第6話『お前の席ねぇから』

前回のあらすじ


レンに杖を使った魔法ではなく殴られそうになり魔導書が燃えました。


『マスター、何か雑くないか?』


「レンが腹立つからって雑くないよ。」


『…(根に持っている様だ。)』



『受け取れマスター。』


燃えている本を目の前に浮かしてきたゼウスを首を横に振って全力で拒否する。


「僕まで燃える!!火傷する!!」


『あぁすまない。ほら、今度こそ受け取れ。』


ポンポンと手で火を払い手渡しするゼウス。


「火傷してない?」


『私に状態異常は効かん。問題ないぞ。』


「そう。ありが…」


本を見て驚いた。

ゼウスの光杖と同等の高難易度クエスト+親密度イベをとてつもなく繰り返してやっと貰える【ブックオブゼウス】という神の魔導書だった。


1話でも言ったけど超高難易度クエストと言われている理由は最強のゼウスが使えないから!!ゼウスが来る前のレベルカンストパーティーでもキツいからだよ!!

そして新密度イベに至っては確率だからね!


転生前の僕はゼウスの光杖が精一杯で魔導書は心が折れたんだよね。

こんな容易く貰えると僕の苦労って一体…


でも白い本に光背ってやば。強そ。


『気に入ったか?』


「…トッテモ。」


「では魔導書の説明するぞー!」


スピルカ先生は大きめの星空の綺麗なデザインの魔導書を見せてくれた。


「魔導書とは召喚獣と一緒に戦う為に大切な物だ!

これがあればパートナーの出せる技などが分かる!

そして自分の魔法指南書でもあるのだ!

中身を見てみろ!」


本を開いて見ると


【ゼウス】

神族:URランク

属性:雷・光属性


オリュンポス十二神の1人、全知全能の最高神である。天空神とも。

姉であり妻であるヘーラーを置いて沢山の神や人間の女性と関係を持ち、沢山の神の父親である。ポセイドン、ハデスと兄弟である。


「…」


リア充め…。


『お、私のページだな!えーと…む、何だこの偏りの酷い文は!最初の文だけで良かろう!』


ゼウスが自分で用意したのに。無視しよ。


次へ捲るとゼウスの出来ることが書いてある。えーとなになに?


【何でも出来る。】


説明!!?


「ど、どゆこと?」


『マスターが指示をくれればその通りに動けるぞ、という意味だ!』


「そ、そう…」


彼がそう言うならそうなんだろう。

次はスキルの説明だ。


 固定スキル

【全知全能】


 所持スキル

【状態異常無効化EX】

【即死無効化EX】

【魔法無効化EX】

【物理軽減EX】


全知全能…固定スキルって召喚士と共有出来るスキルだよな。それに確かEXって強化MAXに反射付きっていうやつでは…?


こんなのあったんだ…。

魔導書はメニューコマンドのステータスで見えるくらいでこんな本としては見えなかったからかな。


僕のページはーっと…


【エクス=アーシェ】


あった!どれどれ…


『今のマスターは雷魔法ならぜーんぶ使えるぞ!』


ぜーんぶ?


残りのページは全部初級から究極までの雷魔法と初級から究極までの回復魔法が。


『マスターは私の固定スキル、全知全能で全ての魔法を覚えられるぞ!』


全てって…あれ!?

この魔導書ほぼ僕のことじゃん!!?

しかも強っ!!


「中身ペラペラーっと見たか?

注意点を説明するぞ!完成した魔導書はパートナーの力によって作られた物だから本の見た目がみんな違う!」


確かに。アークエンジェルの頃は白いまっさらな本って感じだったけど今は…


白と金の神々しいデザインに小さな光背付き。光背は浮いている。


「だから召喚獣がどんな奴か、属性は何かとバレる可能性もある!クラス代表はもうバレてるけどな!」


そうだよね。


「属性で有利不利が決まるから気をつけるように!」


「ヨシュア、本見せて。」


「うん。ほら」


ヨシュアの本は赤く、炎が周りに揺らめいている。


「えっ!?火傷しない?!」


「あはは、しないよ。

プロメテウスのデザインなんだって。」


『誰が好き好んでマスター傷付けんだよ。』


見た目ヤンキーなのに良い奴だ。


「メルトちゃんのは?」


「私のはこれよ!」


メルトちゃんの本は金ピカだった。

アテナは自慢げな笑顔を向けている。


「皆を護れる魔法がとても多いの!嬉しい!

