第25話『授業開始!』

前回のあらすじ


皆に挨拶をしていたら始業のチャイムが

鳴り響きました!今から授業開始です!


緊張する〜…!


 …


「じゃあまずはこのゼウリス魔法学校の事を説明しようか。」


魔法学校の事か…。

確かにあまり聞かされてないや。


「ゼウリス魔法学校は国が運営してる召喚士育成機関!この学校にお前らの上級生は居ません!何故でしょう?」


そういえば寮の部屋といい先輩と呼べる人は先生以外に居なさそうだったな。


「はい、ヨシュア=アイスレイン!」


「えっ俺?」


スピルカ先生名指しタイプか!!

日付で出席番号を当てるレベルでやだ!

少し驚いたヨシュアだったが、すぐに


「はい、このゼウリス魔法学校に入学した

生徒達を3年間集中して育てる為です。」


と答えた。


え、そうなの?


「ぴんぽーん!正解だ!

ゼウリス魔法学校は3年という周期で回してる。1回生徒が入学したら卒業するまで生徒をとらない。だからこそ幅広く15歳から20歳までが入学する生徒の必要条件。

更に入学を決定させるには国の城の中にあるクリスタルが溶け込んだ鏡に合否を受ける

必要がある。

お前らはもうやったから知ってるよな?」


なんにも知らなかった。

クリスタルが溶け込んだ鏡?

クリスタルってあのゼウスを召喚した綺麗なクリスタル?それにその鏡の合否って…?


「邪心を持つ者を見極める。その為に鏡がある。知ってるか?クリスタルって悪い物を

浄化する力があるんだぞ?鏡には少量しか

クリスタルが入ってないから出来るのは善か悪か見極めるだけ。

それで充分なんだけどな。

悪しき心を持つ者が召喚士になれる訳が無い。なってはいけない。

召喚獣が兵器となり黒く歪んでしまうからな。合格となるのは悪しき心を持たない、

善意で召喚士となろうとするとで見込まれた者。

お前らが入学出来たのは正義の心や善意が

鏡に認められたからなのだー!」


正義や善意が認められる…しかし入学早々

魔獣殺しや悪魔召喚を企てる輩が現れたのも事実。つまり自分の悪い心を鏡から欺けるような高度な嘘吐きが紛れている可能性があるということ…?


それとも悪魔召喚も1つの夢で、それを叶えたいと、夢に手を伸ばしているだけだと思うなら鏡に悪い心と思われない…?

ダメだ、分からない。


「ただ、入学してから悪しき心を持ってしまった者もいる。怠慢した生徒もな。

そんな愚か者の末路は…

言わなくとも、分かってるよな?」


一瞬でスピルカ先生が恐怖の塊に見えた。

それは本当に一瞬ですぐに明るい笑顔に

戻った。


「ま、お前らはそんな事ないと信じている!

魔法を正しい使い方で、召喚獣にも清らかな心で力を借りるように!

そんな訳で俺はお前らが魔法の正しい使い方、在り方、魔法と国の関係についてを学ぶ為に魔法や国の歴史について話をするぞ!

じゃあノートとペンを出してー!」


自己紹介しないんだ、良かった。

と、思いながらペンケースとノートを出した。


「ではまずは魔法の在り方をー…」




「という事だ!

魔法の正しい使い方は分かったか?」


…え?時間が飛んだ?え?え?どういう事?!

バッとヨシュアを見ると彼は苦笑した。


「エクス、おはよう。」


「おは…え?」


「開始早々ぐっすりでしたよ。」


とシャル君も苦笑していた。


「嘘…寝た覚えないんだけど!

やばい何も聞いてない!

