第88話『円卓会議』

 前回のあらすじ


会議パーティーが始まりました。

吐きそうです。


 …


クロノスは時間を操ることが出来るらしい。それを聞いたゼウスは


『やはりか…。』


 と呟いた。


「な、何?ゼウス?」


『…面倒なことになるのは確定だ。

マスター、プロメテウスのマスターの元へ

行くぞ。』


「え、あ。えっと…失礼します!」


「えぇ、また。」


ゼウスに手を引かれヨシュアの元へ。

ヨシュアの周りにはディアレス=リベリオン

さんとイデアちゃんと話していた

紫髪黒メッシュのイケメンさん。


「ヨシュア!」


「あ、エクス!」


『うげっゼウス。』


『邪魔するぞ。』


僕はディアレスさんとイケメンさんに頭を

下げてヨシュアとプロメテウスの隣に移動した。ディアレスさんが


「ようサクス!」


と安定して僕を呼び間違える。


「エクスですったら!」


「ディアがごめんなさい。

エクス=アーシェ君だよね?こんばんは。

僕はリンネ=コウキョウと申します。」


「ご、ご丁寧にどうも…。」


イケメンさんはリンネさんか。記憶…ん。

リンネさんとディアレスさんの隣に立っている威圧的な男の人と和風な女の人に見られている…。


「あ、紹介するね。このかっこいい人が

ディアの相棒、雷神トール。そしてこっちが僕の相棒のアマテラスだよ。」


は、初めて見た…!

ゲームのガチャに…居たっけ。

あれ?アマテラスは僕持ってたようなー…ん?あまり思い出せない。何か記憶が薄れてるような…?気のせいかな。


「どしたレックス。」


ディアレスさんの言い間違いによって

我に返る。


「エクスです!すみません、ボーッとしちゃって。ヨシュアと何をお話されてたんですか?」


ゼウスのあの言い方…ヨシュアに危険が迫ってるってことな気がするから確認しないと。


「いや、これと言って何も。まだ挨拶しかしてなかったんだよ。2人は仲良さそうだね。」


「えぇ、寮が同室なので。ね、エクス。」


僕はヨシュアの営業スマイルに頷いた。


「うん。あの、リンネさんはシオン先生と

交流あったりするんですか?」


「おや、気付いたの?

そう。実は故郷が一緒の国なんだよ。

親近感湧いちゃってね。」


やっぱりか。召喚獣アマテラスだし着ている服も和風な感じだからビンゴだった。

…ってそんなのは今どうでもいい事だ。


「そうなんですか。ディアレスさんは…学友でしたよね。お2人はシオン先生と何らかの

関係があるんですね!」


「そうだね。あとリーレイちゃんと

オペラちゃんにも良くしてもらってるよ。」


天使クラスの担任と副担任…。ドレス姿の2人は今ユリウスさんと喋っている。

オペラ先生が震えすぎて死にかけてるけど。


「エクス、料理美味しそうだね。

俺も取りに行こうかな。」


 ヨシュアが僕の皿を覗き込んだ。


「じゃあついてく。フォーク欲しいし。」


「という訳なので一旦失礼致します。

行こう、プロメテウス。」


『おう。』


 ぺこりと頭を下げて足早に去る僕達。


「うん、またね。」


「じゃなー。」


料理が置いてあるテーブルまで移動して周りに誰も聞いていないことを確認して息を吐く。


「はぁ…息苦しい。」


「エクスありがとう。助かったよ。

ヴァルハラの人って優しそうな見た目してるけど全員笑顔の仮面を付けているだけだ。

仮面の下は探りの目。やっぱり貴族なだけある。あぁ気分が悪い。」


と手に持った取り分け用のナイフをクルクルと器用に回すヨシュア。

まさか過去ヨシュアが戻って…!?


「あ、いけない。お行儀悪くするとスカーレットが怒るから気をつけないとね。」


あ、本当だ。スカーレット君がヨシュアを

睨んでる。

ちゃんとクリムさんにくっついてるな…。


「ねぇあれ見てエクス。」


「アレ?」


ヨシュアが指さす方は…メルトちゃんとレンがアムルさんと話していた。

え、何2人で話してんの!?

