第11話『揺らめく影』

前回のあらすじ


ゼウスが城のような校内を把握したは良いものの、ランクSSSの大蛇ピュートーンを電流糸で巻き引き摺ってきました。

何の考えも無かったゼウスは校内を破壊した可能性が。僕もうブラックリスト行きだ…。そのショックで僕は気絶しました。


 …


『む!?マスター!?』


「エクス君…気絶したみたいね…。」


「そりゃあもし建物壊してたらブラックリスト確定になるからね。エクス小心者だし。」


『ぶらっくりすとぉ?』


「要注意人物扱いされるって事だよ。

 プロメテウスもゼウスと張り合ってたら…いずれ載るだろうね。」


「あら、召喚獣も?生徒だけじゃ無いの?」


「いや、主に生徒がってだけだ。

召喚獣の中にも召喚士の言う事を聞かない奴だって居るんだ。そういう奴は強制的に還す。1度や2度は許されるが3度目がアウト。

召喚士だと退学。召喚獣だと強制帰還だ。

俺もスピルカも見張っているから気を付けろ。」


『そういうヨガミとボクは昔に2回載ったよね!』


原因おまえは黙れっ!」


…とまぁ随分楽しそうな声が聞こえる。

一瞬気を失っていた。ブラックリストか。

ゲーム内の主人公も2回載るんだけどさ。

いやいやそんな事よりまずは!!


「あっエクス君が起きた!おはよう!」


「おは…っ」


メルトちゃんの顔が真上。

見下げられている。僕の頭に柔らかい枕。

…ん?


「私の膝枕、気持ちいいでしょ〜?」


「……………ふぁい……………?」


ひざま、え?あの、ひざ?ひざまくら?


「僕今日死ぬのかな…。」


幸せすぎて涙出てきた。


「えっ!?エクス君!?」


『お父様のマスター、私のマスターから

離れて下さい。』


「ひぇっすみませんっ!!」


アテナが睨んできたので即座に離れた。

名残惜しい…。


「別に良かったのに。」


『あの者の鼻の下が伸びてたので。

マスターは男というものを知らなさすぎます。この世界はアポロンやお父様みたいな野獣が多いのです。

そう簡単に心を許してはなりませんよ!』


アテナがぷりぷりと怒ってる。

確かに野獣…が多いのかは分からないけど

優しすぎて心配になる。

やっぱり護ってあげないと!


「…おい、この蛇どうすんだよ。」


ヨガミ先生の一言で鼻筋が冷える。

忘れてた!!


「ぜ、ゼウスー!僕退学なんて嫌だよ!!」


『落ち着けマスター。大丈夫、私に出来ぬ事などありはしないさ。』


そう言ってゼウスは指を鳴らした。


…何も起きないけど。


『ふんっ』


右手をぐっと握り締めた瞬間、ぼふんっという大きな音が響き、衝撃で捌けてくる紫色の煙が僕らを包む。


「うわっ何!?」


風が無くなり目を開けると小さな蛇が舌をチロチロと出していた。

ただの蛇ではなく、柄が神々しい蛇。


「もしかして…ピュートーン?」


『うむ、この大きさは可愛いだろ。』


ゼウスが胸を張るとメルトちゃんはハートを撒き散らす。


「きゃー!可愛いわ〜!」


「アポロン、アイツを確保ーっ!」


『ヨガミが1番近いじゃないか!ったくもー』


歩いて近付いたアポロンに対して蛇は

シャーッと威嚇するがリアクションも取られず摘まれた。


『ホントにボクの事が嫌いなんだね。』


『シャーッ!!』


『皮をつるんと剥がされるか弓矢で射られるの、どっちがいい?』


『(´・ω・`)』


脅されたら威嚇を止めたぞ…。

それに表情が見える。

ちょっと可愛いんじゃ…。


「あ、おーーい!お前らー!!」


げぇっ!!この声は…


「「スピルカ先生!」」


ぎゃーーーーーっ!!!

まだ壊れた場所直してないよ!!


