第67話『果たした合流』

前回のあらすじ


ヨシュア、レンと共に地下へ入る。


 …


暗く、足元が見にくい。石で出来た階段を

手すりの代わりに壁を伝いながら1段ずつ降りていく。エクス…本当に居るんだろうな…?


「ねーヨシュアくん。

暗いから光出そうか?」


後ろからのレンの提案に頷いた。


「…頼む。」


「はいはーい。」


突然辺りが眩しいくらいに光る。


「う、眩しい…お前やりすぎ、もう少し光度

下げろ。」


「あ、ごめん。」


悪気しかない声がする。

くそ、わざとだろ…。視界に緑の光が沢山

出てきて見えねえじゃねぇか…。


「わ、急に止まったら危ないよ!」


誰のせいだと…。はぁ、やっと収まった。





『本当に来たな。』


ゼウスは右の方を見やる。


「え、ヨシュアが?」


『あぁ。場所が分かったようだ。

……む?何故アイツも…』


「ゼウス?」


僕が首を傾げると段々と足音が大きくなってきたことに気付く。

あれ?足音が変だぞ?カツカツコツコツ

言ってる…2人いる?


「あはぁ…っ来たんだァ。」


ゼウスの輪に縛られたアビスはニヤリと口角を上げる。その視線の先には


「…。」


目が怖いヨシュアと…


「やっほーエクス君!」


「れ、レン!!?…くん!??」


「今呼び捨てしようとしたよね、別に良いけど。」


バレたか。


「な、何でレン君まで此処に…?」


恐る恐る聞くと彼は首をこてんと傾げた。


「えぇ?ヨシュア君についてきただけだよ。ね、ヨシュア君?」


「…。」


ヨシュアはレンを無視して僕に向かって歩いてきた。え、怖い。

するとゼウスが間に舞い降りた。ゼウスの

背中越しにヨシュアの声が聞こえる。


「…エクス。」


「ひゃいっ!!」


「…そんな返事なのに案外怯えてないね。」


「ひぇ!?そそそそんな事ないよ!

怖いよめちゃくちゃ!!」


見るかこの震える膝を!!


「…あはァ、ねーねーヨシュアくぅん。

キミさ、柔らかいホムンクルス潰したでしょ。実はそれにカプセルと同じものを結構仕込んであったんだよ。カプセルっていうのはキミ達がカッコよく呼んでるやつだよ。

何だっけ、あ、そうそう堕天アンヘルだ。

彼の堕ち方はちょっと変だけどさ。

ゼウス様もわかってんでしょー?」


とアビスがニタリと笑う。

やっぱりアビスが何かしたんじゃん!!

カプセルと同じものが仕込まれたホムンクルス…?まさかヨシュアが最後の1体で倒した

血が飛び散ったあの時のホムンクルスに?

血と同時に中身が気化してしまってヨシュアが吸ったと考えれば納得出来てしまう…!


『…ヨシュア=アイスレインは、お前の目論見の唯一である成功者か。』


「えぇ?目論見だなんて…まぁ間違いじゃないけど。別に僕はが変になればいいなぁって思っただけだよ?トラウマで動けなくなるとか、仲間割れするとか、召喚獣に魔力や生気吸われるとか、自分の召喚獣を己で倒すとかそんくらいのね。僕ってば記憶弄るのは得意でさ。皆の嫌な記憶を擽ってるの。ヨシュア君の奥底の記憶も擽っただけだよ。開け放ったのも染まったのも自我を無くしたのも皆の弱さが原因さ!ヨシュア君も染まらなかった召喚獣も強いという事が判明したね!

記憶に悩まされてるみたいだけど!」


「な…」


人の思い出を何だと思っているんだコイツは…!


「ただ、そんな記憶がぐっちゃぐちゃになるのは新しいデータだったよォ。ありがとね。

じゃあ僕はそろそろ行くよ。また会えるかな。いや、キミ達は僕を血眼になって探すだろうねェ?んふふ…鬼ごっこの始まりかな。」


『ほう、私の拘束から逃げられるとでも思っているのか?おめでたい頭だな。』


ゼウスがふっと笑って腕を組む。

アビスもにぃ…と笑って


「では問題です!」


と言った。問題?


