第26話『箒が暴走!』

前回のあらすじ


初めての授業で早速寝るというやらかした

僕は実技でゼウスの箒に振り回されました。

落下死はもう懲り懲りだ…。


 …


死ぬかと思った…!

ゼウス居なかったら2度目の落下死を迎えるところだった…!!


『ふむ、やはりそうだな。』


 僕を抱えたまま宙に浮くゼウス。

 彼は僕の顔をじっと見る。


「えっ何?」


『マスター、何かの魔法にかかったな。』


「えっ!?」


 どういう事!?


『む、気付いてなかったか。

もう今は解けている。安心しろ。』


「な、何の魔法をかけられたの!?」


『ただの睡眠魔法だろう。

マスターを妨害する為の小細工だな。

この程度の魔法に何故気付かなかったのだ

エクス。我がマスターともあろうものが。』


あれ?ひょっとして怒られてる?


「ご、ごめんなさい…。」


『まぁ良い。しかしマスターを狙っている

輩が居るという事が分かったな。』


にぃっと口角を上げるゼウスはどう見ても

悪人面だった。


「おーーい!エクスー!!無事かーー!!」


スピルカ先生が下でぴょんぴょんと跳ねて

心配してくれている。


「と、とりあえず降ろして欲しいな!」


『うむ。』


ふわりと着地させてもらって無事に皆の所へ戻ることが出来た。


「ありがとう、ゼウス。」


『うむ!』


「じゃあ皆、箒に跨って飛んでみよう!

跨って飛べーって思えば飛べるぞ!

失敗するとさっきのエクスみたいになるので要注意だ!」


スピルカ先生が早速弄ってきた。

皆もクスクスと笑っていた。

くそ…恥ずかしい…っ!


ヨガミ先生は欠伸をしながら


「まぁ変な所に飛んでったら召喚獣に助けてもらえよ〜。」


と黄金の箒の上に寝転んで浮いていた。

色々と派手だなぁ…。


「エクス君、さっきは大丈夫だった?」


メルトちゃんが心配そうな顔で聞いてきてくれた。


「うん、舌噛んだくらいで済んだよ!」


「あらま…お大事にね。」


「ありがとう!

とりあえず皆で箒に跨って飛んでみよう!」


「うん!」


僕達6人は少し広がって箒に跨った。


飛べって思えば飛べるってスピルカ先生

言ってたよな。さっきはそんなこと思ってなかったけど。


「わぁ…!凄いですアルテミス!

浮きましたよ!」


シャル君は魔法少女が使いそうな可愛い箒に跨って少しずつ地面と離れていく。


『きゃー!浮いてるマスターも可愛いっ!』


親バカというやつか。でも確かに可愛い。


「ふっ…このくらい完璧さ!」


ローランド君はバラが目立つ箒に片手を

離して浮いていた。む…何か悔しい…。


『マスター、これは絶対に落ちない箒だ。

 ほら、手を離してみな。』


「わー!!ホントだー!」


イデアちゃんに至っては両方の手を離して

乗っている。手放し運転!?

本当に落ちない箒なのかな!?

あんな黒とピンクの箒だけど!


『マスター、ロキのマスターの箒は

ただの箒だ。ロキのマスターが凄いのだ。

騙されるなよ。』


とゼウスが耳打ちしてきた。

あ、じゃあやっぱり嘘なんだ…。


『マスター、ご安心を。

貴女様なら絶対に落ちませんゆえ。』


「あ、ありがとうアテナ…

ち、ちょっと怖いわ…」


と言いつつちゃんと浮いているメルトちゃん。すごい、武装された鎧みたいな箒だ…。


「ひゃっほーーうっ!!」


後ろから凄く楽しそうな声が聞こえる。

振り返ったところで遅れてきた強風に

目を瞑る。


な、何だ?

目を向けると…黒いバイクに跨ったヨシュアの姿が。何故バイク…。

よく見ると浮いている……まさか箒!?