アテナかルシファーが遠ざけてよ!!


「あはは、エクス顔凄いよ。」


「だ、だって…」


「エクスぅ助けてくれぇ〜…」


え、誰の声?うわ背中が急に重くっ!

背中の人にヨシュアは笑顔になる。


「あ、ヨガミ先生。生きてますか?」


ヨガミ先生!?


「無理…アイツ本当に無理……。」


『シヴァの召喚士と頑張って話してたんだけど限界来ちゃってね。そうなっちゃった!

…はは。』


と後ろで陽気に話すアポロンは輝いていた…。けどいつもの騒がしさが無い。

よく見ると彼の視線はヨガミ先生ではなく


『…』


アスクレピオス…。

アポロンの視線に気付いたシュヴァルツさんが僕達に小さく手を振り向かってくる。

それを必死に止めるアスクレピオスだけど

彼が弱いのかシュヴァルツさんが強いのか、歩みは止まらない。引き摺られ、自分の意思とは関係なく近づくアスクレピオスの姿が

嬉しいのかパァッと輝きが増すアポロン。

正反対のアスクレピオスは今にもストレスで爆発しそうな顔をしている。そんな彼を無視してシュヴァルツさんはいつも通りの口調で話しかけてくれる。


「…こんばんは。エクス=アーシェ…ヨガミ=デイブレイク…ヨシュア=アイスレイン。」


「シュヴァルツさん、こんばんは。

アスクレピオスも…」


『うるさいっ!!私はココから離れる!!

腕を切り落としてでもっ!!

あぁおぞましい忌々しい!』


酷い言われようだな…。

アポロンは眉を下げて彼を呼ぶ。


『あ、アスクレピオス…』


『うるさい!!何故心底憎む相手が同じ場所に居るのだ!!そんなに私を殺したいのか!!おいマスター!今すぐ触診だ!

私の蛇がマスターの脳を飲み正常に戻してくれようぞ!!』


聞く耳持たず、って感じかな…。

アスクレピオスの腕に巻きついている黒い蛇が口を開けて威嚇している。その蛇の口を

手で押さえるシュヴァルツさん。


「…物騒。…ごめんね、アポロン、ゼウス…

まだ無理みたい。また、後でね…。」


寂しそうな顔をしたシュヴァルツさんは踵を返して去っていく。アスクレピオスが怒りすぎて声がよく聞こえる。


『チィッ…気分が悪い!!何故私を近づけた!』


「…だって…アポロンが寂しそうだったから…」


『私の思いを無視するほどか!!』


「だって…ぼくについてきたじゃん…」


『マスターを放っておく馬鹿なぞ何処にいる!!』


「……あっち。」


シュヴァルツさんが指さす方…それは、黒い角が光るロキだった。確かに彼の隣に

イデアちゃんの姿は無い。何故なら彼は…


雷神トールに距離を詰められているんだ。


助けた方が良いかな…。でもロキ自業自得だしな…。うーん…。あ、ロキが土下座した。


『…マスター、教育に良くない。

見なかったことにしよう。』


ゼウスの両手が僕の視界を塞いだ。


『つーかお前もアポロンもすげぇ嫌われようだな。あそこまでだと流石に笑えねぇわ。』


カットステーキを豪快に口に入れるプロメテウスの言葉に傷ついたのかゼウスの手が離れた。


『そ…それは…』


『うぅーん…ボクはそれ相応の事したし仕方ないんだけど…やっぱ悲しいなぁ。

ボクは息子を愛してるんだけどね…。

逃げられるのは慣れてるけど。』


何か言いたげな目でちらっとゼウスを見た。


「はぁ〜…大変だねぇ神様も。

でもさ、オタクのゼウスもアスクレピオスと同じ気持ちを抱えているんじゃないかな?」


聞き覚えのあるおじさんの声…。


「うへぇ…」


ヨガミ先生が嫌そうな声をあげて僕の後ろに隠れた。


「エクス=アーシェ君、ヨシュア=アイスレイン君、ヨガミ。こんばんは〜。

料理食べてる〜?」


舞台で喋ってたおじさんだ…。


「その外面キモイっすよニフラムさん。」


ヨガミ先生、僕を盾にしながら酷いこと

言わないで欲しいな。


『…』


ゼウスもニフラムと呼ばれたおじさんを睨みつけている。ニフラムさんは特に臆することも無く、なんなら嫌そうに額を掻く。


「あ、そう?じゃあ普段通りにさせてもらうわ〜…はー…ごめんねぇ、こんな面倒臭い

会議に招待して。早く帰りたいでしょ?