知ってたなら起こしてよ2人ともぉ!」


「いやー…そうしようと思ったら…」


「エクスーおはよーう。

俺が2人に起こすなと言ったんだ!」


ヨシュアの言葉を遮ってスピルカ先生が

こちらを笑顔で見上げていた。


「俺はお前に睡眠魔法掛けた覚えは

無いぞー。」


「そ、そんなぁ…」


「俺は授業態度をほんの少し成績に入れるからな!テスト、頑張れよ!」


「うわぁ……マジかぁ…。」


自分でも寝たの分からなかった…。

涎出てないし…。


「俺が後でノート見せるよ。」


「ごめーん…ありがとヨシュア…。」


「くすくす…」


ん?何か笑い声がしたような。


首を傾げた時、チャイムが鳴り響く。


「じゃあこれで座学は終わり!次は実技!

男子は此処で、女子は寮に戻って体操着に

着替えて、運動靴でグラウンドへ行くように!じゃあまた後でな〜♪」


スピルカ先生はアストライオスと共に退出した。女子生徒達も移動する為に各々教科書類をまとめて立ち上がり始める。


「えぇぇえ…寝た覚えないんだけどー…。」


「ノート開いた瞬間に目を瞑られましたよ。

驚いてつんつんしたのですが無反応でした。」


シャル君につんつんされて起きないなんて…っ!自分を恨むぅ…!


「後ろから鼻ちょうちん見えたわよ〜?」


「えぇっ!?」


メルトちゃんにも見えるくらいの鼻ちょうちんって何!?


「情けないねぇ全く!

僕の輝きで目を覚ますが良いさ!」


ローランド君は眩しいけどアポロンの方がら眩しかったな。顔が煩いというやつだ。


「あ、大丈夫です。」


「……ふっ…僕の美しさに気付かないとはまだまだだね…!」


傷ついてそうなローランド君を心配もせず

イデアちゃんがメルトちゃんに呼びかける。


「ねーねーメルトちゃん!

早く着替えに行こ!」


「そうね!じゃあまた後でね!」


イデアちゃんとメルトちゃんがパタパタと

小走りで先に教室を出ていった。

女の子は着替えるのが遅いイメージがある。

僕も着替えるために授業道具カバンの中から黒いジャージとオレンジのVネックと運動靴を取り出して着替え始めた。


「実技は寝ない!大丈夫!」


と言うとヨシュアに呆れた顔で


「寝たら凄いよ。絶対。」


と言われた。


「う…そうだよね。」


「でもあんな風にこてん、と寝てしまうものですかね。

自覚が無いというのも不思議です。」


薄紫色のTシャツから頭を出すシャル君がこちらを見ていた。


「そうなんだよね。

僕、寝るとしたら机に頭つけて寝るよ。」


よくイジメに耐えるために寝ようと試みてたし。


「それはそれでどうなんだい…。」


ローランド君の反応はご最もだ。

けどおじいちゃん先生の社会とか聞いてると話が子守唄に変わるから我慢が出来ないし

反省はしてない。


「裾曲げてっと…。

よし、出来た!皆も着替えた?」


ヨシュアがズボンの裾を折って見えた踝辺りに水色のミサンガが巻きついていた。


「どしたのそれ。何か願い事?」


僕が指さすとヨシュアもミサンガに目を向けた。


「ん?あ、これ?うん、そんな感じ。」


「綺麗な青色ですね。」


「まるで君の瞳の様だ!」


「囃し立てても何も無いよ。

じゃあ行こう、皆。」


この話を切りたいがために早く会話を終わらせた感があるような。聞いちゃまずかったかな。謝ると神経を逆撫でる可能性もあるし

何も言わないでおいて先に歩くヨシュアに

ついて行こうっと。


 …


「あぁ〜…何で今日晴れなんだよクソ…。」


普通の学校のように、外への出口に下駄箱があり、自分の名前が記してある所に革靴を

入れて運動靴に履き替えてグラウンドに出るとヨガミ先生が項垂れていた。


「あれ?ヨガミ早かったな!」


スピルカ先生も合流し、周りの生徒もある

程度集まって雑談していた。

メルトちゃんとイデアちゃんも合流し、6人で雑談しているとチャイムが鳴った。


「よっしゃー!次は実技だぞ!

