第10話『太陽神アポロン』

前回のあらすじ


根暗な陰キャ先生が隠れるほど眩しい人が現れました。僕も隠れたい。


陽キャとは息が合うわけないんだからっ!



「うげぇええええっ!!!」


と僕の真後ろに四つん這いになってまで隠れる早口で口が悪くて豆腐メンタルのヨガミ先生。

彼は輝く青年から逃げたのだ。


そう、物理的に輝く青年から。


『あれ?ヨガミ?おかしいなぁ。

君達と話してたよねぇ?幻覚だったのかなぁ?』



嘘だろ。

貴方から見ると彼のケツが丸見えだと思うんですけど。



と言うか貴方は…


「ヨガミ先生の相棒の太陽神アポロン!」


『あれ?ボクの事を知ってるの?』


また口滑った。


「…見た目から判断しました!」


苦しいだろうか。稲穂の様な金髪、月桂樹の冠。

ギリシャチックな服装。物理で輝ける能力。

うん、知らなくても分かるだろう。


『そっか。本来ボクは太陽神じゃないけどさ。』


「え?そうなの?」


『ね、父上?』


アポロンはゼウスを見る。

え、またゼウスの子供シリーズ?


『そーだな。まさかお前まで現界しているとは。』


『あ、アテナ!』


『アポロン!』


『私に話を振っておいてスルーは無いだろ…。』


ドンマイ、ゼウス。


『あ、そうだ。君、その魔導書は父上の物だろ?

父上の召喚士君だね!』


アテナに向けられていた目が急にこっちに向けられる。マイペースだな…。


『ボクは紆余曲折を経て太陽神と呼ばれるようになったんだよ。疫病の神とも呼ばれててね。

人間なら即死させれる疫病の矢を持っているよ。』


にこやかに金色の矢を持ち、僕の前でプラプラさせる。


え、怖。


『おい…』


ゼウスが少し怒り始めた。


『アポロン、我がマスターに手を出してみろ。

息子だろうが無慈悲に殺してやる。』


しかし流石ゼウスの息子。

物怖じどころか笑ってる。


『あっはは!冗談ですって。

疫病の神は嘘。(矢はホントだけど。)医術の神だし。医術ならボクの息子程では無いけど出来るんで何とかします♪』


『…はぁ…。おい、アポロンのマスター。

何時までそうしているつもりだ?臓物抉るぞ。』


ゼウスの脅しで飛び跳ねて土下座する先生。


「勘弁して下さいっ!!」


それを見て輝きが増すアポロン。眩しっ!


『あ!ヨガミ!良かった、幻覚じゃなかった!!』


「最悪だぁあぁぁっ!!」


漫才かな、これ。


呆れたのかヨシュアが小さく呟く。


「お、俺…ついていけてないんだけど。」


「私も…」


「僕もだよ…。」


『ヨガミがボクを置いてどこかへ行くものだから探し歩いてたんだよー?』


「お前のせいだろ…。」


アポロンはニコニコしているがヨガミ先生は溜息混じりに言う。


「あの、何でヨガミ先生は倒れてたんです?」


僕がそう聞くとヨガミ先生はバツが悪そうに目を逸らす。


「アポロンに巻き込まれた。

吹っ飛ばしたんだよ、俺と魔獣全てを。

お前らも出会ったんじゃないか?

単体行動で動く魔獣達を。」


それってベヒモスとグリフォンだったり?


『ヨガミが何とかしろー!って言うから目の前から飛ばしてあげたんじゃないか。』


口を尖らせるアポロンに手をわなわな震わせるヨガミ先生。


「お陰で被害が甚大だ!

もっとこう…何とかなったろ!!?」


『えー?ボク難しい事分かんなーい。』


『マスター、コイツを魔導書で殴ってみろ。』


イラッときたのかゼウスが耳打ちしてきた。

え、殺せって?


『大丈夫、神族は丈夫だ。死にゃしない。』


「えー…何かあったらゼウスが怒られてね。」


『あぁ、良いとも。』


僕は魔導書を両手に持ちアポロンを


「すみませんっ!!」


と謝罪しながら魔導書で殴った。


『ごふぅっ!!?』


あ、まずいぞ角が当たっちゃった。


「エクス!?何してるんだ!?」


ヨシュアの反応は当然だ。


「ゼウスがやれって言うから。」


「ナイスだ。エクスとやら。」


ヨガミ先生には褒められた。


『(角で殴るとは恐ろしい…。)

マスター、本を開け。』


「?」


言われた通りにすると


【アポロン】

 神族:SSSランク

 属性:光属性


オリュンポス十二神の1人。最高神ゼウスの息子で女神アルテミスと双子である。

弓術、医術、音楽、家畜、予言の神と言われている。愛に生きた神。


「アポロンのページだ!さっきまで無かったのに!」


『魔導書に触れた物をアナライズ出来るのだ!

