第3話 『代表決定』

前回のあらすじ


メルトちゃんが戦争の女神アテナを、

ヨシュアがゼウスのライバルであるプロメテウスを召喚。

更には裏切り者になるレン=フォーダンが天使長ルシファーを召喚しました。


神様いっぱい!!


 …


「えー神クラスのみなさーん。

入学おめでとうございまーす!」


よいしょと言いながら奥の祭壇に登る男の子。

皆がどよめいているが、あれは神クラスの先生だ。


「あー!誰だ子供って言ったのは!!

俺は先生だぞ!な、アストライオスー?」


先生は横に浮いている宇宙、または夜空のような髪を持つ男性に話しかける。

あれは星空の神アストライオス!

うわー…超綺麗…!


アストライオスはこくりと静かに頷いた。

喋らないんだ。


「ふふー!んで、俺の名前はスピルカ!

スピルカ=アストレイ!スピルカ先生と呼んでくれ!」


そうそうスピルカ先生!

少年のような見た目から朗らかな性格でたくさんの人に好かれている良い先生だ。


「皆を一人前の召喚士にさせるから覚悟しとけよ見習いどもー!」


こういう人ばっかだ。

この人はノリだから良いんだけど。


「えーと…何するんだっけ…あ、そうだ!

この中から神クラスの代表を勝手に選びます!」


「?」


何だそれ。聞いたことない…

あ。そうか、僕…というか本来の主人公はパートナーがアークエンジェルだからルシファーを召喚したレンが既に天使クラス代表になってたんだ!神クラスは確かヨシュアだったよな。

じゃあ今回も頑張れ、ヨシュ…


「エクス=アーシェ!!」


……ん?


「最高神ゼウスの相棒ー!お前だー!」


「……えっ…ぼっ」


僕ぅうっ!??

全員の視線が僕に向けられる。


「凄いねエクス!頑張って!」

「ファイト!エクス君!」


ヨシュアとメルトちゃんが僕の背中を叩く。


「無理無理!!代表とか無理!!

やったことないもん!!勘弁してぇ…」


表舞台に上がれる人間じゃないよ!


「エクスー?んー…ゼウス!

こっちまでマスター連れてきてー!」


『…エクスが行くと言わねば連れていかぬ。』


「マジかい。」


あぁ、笑顔が眩しい先生が真顔になってしまった。周りが、皆が見ているから答えを出さなきゃ。


『マスター、どうする。』


「………ゼウスが護ってくれるなら。」


行かない訳にはいかない。

するとゼウスはふっと微笑んだ。


『最高神を嘗めてもらっては困るぞ。』


ゼウスが僕の手をとり、宙を舞う。

そしてゆっくりとスピルカ先生の横に下ろしてくれた。


「よく来てくれたな!どうせ全員に自己紹介させるけどコイツはここで行ってもらう!

神クラス代表!」


先生はにこやかにマイクを渡してきた。


「…えっと…」


大勢の前に立つのは慣れていない。

昔の記憶が、虐められていた記憶が…。

人が、怖い。


中々喋らない僕を見てコソコソと陰口が聞こえてきた。


何でアイツが。無理だろ、あんなんじゃ。

ゼウス呼んで調子に乗っているんじゃね。

実際今震えてるし。笑いものだ。


嫌な言葉ほど耳に刺さる。

そのうち死ねと言われるのだろうか。

汚い水をかけられるのだろうか。

閉じ込められるのだろうか。


何も悪いことしてないのに…。


「ぁ…う…」


『マスター?』


「エクス?どうした?」


手が、足が震える…!

怖い、もう虐められるのは嫌だ…!

人の視線が怖い…!


しかし、途端に震えがピタッと止まった。

優しくて温かいゼウスの大きな手が僕の手を包んでいた。そしてそのままマイクを取り上げた。


『おい、蛆む…虫けら共!』


今蛆虫って言おうとしたよね!?

結局虫って言ったし!

頼むから問題を起こさないで!!