おじさんは帰りたい。」


舞台の時と同じ感じになったな…。


「だからそろそろ会議を始めようか。

クロノス、来てー。」


やる気無さそうに左手を挙げる彼の真横に

円柱の光が射す。


『!』

「ニフラムさんは…クロノスの…!」


「そう。

おじさん、ゼウスの父親の召喚士なんだ。」


光から現れたのは…


『…。』


『……………お久しゅうございます。父上。』


現れただけで床に膝が付きそうなほどの威圧感を発する男神。立派な髭を生やしたおじいさんにも見えるが肉体が鍛え抜かれているのがよく分かる。この神…絶対に強い…!


『…』


しかもゼウスを見つめるだけで口を開かない。

ニフラムさんは手を2回叩き空中から出した

マイクで話し始めた。


「はぁい、みんなー。そろそろいいかなー。お話始めるよー。話はまた後でねー。

クロノス頼むよ。」


『…』


クロノスがゆっくり頷いた瞬間、パーティー会場から一瞬で大きな円卓が置かれた暗めな場所へ移動した。ど、どうなってるの!?

全員転移!?あ、料理のお皿が無い!


『…移動した訳ではない。この会場の時を

巻き戻したのだろう。元々がこれだ。』


「流石ゼウス。そう、その通り。この部屋を時で切り替えているのさ。いつもこんな感じでやってるよ。あ、料理はちゃんと出来たてだから安心してね〜。じゃあ皆座って。今回は生徒も居るから普段の円卓よりも大きいよ。場所は直感でココだと思うところに座るといい。」


と言いながらニフラムさんを始めヴァルハラ、教師陣が席に着いた。


でも僕達は直感…?…確かに、僕は…何故か円卓の中心に座ったニフラムさんの向かいに座らなきゃいけない気がする。皆も直感…という名の操りで椅子に座った。シャル君の

席はアルテミスが椅子を手でずらして車椅子を押した。


「召喚獣はマスターの左隣に立つか浮くかしてね〜。……さて、ではゼウリス魔法学校臨時会議を始める。」


っ…急に空気がピリついた…!パーティー

やってても結局緊張してきた!


「ユーリ、召喚獣はおっけー?」


「何を仰いますニフラムさん。ずっと私は

ラジエルをパーティーに参加させていましたよ。」


ユリウスさんは円卓に肘を付けて上を指す。

それと同時に僕の目の前に紺色の羽が落ちてきた。上を見ると煌めく紺色の羽根を無音無風で羽ばたかせている男性の天使が浮いてこちらを見下していた。


「ずっと…。」


見られてたのか…やだな。


「そうだったね〜流石ユリウス、じゃあ安心だ。よし、早速だけど神クラス代表、

エクス=アーシェ。」


「は、はいっ」


ニフラムさんヘラヘラしてるおじさんだと

思ったら急に真面目モードになるの何なんだろう怖い!!


「天使クラス代表、レン=フォーダン。」


「はい。」


「アルファクラス代表、

リリアン=ナイトイヴ。」


「はい。」


「クラス代表の君達が無傷だったのは幸いだろう。それに他の子達も回復して良かった。…で、だ。シオン=ツキバミの話によると今回の話はアビス=アポクリファという生徒らしいが…彼に接触した子は居るかい?」


それは…僕とレンだ。

僕らは黙って手を挙げた。


「君達2人か。分かった。ではそれはまたとして…この事件が起こった経緯を説明してもらおうか。エクス=アーシェ、頼めるかい?」


「えっ僕ですか!?先生の方が…」


「社会勉強みたいな感じでさ。継ぎ接ぎでいいよ、ユーリが勝手に翻訳してくれるから。」


「私頼みですか、分かりましたよ。

ではエクス君、お願いします。」


「は、はい…。ワカリマシタ…。」


口から心臓出そう。死にそ。

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