第66話

いつの間にか寝ていたようだ。

夕陽の眩しさに目を覚ます。


美咲は?

立ち上がろうとすると、隣に美咲が座っていたので驚いた。

今しがた起きた、と言う。

先程よりも、かなり意識がはっきりしているようだ。


熱を計ってみると37度だった。

この分なら、明日には熱も下がるだろう。


「汗が凄ぇや。

 服着替えないと」


「着替えはそこのタンスに入ってるの?」


「うん、どのTシャツでもいいから出してくれる?」


「着替える前に汗拭いた方がいいよ。

 濡れタオル持ってくるね」


澪が持ってきてくれたタオルで、腕や首、腹を拭いていく。


「背中拭いてあげようか?」


背中が1番汗が凄い。

しかし、拭いてもらうのはなんだか恥ずかしい。


「い、いや、いいよ、大丈夫」


「なに照れてんの~。

 ほらほら、背中出して」


仕方がなく、言われるまま澪に背を向けて服を捲る。

背中にタオルの感触が当たり、冷たさが背中を走っていくと、不快感が拭われていく。


「どっか拭いてほしいところある?」


「いや、ないよ。

 ありがとう、もう大丈夫」


ふと、タオルの動きがぴたりと止まった。

すると、ペタっと澪の手が背中に触れた。

一瞬体がビクリと反応してしまう。


「あの……澪さん?」


「あ、ごめんっ!!!!!!

 綺麗な背中だったから、思わず触っちゃったっ!!!」


慌てて手を戻し、捲り上げたままの服を下ろした。


「澪のドスケベ」


「ち、違っ!?

 女同士だから恥ずかしくないでしょ、もうっ!!!」


恥ずかしがる澪が可愛くて、そっと手を伸ばし、澪の頭をくしゃっと撫でた。


いきなりの出来事に、大きな目を更に大きくして驚く澪。


「さて、腹が減ったな~」


腕を大きく上に伸ばしながら美咲が言った。


「お粥はもうないよ?」


「じゃあ、うどんでも茹でるかな。

 澪も食べる?」


「うん。

 じゃあ、あたしがやるよ」


「いいよ、私がやるって」


キッチンに向かおうとした美咲の腕を掴んだ瞬間、床に足を滑らせた澪。

咄嗟に澪を受け止めた美咲だが、バランスを崩してしまい、そのまま後ろに倒れてしまった。

間一髪のところで体勢を整えた為、幸い頭は打たなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る