「スピルカってめぇ!」


「ヨガミが何故怒っているか分からんが後でな!お前達、ベヒモス達を気絶させて眠らせたんだよな?怪我させてないよな?」


先生の顔に笑みはなく、焦ってる顔だ。

どうしたんだろう。一応説明しないと。


「気絶の経由で怪我させちゃったのは僕と

ゼウスがこんがり焼いてしまったあの2体と…」


「プロメテウスがバイクで轢いたベヒモス1体とグリフォンとキマイラが2体ずつです。

全員回復させたので命に別状は無いかと。」


僕に続いてヨシュアが言葉を紡いだ。

最初に出会ったベヒモスとグリフォンは

ゼウスが怪我も負わせず眠らせたし。


「…嘘を言っているようには見えないな。」


先生の呟きにアストライオスが小さく頷く。


『アストライオスのマスター君、ボクが証人さ。どの子も気絶していただけだよ。』


「アポロンが?」


スピルカ先生はアポロンにではなく、

ヨガミ先生に確認する。


「俺と魔獣達をを吹っ飛ばした後に歩き回ってたんだとよ。」


「そうか…。」


先生は顎に小さな手を当て考え込んでいる。


『…アストライオス、何があった。』


ゼウスが聞くと無口な彼は目線を向ける。


『…死んでいた。』


え?今喋った?


『何だと?』


『…ベヒモスとグリフォンが…死んでいた。

複数の傷があった…殺されたのだろう…。』


悲しそうに目線を床に落とす彼は静かな声でそう言った。


殺された?何の目的で?誰がやったんだ?


「お前達じゃないのはわかった。それに信じているからな。…しかし一体誰が…。」


『ふむ、マスター。

ちょっと私に魔力をくれ。』


「ゼウスに?どうすればいいの?」


『魔導書の表紙に浮いている光背があるだろう?そこに片手を翳せば良い。』


何する気なんだろ。取り敢えず託そうか。

光背に手を翳す…っと。


すると光背がゆっくりと回り始めた。


「うわっ!何これ!?」


『よし、魔力が来た。召喚士マスターの魔力が!さぁ来い、タナトス!』


ゼウスが床に向かって手を下ろす。


紫の魔法陣が現れ光り輝く。


そこから死神と思わせるような見た目の女の子が出てきた。


『お呼びですか。ゼウス様』


声が可愛い!でも表情筋が死んでる…。

って!!僕ゲームでタナトス持ってたよ!!


『死の匂いがするだろう?迎えと原因を。』


『畏まりました。』


頷いたタナトスは火の玉となり四方八方へ分散した。


「い、今のは…?」


だが?』


「さらっと凄いこと言わないでよ!

 何でゼウスが召喚出来るの!?」


『何でって…最高神だから?』


「答えになってない…。」


『ははっ種明かしをするとだな?私の固定

スキルだ。

契約者の居ない者を召喚士の魔力を使って

探り、クリスタルを経由し召喚を行い、

マスターの召喚獣にする事が出来るのだ!

どんな神だろうが神獣だろうが私とマスターにかかれば操り人形よ!』


「な…」


そんなスキル知らないんだけど…。

固定スキルって【全知全能】だよね。

パートナーの固定スキルは召喚士にも影響する…。


だからか!

僕はゼウスの固定スキルで全ての魔法を

覚えられるという恩恵を受ける。なら僕がゼウスにも何かしてあげている可能性があるのか!それが召喚士の力を貸しているというなら納得がいく!無理矢理だけど!


いや、最高神だからって言われて納得した

自分も居るんだよな。


ともあれ便利だ。


ん?てことは…ゼウスは僕の魔力を使えば誰が契約を結んでいないかが分かって、判明した召喚獣を僕の魔力で召喚出来るってこと?


確定ガチャじゃん…!!


『ゼウス様』


タナトスの声が下から…下から!?

バッと下を見ると僕の足元から目までしか

見えていないタナトスがゼウスを見上げていた。


『ベヒモス、グリフォンの死骸を火葬しました。どうやら何者かがあの子達の臓器や血を

持っていったようです。』


「複数の傷があったのは見たが中身まで?」


スピルカ先生の言葉に頷いたタナトス。



『何者かが良からぬ事を企んでいると思います。』



タナトスのその言葉に息を呑む。


「もうやだ!帰りたい!!

関わりたくない!!」


煩いヨガミ先生を除いた全員が。

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