第33話

澪の家は、美咲の家とは反対の方向にあった。

住宅街の一角に、澪の家は佇んでいた。


家の前にバイクを停めると、澪がバイクから降りるのを手伝う。

澪はヘルメットを取ると、髪の毛を整えた。


ガチャッと、家のドアが開く音がした。

そちらを見ると、中から女性が出てきた。

澪の姉だろうか。


「あら、おかえり。

 彼氏?」


「ち、違うっ!」


バイクから降りてヘルメットを取り、ぺこりと頭を下げる美咲。


「同じクラスの田山美咲です」


「え、女の子!?

 ちょ~イケメンじゃん!

 でかしたっ!」


「ちょ、もういいから家に入ってよ」


顔を真っ赤にしながら、その女性を家に入れようとする澪の努力も虚しく、女性は微動だにしない。


「佐山さん、お姉さんにそこまでしなくても」


「えっ」と、驚いた顔をする2人。

見る見る笑顔になったのは、女性の方で。


「お姉さんに見える~?

 やったね、私まだいけるわ~」


「調子にのらないのっ!

 田山さん、これお母さんだから」


「え、まじで?

 若いし綺麗だから、本気でお姉さんかと…」


「気に入ったわ美咲君。

 今度うちに遊びに来てね。

 貴女になら、夜這いされたい」


「冗談に聞こえないからっ!

 てか、美咲君って!?」


「いいじゃない、美咲君。

 なんかしっくりくるし」


「確かにそうだけどもっ!

 も~、まじで家に入って!」


「はいはい、まったくもう。

 じゃあね、美咲君。

 絶対遊びに来てね」


「はい、是非伺わせていただきます」


軽く頭を下げる美咲にウインクを1つ投げると、澪の母親は家に入って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る