はじまり

第1話

新しい生活が始まる。

それまでの生活は、先程終わりを迎えた。


「さよならしようか」


告げられた言葉に対し、抗議の言葉を探さなかったのは、きっとこうなる事を解っていたから。

そして、相手に対する気持ちも、もう殆ど無かったからかもしれない。


なんとなく付き合った。

簡単なきっかけで知り合って、よく話すようになって。

バイクの良さを教えてもらい、高校生になったらすぐに免許も取って。

バイトも頑張ってバイクも買って、2人でよく出かけた。


音楽もたくさん教えてもらったし、本の世界の素晴らしさも教えてもらった。

知らなかった世界を見せてくれた。

少し年上のお兄さん的な「彼氏」だった人。


「そっか。

 じゃあね」


短いさよなら。

すぐに背を向けて歩き出したのは自分だった。

我ながら、素っ気ないなと思う。

ふと思い出す顔は、せめて楽しかった日々の彼であってほしい。

なんて、自分勝手な言い分を並べてみたり。

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