第24話『始まりの朝』

前回のあらすじ


やっと一日が終わって泣いて寝ました。


友達って素晴らしい…!


 …


「ふがっ!?」


急に自分の目が開いた。

寝てたのか…夢も見ていないせいで気付かなかった。ゆっくりと身体を起こすとカーテン越しに光が射す。隣を見るとヨシュアの姿は無かった。何処に行ったんだ…?


「あ、おはようエクス。よく眠れた?」


ジャケットに袖を通しながら歩いてきた

ヨシュア。


「おはよーヨシュア。

お陰様でぐっすりだよ。」


「なら良かった。あ、さっき扉の前にご飯が置いてあったんだ。一緒に食べよ!」


え、何で扉の前?


ヨシュアはご飯の乗った木のトレイを2つ

持ってきた。


「スピルカ先生の置き手紙があってさ。

朝の食堂は混雑するから、夜に予め朝ごはんの食券を買っておくと部屋の前に置かれる

システムなんだ!トレイは部屋の前に重ねておけば片付けてくれるから安心してくれ!

って。 」


「へぇ…でも僕達夜ご飯食べ損ねたし食券なんて買ってないよね?」


「俺が勝手に頼んでおいた!とも書かれてる。メニューはバターロール2つに生ハムの

サラダ、玉子のペーストだよ!あと牛乳!」


「えっ美味しそう!食べるー!」


ベッドから降りるとヨシュアの手で顔面を

押さえられた。


「ふぎゅっ!」


「まずは手ぇ洗って顔洗って来て。」


「ふぁい。」


怖…。僕はカバンからタオルや洗顔料を取り出していそいそと洗面台に向かった。

洗面台の隣の扉は…あ、お風呂だ。

反対側は…トイレだ。

大浴場に行かなくてもお風呂はあるんだな。成程。石鹸で手を洗って…洗顔料を…っと…ねむ…。

眠気を覚ます為にも冷水で一気に洗う。


「つめてっ!!」


氷水レベルで冷たかった!!

お陰でスッキリと目が覚め、ご飯を食べるために小さなテーブルの前に座った。

椅子はクッション。

この台の低さがまた良いんだよな〜♪

ヨシュアは座って待ってくれていた。


「お待たせ!」


「ううん。じゃあ食べよう!

いただきまーす!」


「いただきます!」


んーっ!パンはモチモチだしサラダはシャキシャキ!新鮮!生ハムもうんまーい!

…生ハム、ハムって肉だよね…つまり…


「ヨシュア、この生ハムって…」


「魔物だろうね?」


「…美味しいからいっか。」


もう気にしたら負けだ。


「あ、エクス。持ち物多いから忘れ物無いようにしようね。取り敢えずノートと筆記具、体操着と運動靴とローブは必須。」


あー…そういやゲームでの授業の時、生徒皆着替えてたっけな。何処にあるんだろ?

僕はパンを咥えながらカバンを漁った。


すると授業道具と書いてあるタグが見え、

取り出すと一回り小さなカバンが現れた。

チャックを開けると数冊のノートとオレンジのペンケース、黒に金色の柄が施されたカッコイイローブと黒いジャージ、薄手のオレンジのVネックシャツ、新品のオレンジの運動靴が入っていた。

お母さん、纏めてくれたんだ…!助かる!

それにしてもオレンジばかりだ。


あとは…ん?カバンの下の方に何か…

予備の制服と書かれた袋が出てきた。

中は新しいシャツとジャケット、ズボンが2枚ずつ、ネクタイが2本入っていた。


「あ、制服で思い出した。エクス、俺のと洗濯一緒に回していい?面倒臭いし。」


「ヨシュアが良いなら良いよ。」


「おっけー。エクス昨日ジャケットも一緒にカゴへ入れてたからハンガーに掛けておいたよ。」


ヨシュアは立ち上がり、壁のウォークインクローゼットのカーテンを開けた。


「ごめん…お世話かけます。」


「いーえ。

じゃあ早く食べて着替えて行くよー。」


「ふぁーい。」


サラダをかきこんで全て食べ終わった。


「「ご馳走様でした!」」


僕は歯を磨いて予備の制服袋からシャツと

ズボン、ネクタイを取り出して着替えた。

ジャケットをハンガーから下ろして袖を通してっと。あとお母さんが纏めてくれた授業道具持って…よしっ!準備万端!


「おっけー!お待たせヨシュア!」


「おっけ!じゃあ行こう!」


トレイを持って部屋を出た。

扉を閉めて真下に視線を向けると扉の横の

床に丁度トレイの大きさを囲うようにテープが貼られていた。ココに置けば良いのかな。


「あ、エクス君!ヨシュア君!」


この声は!


「シャル君!」


美女…じゃなくて美男子のシャル君が居た。朝から目が幸せだ〜♡

む、彼の後ろから前髪が短い紫色の見覚えのある顔が…。あ、目が合った!


「むっ!君は…!」


あーー…っと…やっぱりゼウスが雷を落とした人だー…。えっちょっ!?

こっち来たーー!!怖っ!!あ、挨拶したら離れてくれるかな!?


「あ、あはは…はは…おは、おはよう…」


「おはよう!僕は諦めないよ!!」


顔が近い圧が凄い!


「な、ナンノコトデショウカ!」


「僕がゼウスよりも美しいということを

全クラスに知らしめてやるのだッッ!!