実技は俺とヨガミが教えるからな!」


「スピルカ元気すぎ…。」


「んふー!テンション上がってるからな!

さて、皆もう分かってる通り実技では実際に魔法を使うぞ!召喚獣に頼ったり頼らなかったりして頑張っていこう!では最初に魔導書からパートナーを呼び出してくれ!」


スピルカ先生の指示で僕達は魔導書を開いて【summon!】と言いパートナーを呼び出した。

神々しい彼を呼ぶと眩い光を放って現れた。


「おはようゼウス。」


『うむ、おはようマスター。

昨日はよく眠れたようだな。』


「うん、お陰様で。」


『良い良い。

若者はよく寝ることが成長の糧となる。』


周りを見るとヨシュアはプロメテウスに

黒い笑顔を向けていて、メルトちゃんは

アテナと楽しそうに会話していて、

イデアちゃんはロキに絡まれており、

シャル君はアルテミスに熱烈な抱擁を受けており…

ローランド君は美神に薔薇を向けていた。

やっぱりあの美神だ…話してみよう。


「ねぇ、ローランド君のパートナーって…」


「アフロディーテだよ!

美しい僕にピッタリだろう!!」


ちらりと彼女を見るとニッコリと微笑んで

くれた。美しい…!


「うん…」


つい口から出た。


「はっはっは!!

もっと言ってくれたまえ!!」


「それはちょっと」


「皆パートナーを呼べたな!では皆に箒を

配るぞー!アストライオスとアポロンから

受け取ってくれ!」


助け舟のようにスピルカ先生から次の指示が出た。アストライオスとアポロンの横には

大量の箒が浮いていた。

アポロンが手を振って


『女の子はボクから受け取ってねー!』


と言っていたが、

ヨガミ先生に顔面を掴まれた。


「別に男女どっちでもいいぞー。」


相変わらずだなあの二人は。

僕はアストライオスから箒を受け取った。


「ありがとう。」


『…。(コクリ)』


相変わらずの無口。

全員が箒を受け取った事を確認したスピルカ先生は頷いてアストライオスに身体を向けた。


「じゃあその箒に召喚獣の魔力を注いでもらって自分の特別な箒に変えるんだ!」


ゲームでそんなことした覚え無いけどな。

気にしないでおこう。


「という訳でゼウス、お願い出来る?」


『お安い御用だマスター。貸してくれ。』


ゼウスに箒を渡す。

また雷落ちて燃やされないだろうか。

渡してみるとその不安は要らなかった。

ゼウスが少し力んだ後、箒が白く染まり金の模様が入って神々しくなっただけだった。

いや、充分変わってるんだけどさ。


『ふふふ…自信作だ。受け取れマスター。』


「ありがとう!とてもかっこぎっ」


箒を両手で受け取った瞬間、猛スピードで

箒が動き出し一緒に浮いた僕は強く舌を噛んだ。


えっ待って!?速すぎて振り落とされる!!


「うわぁああぁああぁぁっ!!!」


「エクス!!」


「エクス君っ!!」


ゼウスとベヒモス探しで手を繋いだ時よりも速い!!高さも相当だ!!

ひぃーーーっ!!腕だけでぶら下がるのも

もう限界!!せめて跨りたいっ!!


『ふははは!!悲鳴をあげるほど気に入ったかマスター!空を裂く姿はまるで神の雷のよう!!その箒、名付けて“神雷”だ!!』


「誰か助けてぇぇぇえええっ!!」


「あわわっゼウス様!このままではエクス君が危ないです!どうかお救い下さい!」


『む、アルテミスのマスターが言うのならば仕方無い。』


あれ!?急に箒が止まっ…


お?僕は…すごい速度で落下している。

蘇るトラウマに血の気が引く。


「もう落ちて死ぬのは嫌だぁーーっ!!」


僕と心の叫びをゼウスが同時に受け止めて

くれた。


『どうだ、気に入ったか?マスター。』


「正直…やだ。」


『なぬっ!??』

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