よりは早いし」


「そうそう、女子の夜道の1人歩きは危ないよ」


「ここにいる全員女子だがな」


「とりあえずバイク乗って行きなしゃい。

 ほれ、澪のメット持ってきて」


「なんでありさが仕切ってんだよ」


スペアのメットを持ってくると、3人は駐輪場に向かった。


「こいつのへなちょこのバイクより、私のバイクの方が早いし」


「あ、てめえ、あたしの「神風王子」を馬鹿にするとは何事だあっ」


「じゃあ、競争する?

 まあ、私の勝利は目に見えてるがな」


「き、貴様ぁっ!

 よおし、勝負してやろうじゃねえか」


「先に澪の家に着いた方が勝ちな」


「勝った者に何かプレゼントは?」


「ん~、澪から熱~いキッスとか」


「「なにぃっ!?」」


「よし、決まりっ!

 よぉ~い、ドキュン!」


「あ、あの野郎っ!

 澪、乗って!」


「え!?

 あ、うんっ!」


元気よくアクセルを吹かし、夜に響き渡るエンジン音。

勢いよく走り出し、夜の街を駆け抜ける。

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