見ておけーーっ!!」


シャル君を置いて華麗に走っていった。

何だったんだ一体…。


「る、ルームメイトがすみません!

彼、悪い方では無いのです!

ただ猪突猛進気味なだけなのです!」


シャル君が慌ててフォローを入れた。

良い子だ。

一連の流れを見ていたヨシュアはシャル君に


「はははっ!シャル置いてかれちゃったね。

 じゃあ俺らと一緒に行こうよ。」


と言った。僕も頷くとシャル君はとても

嬉しそうに笑って


「えぇ、是非!」


そう頷いてくれて教室まで3人並んで歩いた。


不思議な事に歩いている最中はアビスにも

レンにも会わなかった。

静かさが逆に不気味だ。


無事に神クラスの扉を開けた。

教室…ここで魔法を学ぶんだ!!

既に何人かが階段構造の席に座っていた。

沢山の大きな窓から光が射す。

魔法学校と言ったらこんな感じだよね!


「席って決まってるのですかね?」


シャル君が先に3段目の列の机を歩きながら

見ていく。


「あ、ココにヨシュア=アイスレインと書いてありますよ!」


シャル君が僕とヨシュアを手招きして机を

指さした。左上に銀色の正方形のテープが

貼ってあり、筆記体でJoshua=Icerainと

書いてあった。


「あ、ホントだ。じゃあ俺がここだね。」


「ヨシュア君の隣がエクス君ですね!

ココにエクス=アーシェと書いてあります!」


えっ僕の名前フルネーム!!

今呼んでくれた!?


「オレはエクス君の右隣です!」


「えっ!?2人とも隣!?やったぁ!」


喜べる席!先生の計らいかな!

ぉっと…やっべ…黒板ど真ん中…先生がふとこっちを見上げたら真っ先に目が合う場所!嵌めやがったな!!


「あ、エクス君!ヨシュア君!」


後ろから聞き覚えのある可愛い声が!


後ろの少し上を見上げるとメルトちゃんが

机から胴体を乗り出していた。


「メルトちゃん!おはよ!」


「おはよー!昨日ぶりね!」


「おはよう、メルト。」


「おはようヨシュア君!

あら?エクス君のお隣の人は誰?」


メルトちゃんの視線はシャル君に向かっていた。


「紹介するね、昨日友達になったシャーロット=アルカディア君!男の人だよ!」


と僕が言うとメルトちゃんは目を丸くした。


「えぇえっ!?うそー!男の人なのー!?」


「はい。嘘じゃありませんよ。

ご紹介に預かりました、シャーロット=アルカディアです。気軽にシャルとお呼び下さい。」


「これはこれはご丁寧にどうも…

メルト=ガーディアです!よろしくね!

シャルちゃん!」


「シャルちゃ…!?」


「可愛いからシャルちゃん!ダメ?」


「だっ…ダメじゃ…ありません、です…。」


うーん…何かしら葛藤した結果に見える。

優しいから断れなかったんだね。


「エクス君だねっ!!覚えたよっ!!」


この煩い声は…メルトちゃんに向けていた

視線を左に移すと眩しく輝く紫頭がこちらを見ていた。シャル君の後ろに居るのか…。

名前聞いておこうかな、流れ的に。


「え〜っと…貴方は…」


「僕はローランド=ローゼン!!

由緒正しき華麗なる貴族、ローゼン家を継ぐために偉大な召喚士となる者さっ!!」


煩い。眩しい。薔薇が邪魔。


「我が麗しの同胞のシャーロット君と仲が良いとは!流石私のライバルだ!」


 勝手にライバル認定された。


「あははっ本当に面白いね、

メルトちゃん!」


「でしょー?」


今度はメルトちゃんの右側から聞こえる。

黒髪チックの紫頭に赤いおめめ!

ロキの召喚士のイデアちゃんだ!

ヨシュアの後ろか。


「イデアちゃん!おはよう!」


「おはよう!エクス君、ヨシュア君!」


眩しい笑顔に対してヨシュアは


「…おはよう、イデア。」


と、ちょっと気だるそう。

わぁ…ヨシュアまだ根に持ってるぅ。

しかし彼女は気にしていないのか挨拶を続けた。


「おはよう!ヨシュア君!シャル君、

ローランド君もおはよう!」


「おはようございます…えーと…

イデアさん?」


初対面のシャル君の疑問に眩い笑顔で頷いたイデアちゃん。


「うん!イデア=ルークス!メルトちゃんの

ルームメイトだよ!よろしくね!」


イデアちゃんは人見知りなんて知らないだろうな。羨ましい。


「宜しくしてあげよう!この僕、美しい貴族の!ローランド=ローゼンがっ!!」


「うん、よろしく!」


ローランド君、色々スルーされてるよ。


少し呆れた時、教室の扉が再び開く。

スピルカ先生がアストライオスと共に歩いて教卓の前に立つ。


「あいあーい!お前らおはよーございます!

 昨日はよく眠れたかー?」


寝落ちしたので寝た気は無いです。


「俺は授業するのが楽しみで寝れなかったぞ!!」


先生は教卓の後ろへ周り、スピルカ先生専用であろう小さな階段を登って授業に使う分厚い本らしきものを教卓に置いた。

そして今、始業のチャイムが鳴り響く。


スピルカ先生は背筋を伸ばし、


「これより、ゼウリス魔法学校、

 神クラス初の授業を開始する!!」


と宣言した。

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