第12話『ブラックリストに協力者』
前回のあらすじ
ピュートーンを小型蛇に変えて建物の事を考えようとしたら、スピルカ先生がベヒモスとグリフォンが殺されたと焦った表情で戻ってきた。そこでゼウスの能力で召喚した死の神タナトスが登場。タナトスはベヒモスとグリフォンの臓器が盗まれた事を告げた。
どうか安らかに。
…
「良からぬ事を企んでいる…か。
ヨガミ、俺が伝えてくるからコイツらよろしく!」
「は!?おい巫山戯んな俺はもう帰りたー…
あーーもう行きやがった!!」
スピルカ先生は再び球体に乗りアストライオスと共にこの場を後にした。
「もう面倒事はごめんだっての!」
面倒事と言えば…
「ねぇ、タナトス。」
『はい。』
僕は蹲るような形でタナトスに
「建物壊れまくってた?」
と耳打ちした。タナトスは首を横に振る。
『いえ、特に破損箇所は見られませんでした。』
「ほんと?」
『はい。』
やった…!
「ゼウス、建物が無事だったって!!」
『それは良かった。成功したのだな。』
「何が?」
少し考えたゼウスは
『……内緒だ。』
と微笑んだ。内緒だって…僕に言えないことなの?あ、考えろって事かな。
『あ、これゼウス様の魔導書ですか?』
腕を出すために上半身までにゅっと伸びたタナトスは僕の魔導書に触れた。もう床から出れば良いのに。
「そう、貰ったんだ。」
『なら僕も…マスターに…あげます。』
そう言ってタナトスは本の光背に人差し指をちょんと付けた。光背は先程のように回り始めた。
「何したの?」
『マスターが僕の事を忘れないように…。』
僕の魔力を使ったとはいえ召喚したのはゼウスだからゼウスがマスターだと思うけど…。考えているうちに光背が止まり、本がページを開いた。
【タナトス】
神族:Sランク
属性:闇属性
死、そのものを神格化した存在。
夜の女神ニュクスの息子であり眠りの神ヒュノプスと兄弟。寿命を迎えた人間の魂を冥府の王ハデスに捧げる役割を担っている。
え?息子?ってことは男の子?!
「まぁ、貴方男の子なの?」
いつの間にか覗き込んでいたメルトちゃんがタナトスに聞いた。
『はい。』
「僕ずっと女の子だと思ってた…!ゴメン…」
「可愛いものね!」
『かわいい…?』
首を傾げるタナトスにメルトちゃんは楽しそうに話し始めた。いいなぁ、タナトス…。
「エクス、ちょっと。」
「どうしたの?」
ヨシュアはこっそりと小声で話す。
「気にならない?誰がベヒモスとグリフォンを殺したのか。そして何をするのか。」
「そりゃあ…まぁ…」
でもある程度予測は出来るしー…
いや、待てよ?
レンが裏切り者になるのはとあるイベントからで…
そこで力に魅入られて闇堕ちするストーリーだ。
そのイベントより前は普通の学生だったはず。
…であれば?レンの仕業じゃない可能性もある?
「おい、お前ら!教師として話がある!」
ヨガミ先生に呼ばれ僕達3人は床に座った。
「良いか、お前ら。本来ならお前らはこの事を知らない。知るはずが無いんだ。それは何故か?
この場に居合わせることが有り得ないからだ。」
ヨガミ先生は腕を組み、鋭く黄色い瞳で僕達を見下げている。
「では何故居合わせた?それは入学早々お前らが教師の言う事を聞かなかったからだ。
命令違反、それにより全員ブラックリストに掲載させてもらう。」
「「「はい…。」」」
分かっていた事だ。元々そのつもりで動いたから。
ゼウスが手を動かそうとしたので止めた。
『…』
「…」
僕達のやり取りを一瞬だけ見た先生は目を伏せた。
「だが、お前らが来たから…来てくれたから事態は最小限に収まったと思っている。
スピルカだけじゃ魔獣は今も野放しだっただろう。」
自分はノーカンなのか。
「だから、お前らはブラックリストに掲載はするがカウントしない事にする。」
「え?それって…」
「問題を起こした訳ではなく、
これから問題を
勿論、載るからには教師の目は厳しくなり問題を起こせば直ぐにカウントする。」
ヨガミ先生…!