「てれん!ホムンクルスはどうやって創られたのでしょー?」


『「はぁ?」』


何故そんな事を聞く?とゼウスと一緒に

首を傾げる。


「お、お前がスタッフの人達…生きている

人間を人造人間バケモノ…ホムンクルスにしてるんだろ!?

自分で言ってたじゃん!」


『…中には人間ではなく1からちゃんとした

手順で創られた者も居たな。

今回は寧ろそれの方が多かった。』


僕とゼウスの答えに数回頷くアビス。


「うんうんそうだね。それで合ってるよ。

じゃあさ、僕がそれを何処で作ってた

と思う?」


アビスの問に


「…此処。」


と静かに呟くヨシュア。


「お、ヨシュア君せいかァい♪周り暗くて

あんま見えないのによく分かったねェ?」


「嫌な気配がさっきから凄いから。」


「…流石、沢山の動物殺してきただけあって命には敏感なんだねェ?」


え…?沢山の動物を殺した?

優しいはずのヨシュアが?


「…軽蔑した?」


レンと似たような微笑みを見せるヨシュアに僕は何もしてあげられなかった。


「仲間割れ?いいよいいよ見せてよ!

それならまだ帰らないから!」


するとヨシュアは鋭い視線をアビスに向けた。


「お前は黙れ。」


「はいっ黙ります!」


「ふん…。」


冷たくて怖い印象の今のヨシュア。

堕天のせいだろう。

でもモーブみたいにミイラにはなってないな…。


「よ、ヨシュア…身体大丈夫なの?」


「ん…不思議とね。でも頭が痛いの。

ずーっと。」


左手で髪をかきあげながら頭を押さえる

ヨシュア。何とかしてあげたい。


「ぜ、ゼウス何とかならない?」


『うーむ…まだ解析出来てないがやってみるか。そこを動くなよ。』


「あ、させないよォ?

もう少しで…彼は染まるんだから。」


アビスは指を鳴らした。

次の瞬間、地面が揺れ、沢山の硝子が割れる音が辺りに響く。


「な、何!?」


『マスター!』


ゼウスが僕とヨシュアを引き寄せ辺りを見回す。…そう言えばレンは?


「ぐぅっ!!」


レンの声!と水が多く含んだ物が床を擦る音がした。濡れたレンが何かによって飛ばされた?


「あはっ!黒髪くん…隠れて僕の人形潰さないでよォ。分かってたんだからねぇ?」


「けほっ…分かってて泳がすとかタチ悪いね…敢えてルシファー呼ばなかったのに…。」


「れ、レン君何してたの!?」


ゼウスの腕の中から出るとびしょ濡れのレンが座り込んでいた。


「あ、あぁ…キミ達がよく分からないお話してるから暇で辺りを足音立てずに回っていたらね…白い化け物…ホムンクルスだっけ?

それが結構な量で創られてるのを発見して…音出さずに潰していたんだよ。ごほっ…

割れた時はマジで死ぬかと思ったけどね。

うわ、薬品臭いな俺。」


結構な量で創られてるホムンクルス?

割れた?


「まさか…」


と呟くとアビスは満面の笑みを浮かべ楽しそうに声を大きくする。


「そーう!そのまさか!…創ったホムンクルスをぜぇんぶ出しちゃった♪ジャンヌが倒れてる壁は見えるよね?でもキミ達の後ろ…

どれくらい広いんだろうねぇ?1つ言えるのは…この校舎全体はあると思うよ。」


するとゼウスは顎に手を当てた。


『…ふむ、確かに人間にとっては結構な量のホムンクルスが放たれたようだな。

ざっと1万くらいか?思ったより少ないな。』


え、1万って少ないの?

流石のアビスも驚くようで


「え?僕めっっっちゃ頑張ったんだよ?

褒めてよぉ!?まぁ神様にとっちゃそんなけだろうけどねー!」


と頬を膨らませた。


『…。』


その顔を見てから無言で指を鳴らしたゼウス。奥の方で雷が落ちまくる光景が見えた。


「…ゼウス何したの?」


僕が恐る恐る聞くとゼウスは普通の顔で


『放たれたホムンクルス全てを雷落として

潰した。』


と言った。


「…へぇっ?」


アビスの間抜けな声が響き渡った。

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