は最高神ゼウス。貴様らの上に立つ者。そしてエクス=アーシェの召喚により現界した。』


ゼウスの自己紹介になっちゃった。


『先程から貴様らの羽音が五月蝿くて敵わん!

マスターに文句があるのならば我に言え。

我に言えるのなら…その度胸は称え、然らば』


ゼウスの目が赤く揺らめいた。


『二度と口をきけないようにしてやる。』


誰もが後込み、膝をつかせるような気迫。

一瞬で雷雲が辺りを薄く包んだ。


『マスターの侮辱は何人たりとも我が許さん。

貴様らなぞ我の雷でいとも容易く消し炭になるのだから歯向かおうと思わない事だな。』


「ゼウス…。」


僕を護ってくれたの?


「プロメテウス、俺を抱えて!」

『あ!?』


「アテナ!私も!」

『承知。』


パートナーに抱えられたヨシュアとメルトちゃんが僕に見えるように大きく手を振ってくれた。大丈夫だよ、と口を動かして伝えてくれる。

2人とも優しいな…。

ゼウスと2人のお陰で勇気が出た今なら。


「僕、喋るよ。」


『分かった。』


ゼウスからマイクを受け取り、両手に勇気と力を加える。


「は、初めまして。

僕はエクス=アーシェと申します。

先程は、僕の相棒ゼウスがすみませんでした。」


『なぬっ!?』


何故謝る!?という目を向けられたが今は無視。ごめんね。


「こんな弱虫な僕に応えて来てくれたゼウスのお陰で今、僕は此処に立つことになりました。

僕自身は非力だけど、最高神ゼウスと一緒なら僕は強いです。それこそチートなくらい。」


こういうの、どう言えば良いんだろう。


「正直代表とかよく分からないし柄じゃないのは間違いないのですけど、選んでもらったからには頑張りたいです。よろしくお願い致します!」


…沈黙。


何か変な事を口走ったのだろうか。

何を言ったかまっったく覚えていないのだけども!


まずい…冷や汗が止まらない。

あの死ぬ前の落ちる感じと一緒だ。

白目を向きそうになった刹那、歓声が上がった。

ヨシュアとメルトちゃんを見ると2人とも笑顔で拍手してくれていた。

もしかして、認めて貰えた!?


「ゼウス、ありがとう!」


ゼウスの方へ体ごと向けると、彼はシルク生地の長い袖に手を突っ込み指を動かしたように見える。


「な、何してるの…?」


『んっ!?あ、いや、えっと私が別に少し洗脳してるとかじゃ無いから安心しろ!!』


「せんのう…?」


目が泳いでるし一人称が戻ってる…。


『おい、何かコイツらちょっとおかしくねぇか?』


「そうだね。人の周りにパチパチと何かが光ってる…静電気?」


『まさか…お父様…』


「うん。私達以外に何かしたみたい…。」


「えーっと…エクス、スピーチありがとう。

(自己紹介だけでよかったんだけど)マイク貸してくれ。」


スピルカ先生も冷や汗かいてる。

アストライオスがこっち睨んでるーーっ!!


「よし!じゃあエクスの挨拶も終わったことだし、最後にこの水晶玉に魔力を込めてもらうぞ!毎年神クラス代表がしている事だ!」


此方に睨みを効かせながらアストライオスが大きな水晶玉を持って来た。


「歴代の召喚士の魔力が籠っているだ!エクスもその1人になるんだぞ!」


「こ、光栄です!」


僕は杖を取り出した。


「これどれくらい魔力が必要なんですか?」


「どれだけでも大丈夫だ!生徒達の全魔力が注がれても爆発することなんて無いから!」


「分かりました!」


と言ってもどうすればいいんだろう。

形だけでもそれっぽくしてみるか。

えーと…構えて、それっ!


魔法使いのように小さく杖を振り、先端が光って水晶玉と線を紡いだ瞬間




水晶玉が弾け飛んだ。




召喚士見習いエクス=アーシェ

入学早々器物破損。

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