凄いだろう?』


凄いけど触れた物をって…殴った意味は?


『急に何だい!?痛いじゃないか!!』


「す、すみませんっ!!」


ほら怒られた!!


『まぁ良いけど。』


良いの!?


『父上の唐突な事には慣れたから。それよりヨガミ。ベヒモスとキマイラ、グリフォンはその子達が殺さずに眠らせてくれてたみたいだよ。』


「何だって?!」


アポロンの報告に頷く僕達。

メルトちゃんは追加で言葉を付ける。


「本当よ!私達ちゃんと動けるんだから!」


えっへんと胸を張るメルトちゃんにヨシュアが続く。


「俺達、ベヒモス以外のランクSSSを探しているんです。でも情報貰えなくて。教えて下さい!」


「……スピルカめ……何かあったら俺の責任にするつもりで…あの見た目だけ餓鬼野郎め…だいたいアイツは」


ブツブツと独り言が始まったヨガミ先生を置いてアポロンが説明を始めてくれた。


『ランクSSSの魔獣はベヒモスともう1体。

 その名は "ピュートーン"。大蛇さ。』


「へっ蛇!?」


しかも大蛇って!!

いや、ココは男エクス。

メルトちゃんを護ってみせまー…


「蛇さんが居るの!?」


メルトちゃんの目は…とても嬉しそうに輝いていた。え?嘘でしょ?


「とっても恐ろしいぞぉ…!」


独り言を終えたヨガミ先生がメルトちゃんにガオーと近づく。ちょっと近い、離れて!!


「へぇ…!

俺、ちょっと気になるし会ってみたいな。」


ヨシュアも目を輝かせる。


ん?あれ?ビビってるの、僕だけ?


『ピュートーンか、懐かしい。

 アポロン、貴様がもう一度倒すが良い。』


ゼウスが懐かしい?


『そうしようと思ったらヨガミが…』


「蛇とか無理だわ!!ましてやあんなミミズを巨大化させたような奴なんて近づきたくないし見たくもない!!」


『こんな感じで。ボク1人で行こうと思ったら

召喚士を置いていくんじゃねーって怒るんだ。』


めんどくさ。

なら最高神ゼウスに聞いてみよう。


「ゼウス、何とかならない?」


『なるぞ。』


「え?」


ダメ元だったのに…。


『たった今大蛇をからな。少し待ってろ』


見つけたって?動いていなかったのに?

幽体離脱でもしたの?


ゼウスは何も無い空気をグッと握り締め、その手を後ろへ引く。何か小さな振動が?その振動は次第に大きくなり、立っていられなくなった僕達は座り込む。


「わっ!」


「きゃっ!」


次の瞬間、黒い尻尾のような物が引きずられる様子が廊下に繋がる通路から見えた。


『そぉ…らっ!!』


ゼウスが浮かび上がり、もう一度握り締めた手を後ろへ引っ張ると、黒い尻尾が引き摺られこっちに来た。その巨大な体はホールには入り切らず、僅かな胴体しか見えない。


「ぎゃーーーーっ!!!へっへびぃっ!!」


『…電気かァ。』


プロメテウスの言葉に頷くゼウス。


『見えないほど細い電流を糸状にして無数に伸ばしていたのだ。

対象物に当たると静電気が起こる仕組みでな。

さっきは建造物を把握しつつ壁に当たらぬように集中していたのだ。』


だから静かだったんだ。


『そして今のところこの建物だけは全て把握した。

マスター、魔導書の後ろのほうに記しておいたから迷ったら使え。』


後ろ?見るとMAPと書かれたページが増えていた。

細かくフロアごとに分かりやすく描かれている。


え、でもさっきの会話中にしてたの?

この建物って…魔法学校の主の部分だよ?

別棟あるけどこっちはかなり広いのに…

一瞬で?会話しながら?しかも目に見えないほどの細い糸で顔も見えない大きさの蛇を引っ張ってきたの?やっぱり凄いの一言だなぁ。


メルトちゃんがゼウスを覗き込んだ。


「ねぇ、ゼウス。」


『何だ?アテナのマスター。』


「この蛇さん引っ張って来る時は壁とか意識したの?」


『いや?何分重かったから…というか考えるのが面倒くさくなって普通に引っ張った。』


おい全知全能。


「え?てことは…この巨体を何も見ずに引っ張ったのならさ



建物内壊れまくってるんじゃ?」



「ヒュッ」


ヨシュアの一言で僕は白目を向いた。


『かもしれんな。』


ゼウスの一言で僕は気絶した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る