第31話

「あの、佐山さん?」


きょとんとしている澪に、改めて声を掛ける美咲。


「え、あ、ごめん。

 誰だか解らなくて。

 それより、田山さんバイクに乗ってるの?」


「うん。

 学校まで電車で行くのダルかったから、ありさの家までバイクで行って、バイク停めさせてもらって歩いて学校まで行ってるんだ。

 あ、みんなには内緒ね」


「そうだったんだ」


「佐山さんはバイクに乗った事はある?」


「ううん、無い」


「そっか。

 じゃあ、メット被ったら、ここのステップに足を乗せて。

 で、そのままここに跨って」


言われるがまま、シートに跨る澪。


「あ、あの、すっごい密着してるんですけど…」


「あ~、汗臭いけど我慢してね」


「いやいやいやっ、全然いい匂いだしっ」


「そう?

 じゃあ、走るよ。

 ゆっくり走るけど、落ちないようにしっかり掴まっててね。

 じゃあね、ありさ」


「またな~」


ありさに別れを告げると、少し吹かしてからバイクを元気に走らせた。

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