第78話『どんどん来るじゃん』

前回のあらすじ


ロキがやりたい放題してたのがよぉく分かりました。

ゼウスが焚き付けてくれてパーティーいけるって思ったらまたビビってました。


 …


『なぁんでお偉いさんがよりにもよって

北欧神話俺のとこなんだよぉ…。』


「仕方ありませんよ…。

それ相応にお強い方達なのですから。」


リリアンさんをちらっと見てから溜息を吐くロキ。


『はー…でも男に二言はない!

カッコよく守ってやるからちゃんと

カッコイイって褒めてくれよマスター!』


「うん!」


「ならまずは布団から出なさいよ。」


スカーレット君に言われて逆に布団にくるまったロキ。角で布団破れちゃいそう。


「イデアちゃんコイツ仕舞いなさい。

どうせ拒否権はないわ。ドレスならイーリスに作ってもらえば良いのだから。」


『えっ』


「分かった!おやすみロキ!また明日ね!」


『えっいやあのこのままだと俺ダサ』


あぁ…ロキが魔導書に吸い込まれた…。


多分俺ダサいまま終わっちゃうって言おうとしたんだろうなー…。


「ふぁあ…何かお風呂でポカポカしたから

眠いわぁ…。」


欠伸をするメルトちゃんを見ていて欠伸が

移った。


「ふぁ…」


『お、マスターにも欠伸が。

皆の者、もう寝るが良い。

今日は本当によく頑張ったな。』


ゼウスに褒められて少し照れる僕達。

丁度消灯時間になったみたいで周りの電気が切れてゼウスだけが光り輝く。

元の大きさに戻って光が増すゼウスはふっと微笑み


『では、おやすみ。マスター達よ。』


と言って自ら魔導書に戻った。

ゼウスが戻るために顕現させた魔導書を枕元に置いて寝転んだ。


「おやすみゼウス、皆。」


おやすみ〜と皆の声を聞いて目を瞑った

瞬間、僕は意識を手放していた。



『っふふふ…目覚める目醒める。

我等の……が……依代は…何処かいな……』


何、この声…。何人もの声が真っ暗な空間に響いてる。これは夢…?それに依代?

何の話だ?


『王を殺すの力を!!!』


目の前に無数の紫色の手が僕に向かって

伸びてくる。


え…?


咄嗟のことで身動きが取れなかった僕は手や足を掴まれた。僕を掴むその手は人間の手や怪物の手など様々だった。

しかしどの手も握る力が強い。痛い…!!

離して…!!やだ、引っ張られる!!

助けてゼウス!!



『見つけた見つけた。

…貴様が………!!!』



一瞬見えた血の塊のような真っ赤な目、

そして僕を掴んでいた紫の手は血に染まり、僕は底知れぬ恐怖を感じた。

嫌だ!!嫌だ!!誰か助けて!!!



「ッッ!!!!」


身体が飛び起き首や背中は汗を含み気持ちが悪い。


「っはぁ……はぁ…っ…」


何、今の…。血は付いていない。

手や足に掴まれた感触が有るのに痕は無い。

やっぱり夢だ…。こんな感触のある夢なんて見たことない…。…喉乾いた。水…。


今は早朝だろうか。部屋を照らすのは起きるには早すぎて2度寝するには遅すぎる嫌な時間の光だ。移動しようと正面を見ると…


ローランド君が僕を不思議そうに見ていた。


「ロっっ!!?」


大きな声を出そうとしたけど皆が寝ている事に気付き必死に声を抑える。

ローランド君は足音を立てないように僕のベッドの横へ移動した。


「おはよう、我が友よ。どうしたんだい?

汗が凄いぞ?顔色も悪いようだが。」


「あ…えっと…嫌な夢見て…。」


「それは大変だ!

