第7話『暴れる魔獣』

前回のあらすじ


僕とゼウスが色々やらかした結果、

学校で管理している超強い猛獣の檻を壊したようです。それでスピルカ先生を助けたい一心で僕、メルトちゃん、ヨシュアは先生の指示を無視して走り出した。


プロメテウスのバイク乗りたかった…っ!



「ね、ねぇゼウス!

そういえばどこに向かってるの!?」


『1番強い気を放つ奴の所だ。

ベヒモスのだろう。

マスター、私の魔導書を開いてみろ。』


今!?

左手は運んでもらうためにゼウスと手を繋いで塞がり、右手は魔導書を持っている。

開こうにも分厚すぎて持てる自信が無い。


「開けないよ!」


『開けと念じろ。』


えぇ?念じる?

うーーん…開け!ブックオブゼウス!!

なーんて…


すると本が独りでに浮き、僕の前でページが捲られる。


「すげっ!?ゼウス見て見て!!」


『ふ、出来たなマスター。マスターが戦いやすくなるよう、敵を記せるようにしたのだ。』


モンスター図鑑見たいな物か!


『ベヒモスに関して私が記しておいた。

見てみるが良…』


急にゼウスが止まる。


「うわっ!」


『すまない。

どうやらベヒモスは1体ではないな。』


「え?」


ゼウスのお陰で浮いている僕は目線を前に向ける。

目の前には巨大な獣の目が。

赤い片目しか見えないぞ?

……え?もしかして…


ゼウスは僕と共に上へ飛んだ。

獣の全体を見せてくれるようだ。


鈍い紫に光る皮、黒光りする巨大な角2本、

歩く度に引き摺られる首輪の鎖。

荒い鼻息と赤い2つの目玉。


何を隠そうソイツがランクSSSのベヒモスだ。


「ひぃいいぃっ!!!でっか!!!」


リアルだと迫力が桁違いだ!


『いたたたたっマスター、

腕が止血されるっ鬱血するっ』


無理無理離したら食べられるもん!

…ん?本が開いて僕の前に。


【ベヒモス】

魔獣族:SSSランク

属性:闇属性


このページはベヒモスについて?


「ガァアアァアアゥッ!!」


「ひぃっ!」


めっちゃ怒ってる!!


…あれ?今僕達が居るのは廊下だろうか。

西洋の王宮廊下のように大理石の柱が規則的な距離を空け立っている。

が、柱やシャンデリアが部分的に破損している。


…柱はベヒモスが突進したと考えて…

何でシャンデリアが破損しているんだ?

今シャンデリアと同じ高さに居るけどベヒモスは手足が短い。柱に衝突しても全部落とすくらいでこんな明かりのところだけの破損は無理だ。つまり…


「ゼウス、此処にはベヒモス以外にも何か居る!」


『そのようだマスター。気を引き締めろ。』


「うんっ」


『さぁ、神の安寧をくれてや…』


「あ、待って!!殺しちゃダメ!!」


ゼウスの腕にしがみついて彼を止める。


『む!?』


「学校の管理している猛獣だから!魔物だから!

ダメだよ!!」


『そうは言ってもだな』


「それにほら、本に普段は温厚だって書いてある!今はビックリしてるだけだよ!

ベヒモス達は何も悪いことなんてしていない!」


驚いた顔で僕を見つめるゼウスはやがて溜息を吐いた。


『……はぁ…随分と優しいな、我がマスターは。』


ゼウスは左手で指を鳴らした。

暴れていたベヒモスはビクリと身体を跳ねさせ、そのまま倒れた。


「ぜ、ゼウス!?話聞いてた!?」


『安心せよ。気絶させただけだ。すたんがん?のように死なない程度の電気を流しただけさ。』


「よ、良かったぁ…」


…ランクSSSのベヒモスを指1つ、一瞬で気絶させたって…えぇえ?強すぎない?


『マスター、次だ。』


「え?」


あ、そっかまだ別の猛獣がいるんだっけ!?


『見つけた。』


また指を鳴らしたゼウス。

すると目の前に4つの足を持つ大きな鳥が痙攣しながら降ってきた。埃が舞い重いのがよく分かる。ランクBのグリフォンだ。


「ヒェッ」


『焼き鳥にしたら美味そうだな。

1匹くらいバレないだろう』


「グリフォォオオオンーーッ!!」


冗談だと思っていたけど手を伸ばし始めたので全力で止めた。


『いたたたっじ、冗談だ!!マスター!』


「冗談に聞こえなくなる動作はやめて!!」


『悪かった。…む、プロメテウスが近くに居る。

行くぞマスター。』


「えっ?この子達ほっとくの?」


『暫くは起きんさ。

それに起きても既に落ち着いてるだろうよ。』


「そっか。よし、じゃあお願い!」


『心得た。』


ゼウスに連れられ学校の室内を凄い速さで通り過ぎる。

本当に王宮みたいだ!後で歩いてみよう!


『よし捉えた!』


ゼウスがプロメテウスのバイクを見つけた。


『げぇっ!ゼウスの野郎が追い付きやがった!』


「エクス!こっち!」


「ヨシュア!メルトちゃん!」


僕が2人に向かって手を伸ばそうとするとゼウスが高笑いする。


『ふははははっ!そんな絡繰からくり如きで神雷を抜かせるとでも?さらばだ!』


『てめぇえええっ!!』


あーっ!プロメテウス達が遠のいていく!


「張り合わないでよ!!一緒に行こうよ!」


『すまないがプロメテウスと仲良しするつもりはないのでな!それに…』


僕から目線を何処かに移すゼウス。

僕も視線を追うと、スピルカ先生とアストライオスが随分と大きな4体の魔物に囲まれていた。


「スピルカ先生っ!!」


「うぉっ!??何してんだエクス!!」


名前覚えてくれてたんだ!!

…じゃなくて!!


「先生を助けに来ました!!」


『ベヒモス2体とキマイラ2体だな。』


「先生の所に降ろして!」


『分かった。』


ふわりと着地させてもらい先生の元へ。


「っははは!あのヒメリアに屈しなかったのか!

今年の卵たちは問題児が多そうだ!」


えぇえぇ、そうですとも。世界征服企む輩も居ますからね。誰とは言いませんけど!


「アストライオス!」


『!』


先生に応え、アストライオスは此方へ戻ってきた。


「すっげぇ…!」


アストライオスは先程と違い、星を纏わせたアテナとはまた違う槍を持っていた。

服も頭の装飾も強そうなものに変わっているため武装という事がわかる。


「俺の相棒、カッコイイだろ。」


「はい、美人ですね。」


「んふー!」


と、呑気に話しているとキマイラ達が僕達を襲うために走ってくる。


「わーーっ!!」


『私に屈するが良い…!』


悲鳴を上げた僕の前に移動したゼウスの両手に雷が溜まっていく。

放とうと手を前に突き出した瞬間


「俺様のお通りだぁああーーっ!!!」


飛んできたバイクがキマイラ達を轢いた。


『あ、私の獲物が…』


『あっひゃっひゃ!ざまぁあっ!!』


着地成功させたプロメテウスがこれでもかと言うくらい腹立つ顔を向けている。


あっゼウス、ステイステイ!!

腹立つけどマジで落ち着いて!!!

貴方が暴れると学校壊れるからぁーーっ!!

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