ありがとう、アテナ!」


『マスターのご希望にお応えできたようで何よりです。』


「あら?これ何かしら?」


本に何か書いてあったらしく、メルトちゃんがページを触る。するとアテナがシャンっという音を立て鎧を身に纏い、大きな盾と槍を持った武装状態になった。


「あら。」


『マスター、これは今使い時ではございません。』


「そ、そうね!よいしょっ」


もう一度触るとアテナはワンピース姿に戻った。


「何触ったの?」


「この魔法陣よ。」


アテナのページに握り拳分の魔法陣が描いてあった。


「ホントだ。」


「ん?ゼウスのには描いてないよ?」


『私は常にだ。残念だがこのままだよ、マスター。』


「そっか。強いし納得したよ。」


『強い…!』


ゼウスがちょっとニヤけてる?

何か変な事言ったっけ?


「ヨシュア君はあるー?」


メルトちゃんが俺の隣のヨシュアに話しかける。


「うん、ある!触っていい?プロメテウス」


『ダメだ。倒す相手が目の前だから武装は見せるんじゃねぇ。』


「…だって。ごめんね?」


「気にしないで。また見える機会を楽しみにするから!ね、メルトちゃん。」


「うん!」


「ありがと、2人とも。」


武装か…魔力がとても減る代わりに召喚獣が格段に強くなるシステム。

ゼウスは武装のようなものって言ってたから武装じゃないってことなんだよね?

うーん…?


「はーい、じゃあこれから教室に移動しまーす!猛獣の檻とかあるから気を付けて行」


「大変ですっ!」


学校のスタッフであろう人が焦りながらスピルカ先生の元に駆け寄った。


「どうした?」


「先程の激震で興奮した猛獣が暴れて檻を壊してしまいました!」


「何?」


「ベヒモスを始め管理していた猛獣達が校内を暴れ回っています!私達スタッフでは手に負えません!先生方、お願い致します!」


「…という事だ!皆は待機!ヒメリア!」


「あぁ、生徒は私に任せろ!」


「うん!では頼んだ!アストライオス!」


先生はヒメリア先生に頷き、アストライオスに抱えられたまま部屋を出ていった。

激震って…ゼウスを呼んだ時?それとも戦った時?何にせよ…


僕のせいだ!!


「ゼウス、僕達も!」


『あぁ!』


「ダメだよエクス!待機と言われただろう!」


「処罰は後で受ける!」


ヨシュアの言葉を無視しなきゃ!

こんなイベントは無かった!!

ベヒモスはランクSSSの超強いモンスターなんだ!アストライオスとアテナとプロメテウスと同じランクSSS!

それが複数居るならスピルカ先生が危ないに決まってる!!


「アテナ!行こう!」


『はっ!』


「あっちょっとメルト!?」


「エクス君が行くなら私も行く!」


「メルトちゃん!ありがとう!」


『どーする?ヨシュア。』


「〜っ…あーもう!ほっとける訳ないっ!!

行くよプロメテウス!」


『その言葉を待ってたぜぇーっ!!』


プロメテウスは指を鳴らして巨大な炎の中から大きな黒いバイクを顕現させた。


『アテナのマスターも乗せてやれ!』


「うん!メルト!」

「ありがと!」


ヨシュアとメルトちゃんを乗せ、バイクが唸る。


「あれ?僕は?」



『お前の席ねぇから!!』



プロメテウスはバイクで走り去ってしまった。アテナも後に続いている。



完全なイジメだーーーっ!!



「あっ!!おい貴様らぁっ!!勝手に動くんじゃないっ!!!死にたいのか!!!」


ひぃーーっ!!ヒメリア先生怖い!!


でも!


「でも!原因僕だと思いますので!!

処罰は後で受けます!!すみませんっ!!

お願い、ゼウス!」


『分かった!しっかり掴まれよマスター!』


ゼウスに連れられ、雷の速度でその場を去った。


後でゼウスに先生の洗脳を頼もう…。



「エクス=アーシェ…か。

やっぱり面白いね、ルシファー。

俺も行こうかなー。」


『承認。』


「アーサー、私達は待機。

ヒメリア先生のイフリートはゼウスにやられています。

迂闊に動いてはなりません。」


『分かった、君に従おう。』


「ったく…教師である私の言うことを3人も聞かんとは…今回は問題児ばかりか!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る