「えぇえ…?どゆこと?」


驚いているとヨシュアが目の前に

つんのめりながら止まった。


「見てよエクス!プロメテウスの箒!

ヤバくね!?もう黒いバイクとか

マジでカッコイイよねっ!!」


「う、うん…。」


青い目がキラキラと宝石のように輝いている。語彙力が男子高生になった言葉遣いといい僕はヨシュア二重人格説を浮上させます…。


「え、エクス君は乗らないの…?」


ぷるぷると震えながら浮いているメルトちゃんがちらりとこちらを見ていた。


「あ、今乗るよ。」


それは…

よいせ、と腰を下ろした瞬間だった。


僕の首と腰に強力な負荷がかかる。

とてつもないスピードで箒が暴れだしたのだ。箒は上向きの斜めになりスピードを上げた。


「またかぁああぁああっ!!!」


「エクスくーんっ!?」


『いやー…私の箒があそこまで暴走するとは。マスター…箒に嫌われているのではないだろうか。』


「ぎゃあぁあっ!!

やめてーーまわらないでぇえ」


くるりと箒が一回転した反動で箒に掴まっているのは足だけ。コウモリの状態で僕は今

耐えている。このままでは死ぬ。

確実に死を迎える。


「誰か助けてぇえええぇぇぇっ!!」


「アストライオス!」


『!』


ぼふんっと大きくてもふもふな何かに

受け止められた。何だ?

見てみると、僕は大きな…

クマさんに抱きついていた。


「ヒェッ」


「エクスー!!大丈夫かー!」


スピルカ先生の声がすると思って見てみるとアストライオスがこちらに向かって来た。

彼がクマを撫でるとクマは満足したように

可愛い音と星と共に消えた。

そしてアストライオスに手を引かれゆっくりとスピルカ先生の前に降ろしてもらった。


「あ、ありがとうアストライオス…。」


『…(コクリ)』


「ゼウス!マスターをすぐに助けないか!」


隣に来たゼウスをぷりぷりと叱るスピルカ先生。


『いやー楽しそうだと思って…つい。』


「ついじゃない!」


「あ、アストライオスに助けて頂いて感謝してます!僕なら大丈夫ですから!」


『次はちゃんと助けるから安心しろ

マスター!』


「ホントに助けてね…。」


スピルカ先生が呆れた顔で


「まったく…

次何かあったらエクスだけ箒禁止な。」


と僕を指さした。


「えぇぇっ!?」


そりゃあんまりです!


「とてつもない速さだったんだぞ!

高さがあったから良かったものの人や物と

衝突事故起こしたらどうなっていたか!」


「う…。」


確かに僕もぶつかった人も物も無傷では

済まないだろう…。


「まぁまぁそんくらいにしとけってスピルカ。エクスだってやりたくてやった訳じゃねぇ。それにあの速さは尋常じゃねぇ。」


この声は…


「俺たちでもあんな速度だせねぇよ。

それは流石ゼウスの召喚士と言える。

粘り強く振り落とされねぇように

必死に食らいついてたしな。」


ヨガミ先生…!


「物凄く滑稽だったがな。」


その一言いらないっ!


スピルカ先生は小さく溜息を吐いて


「はぁ…とにかく、今度は暴走させないように気をつけるんだぞ!」


と腰に手をあて再び僕を指さした。


 そのつもりなんだけどな…。


「あのぅ…

この箒は何故暴走するんでしょうか…?」


「「それは知らん。ゼウスに聞け。」」


スピルカ先生もヨガミ先生も同時に同じことを言うとは…。ゼウスに聞こう。


「ゼウス…何で?」


『私には対処出来ぬ。』


 は?


『マスターの魔力が箒に伝わった瞬間暴走するようだ。マスターの魔力量の問題だろう。

ほら、マスターはやばい量の魔力だから。

私が認めるくらいだから。』


全知全能がやばいと言った。

何だそれ。


「「という訳だ気合いで乗り切れ。」」


何だそれーーーっ!!

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