では気分転換に歩こうではないか。」


「いや、でも緊急事態以外は部屋から出るなって…」


「何?そんな事言われていたのか。

しかし君は悪夢に魘され気分が悪い。生徒の体調悪化は緊急事態だろう。さ、行こう。

そのついでに僕が寝ていた時に起こったことを教えてくれないか?」


魔法で何とかなりそうだけど…ローランド君は気を遣ってくれている。それにココで話すと皆を起こしてしまうかもしれない。

怒られるの覚悟で外に出よう。


「……うん。ありがとう、ローランド君。」


「お礼は後で良いさ。」


そして僕とローランド君はこっそりと部屋を出た。



「ローランド君、昨日あれ以来意識無かったんだよ。大丈夫?」


「あぁ、見知らぬ場所、服、朝日で察したよ。頭は痛いが他に問題は無さそうだ。」


紫髪で見え隠れしている包帯に触れる彼は

嘘を吐いているようには見えない。

無理してるってことも無さそうだ。


「そう、良かったよ。

君が寝てた時にあった事を伝えるね。」


「うむ、頼んだよ!」


「えっと…」


学校での戦いが終わり、僕達は少し入院すること、そしてヴァルハラの事、会議に呼ばれた事を伝えた。彼は顎に手を当て頭を整理している。


「成程…国家最高機関ヴァルハラ、か。

そして彼らと学校を繋ぐ会議に事件当事者として呼ばれた…と。」


「多分僕達は堕天アンヘルの影響を受けていない状態で事件解決に助力したから。

逆にクリムさん…スカーレット君の妹さんは影響を受けているから呼ばれたんだと

思う。」


「ふむ…だろうな。

この事件の犯人はやはり…」


「うん、アビス=アポクリファ。僕とゼウスはアイツと話してて逃げられちゃった。

怒られるかなぁ。」


口に出してから気付いた。


犯人目の前にして逃がしたって言ったら怒られるんじゃ…!!!?

僕の考えとは逆にローランド君は首を傾げた。


「流石に怒られないんじゃないか?だって

教師ですらアビスに気付かなかったんだ。

生徒の君が気付いて止めようとしたのに

怒られる事は無いと思うぞ。」


「せやで。」


「そうかなぁ……ん?せやで?」


後ろから聞こえた為振り向くとシオン先生がそこに居た。…やべ、もう見つかった。

しかもシオン先生か…。

怒られるのが怖くて取り敢えず挨拶した。


「「オハヨウゴザイマス…。」」


「お早うさん。何やアーシェ、ローゼン。

その嫌そうな顔は。安心しい。

私も…いや、僕も共犯だ。同行しても?」


驚きすぎて言葉が出てこず、無言でローランド君と頷いた。


「おおきに。

僕の部屋は個室だからそちらへ行こう。」


「先生の部屋に飲料水はありますか?」


ローランド君が僕の代わりに聞いてくれた。そうだ僕は水が欲しかったんだ。


「水?…確かあったはず。

あれ、君達の部屋に冷蔵庫無かったか?」


「お、覚えてないです…。説明されてないことは何もしてないので…。」


「そうか、まぁいい。

私の個室はココだ、お入り。」


確かに表札にはシオン=ツキバミと書いてあった。


「「お邪魔しまーす…。」」


個室だから僕達の部屋の3分の1の広さ。

クローゼットとトイレ以外の扉がない。

シオン先生はベッドの上で正座した。


「椅子があらへんからベッドに座り。

水は新品がその小さな冷蔵庫の中や。

紙コップもあるから2人で分けて飲みや。」


右手で指さす方に小さな冷蔵庫があったので開けて水入りペットボトルを頂いた。ご飯乗せる机に紙コップが置いてあり3つ出した。


「先生も一緒に水分摂りましょう。ローランド君、先生、コップ持って下さい。」


水を注いで3人で飲んだ。あ〜生き返る…。

気持ち悪いのも消えた。シオン先生は少しだけ水を飲んでから口を開く。


「2人ともこんな朝早くにどうしたん?