「そして知ってしまったこの裏がありまくりの事件。本来なら記憶を消し去るのが妥当だが…」
ヨガミ先生はゼウス、プロメテウス、アテナを見た。
「俺にお前らの記憶を消すつもりは無い。
スピルカや上が分からんが…その理由としてはお前らに協力者となってもらおうと考えているからだ。」
「協力者?」
首を傾げたメルトちゃんをちらりと見て僕に視線を戻した。
「お前らは強い。召喚獣が強いというのもあるが1番は教師の言う事を聞かずにスピルカを助けに来た度胸だ。それがあればこう…何とかなる気がするんだよ。」
『ヨガミはそんな肝っ玉無いもんね!』
「うるせぇアポロン!ねぇよ!」
無いんだ。だろうな。
「つか本当にスピルカを助けに来たんだよな?」
それ聞くの?さっきまで先生らしかったのに台無しだ。
でもそれは間違ってない、本当だ。
「勿論です!激震のせいで檻が壊れてベヒモス達が暴れて手をつけられないって聞いて…激震は僕のせいだと思って…ベヒモスが強いのは知っていたから…」
「私はエクス君が行くからついてきました。」
「右に同じ。」
メルトちゃんとヨシュアは手を挙げる。
「はっ、もう仲良しこよしかよ。めでてぇな。」
『ヨガミ友達少なかったもんね。』
「そうだな…ってさっきからうるせぇぞ!
俺の心を傷付けて楽しいかァ!?」
『うんっ!!!』
見て下さいこの眩しい(物理)笑顔。
ちょっと文面に起こすのが難しいくらい輝いています。
「もうやだコイツぅ…うっうっ…」
あ、先生泣いた。
『アポロンに泣かされるってメンタル雑魚だな。』
「こらプロメテウス!」
「うぅっ…良いんだ俺はどうせパートナーにもこんな扱いを受ける根暗ワカメなんだから生きている価値もないどうせ俺は」
先生が横になり両手で顔を押さえて泣き始めた。
床に水溜まりが作られる。
ほら始まったぁ…。
「ヨガミ先生!大丈夫よ!先生は私達の事をちゃんと見てくれるいいワカメよ!」
ワカメのまま…。
「うぅ…っ…ぐえっ」
『君達に父上達!
ヨガミが言いたい事は分かったかな?』
「えーっと…私達は先生の待機命令を無視したからブラックリストに載ってカウントされるはずだったけど理由が理由だから実際ノーカンにしてもらえるのよね。」
「けれど載る事に違いは無いから要注意人物として先生の目が厳しくなる。そんな中で知ってしまった裏がありまくりの事件を探れって事ですよね。」
メルトちゃんとヨシュアに頷くアポロン。
僕何も言ってない。
『そう。もし怪しい人物を、
じゃないとブラックリストにカウントされちゃうかもしれないからね。』
アポロンに頷いた僕達。
ヨシュアはプロメテウスの方に視線を移す。
「だってプロメテウス。」
『何で俺なんだよマスター!』
「直ぐにゼウスと喧嘩するから。
授業中は静かにしてよね。」
『ふんっ!』
「はぁ…先が思いやられるよ。」
ヨシュアの言う通りだ。僕も言っておこう。
「ゼウスもだよ!」
『…。』
ゼウスは顎に手を当て考え込んでいるようだ。
「ゼウス?」
『!すまないマスター。何だって?』
「喧嘩したり皆に迷惑掛けないでね?」
『あぁ。善処しよう。』
…何か様子がおかしいような。
『詳細はまた今度!
取り敢えずヨガミが泣き止むまで休憩しよ!』
「お"前"の"せ"い"た"ろ"!!」
本当にヨガミ先生は大変だな…。
…
「だって。聞いた?ルシファー。」
『えぇ、聞きました。』
「魔物の血や臓器を使うって…っふふ…!
すっごく面白そうな匂いじゃん!俺も探ろっと!」
『レン、そろそろ戻らなければ分身だとバレてしまいます。』
「そっか。残念だけど俺は彼らと違ってバレるとブラックリストに載っちゃってカウントされるからね。
大人しく戻ろう。」
『承諾、移動します。』
「エクス、君は何を知っているのかなぁ!
っははは…面白くなりそう!」
『レン、血は拭いた方が宜しいかと。』
「あー…とそうだね。ベタベタで獣臭いし。
ハンカチ…は忘れた。布巾布巾っと…」
『私の服で拭わないで下さい。』
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