生徒でもこんな早起きな子が居るとは思いませんでしたよ。」


シオン先生は京言葉だったり敬語だったり

決まりがよく分かんないな。

と思いつつ正直に話した。


「僕は悪い夢見ちゃって…」


「僕は今さっき意識が戻ったようです。」


「そうか…。確かにローゼンはあの時気を

失っとったな。…ローゼン、すまなかった。」


ぺこりと頭を下げるシオン先生に思わず驚くローランド君。あ、水が零れそう!


「!?な、何です急に…」


「僕が気付かなかったせいで君に怪我をさせてしまった。申し訳ない。」


「あぁ、その事ですか。別に気にしてません。まぁ確かに?僕の美しいパーツに傷が

付いてしまったのは許し難いです。」


おいおい…。


「…」


「勘違いしないでいただきたい。許し難いのは自分の弱さです。強ければ怪我することも

無かった。それだけです。それに、怪我することなんて召喚士を志す時から覚悟してました。」


「…ローゼン…」


ローランド君……。

僕てっきりローランド君は「僕の美しい身体に傷が付いた!もうやだ!帰る!」とか言いそうだと思ってた。意外…。


「…君達が弱いのは当然のこと。」


「「!?」」


しょんぼりしていたシオン先生から辛口な

言葉が!!


「だって入学して経過しているのは数週間ではなく、数日なのだ。それで僕らより強いのは勘弁して欲しいよ。」


と困ったように笑うシオン先生。

ゲームでも見たこと無かった。シオン先生

いつも怒ってたから…綺麗に笑うんだな…。


「何やその顔は。」


「す、すみません。

先生笑うんだなーって思って…」


「失礼やな。僕だって心はあるんだ。

喜怒哀楽表せるぞ。…だから会議が嫌だという気分になるのだろう。」


「あ…。」


確かに。納得してるとシオン先生は話を

切り替えるために咳払いをした。


「んんっ…アーシェ、ここの医院長に会ったか?シュヴァルツ=ルージュという。」


「はい、会いました。」


「昨日、彼との話し合いで君達も会議に参加する事になってしまったからこそ伝えたい。

ヴァルハラは…


変な奴が多すぎる。」


すっごく真剣な顔で確かにそう言った。


「はぁ…。」


まぁ強い人っておかしい人が多いのが相場だし。


「特に気を付けて欲しいのは2人。

1人目の雷神トールの召喚士は見た目の割に

頭が悪い。人の名前を覚えるのが出来ないからイライラせんように。」


…見た目の割に頭が悪い…。

何と言えば良いのだろう。


「そして2人目のシヴァの召喚士は頭が毎日

宴の阿呆だ。気疲れするからなるべく話さないこと。」


うぅーん……取り敢えず話さない方が身のためと言うことだよな。


「分かりました。

みんなにも伝えておきます。」


「あぁ。本当に君達が彼らと必要最低限の

会話で済ませられるよう僕も気を付ける。

今回の会議では僕は夜叉が居ないと食事すら出来ないからあの場でアイツらにバカにされるだろうがな…。」


先生の顔にイライラが現れてる。

すると扉が開き、


「だぁいじょうぶ。そこで馬鹿にしねぇさ。

 今此処で馬鹿にするからなシャロン!!」


と男の人の声が聞こえた。その声を聞いた

シオン先生はとっても大きな溜息を吐いた。


「はぁ……僕はシオンだ。ったく…こんな朝早くにお疲れ様です。国家最高機関所属の貴方が何故このような場所にこのような常識外れの時間で面会なされるのでしょうか。お暇なのでしょうか。僕に分かりやすく説明願います。」


と苛立ち含む声でカーテン越しの人に言うとその人は勢いよくカーテンを開けた。


「うーん…?何言ってるか分からないが

シュヴァルツに会いに来たついでにお前を

笑いに来た。」


金髪つんつんヘアーで丈の長い黒いライダースコートを着た男の人が腕を組んでいた。

チョーカーにはワンポイントでイナズマのシルバーアクセサリー……。そして先生が国家最高機関所属と言っていた…。名前も間違えてたし…。


まさか…


この人が雷神トールの召喚士!??

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