第46話『バトル勃発!』

 前回のあらすじ


 おかしくなったモーブの召喚獣、北欧神話の夜の女神ノートがパワーアップしてるみたいです。モーブも杖をナイフに変えるという錬金術が出来ていたしモーブ自身も強くなってるように見えます。ヨガミ先生は生徒に攻撃を仕掛けない。だから僕らが何とかしないと!

そういえばゼウスは最初で最後の観戦かもって言ってたけど…どういうこと?

あ!やり返しちゃった!!


 …


「ゼウス!!

観察するんじゃなかったの!?」


『だってオートスキルだもの…。』


口を尖らせて両手の指先を合わせ視線を僕から地面に移した。

ノリノリで球ぶつけてたじゃん…。


爆発による紫の煙が消えて分身を確認するけど…やはり木っ端だった。

その欠片は直ぐに火で炙られたかのように

焦げて消えた。


『…まぁ少しでも分かったし良い。』


「うーん…良いなら良いけど…」


「っあ!おい!エクスっ!モーブが」


ヨガミ先生の方へ向いたらモーブが僕の目の前に迫っていた。先生が残りの言葉のそっち行った、を聞くよりも先に僕に向かって刃を振るった。


「わーーっ!!」


咄嗟の出来事に僕は錬金術も使えず、

彼のナイフを30センチくらいしかない杖のままで受け止めた。ひぃーーっ!刃が近い!!


『マスターに刃を振るうとは許されざる行為!だが本体を倒すとノートが消滅する可能性が高い。故に手を出しにくい。』


「えぇ!?助けてくれないの!!?

 やばいよ!?モーブ君めっちゃ顔怖…」


そう言って彼を見たら…

彼は段々と痩せているように見えた。

顔の骨が目立ち始めてる…!


「ゼウス!

モーブ君がお、おじいちゃんに!!」


『ノートに魔力を与えすぎ…

いや、絞られすぎなのだろう。

その証拠にマスターへは物理だ。』


刃を引いて構え直し、再び振り下ろしてくる。

流石にやばいっ!僕は受け止めずに避ける事にした。モーブ君の動きは糸で操られた人形のようで単純で攻撃が読みやすい。


「ぜ、ゼウス!」


『これも修行だマスター。』


「えぇえ!?」


本当に助けてくれないの!?

あっ腕組んでニヤニヤしてる!!

本当に助けてくれないんだ!くぅ…っ!

えっと、えっと支援魔法はーっと…どこだ、どこだ…!!雷属性全部使えるならあるだろ気絶させるとか!えーとえーと…っ!


モーブはヨガミ先生に向けていた連撃を僕に繰り出す。てかヨガミ先生は!?


ヨガミ先生はアポロンと共にノート本体と

戦っているのが見えた。マジかー…。


『ほれ、頑張れ頑張れまーすーたぁ!』


ゼウスがニヤケながら手をパンパンと叩いてる。あの顔ムカつくぅ…アポロンはお父さん似だな…っ!



皆が後ろで交戦してる音が聞こえ、頭を切り替える。


やるんだ僕が!!


…見つけた!やりすぎるな、やりすぎるな。魔力調整ちゃんとしないと、殺さないように。


いかずち繭糸まゆいと!!」


そう叫ぶと僕の杖から無数の黄色く光る糸が伸び、モーブを縛り上げた。

彼は縛られた勢いでナイフを落とし尻もちをついた。


「よっし!」


『甘い、マスター。』


「へ?」


ゼウスの言う通りでバツンと音を立てて糸が千切れた。


うっそーーーっ!??

上級魔法だよ!?どんな怪力!?

あ、僕が弱く調整したからか!難しい…っ!


『いつものマスターで良い。魔力調整せずともな。もう一度縛り上げろ!』


「ひゃい!雷の繭糸!」


普段通り何も考えずに杖を振る。

杖からさっきの倍以上の糸が伸び太い糸となりモーブを捕らえる。


『うむ、上出来だマスター!』


「やっ…ん?」


喜ぼうとした刹那、糸がぱさりと床に落ちた。

モーブが急激に痩せ細り糸に隙間が出来てしまったのだ。


「…え、これヤバくない?ゼウス…」


『魔力をノートが吸い尽くそうとしている…!このままだと召喚士が死ぬぞ!!』


「うおっ!!」


ヨガミ先生!?


「召喚獣がでかくなってきたぞ!?」


先生の言う通りノートがみるみるうちに大きくなった。まさに巨人…。


「わっ」


今度はヨシュアだ!


「ヨシュアどうしたの!?」


「分身が消えた!!」


「えっ!?」


驚く召喚士達ぼくたちをよそにゼウスは


『何だ、まだ戦っておったのか。ざっこ。』


とプロメテウスに喧嘩を売った。


『あぁ!?んだとてめぇが探れっつったから手加減してやってたんだよ!!』


何やかんや言う事聞いてるんだ。


メルトちゃん、イデアちゃん、シャル君、

ローランド君、スカーレット君…皆も唖然としてた。ってそうじゃない!分身は何処!?


『どうやら吸収したようだな。

完全体となる為に。』


完全体!?

あ、ヨガミ先生が走ってきた。


「エクスー!!」


「あ、せんせいだぁあいっ!!」


走ってくるなりそのままの助走で拳骨をくらった。いっった!!モーブには手を出してないのに!!涙目で先生を睨みつけると汗だくの顔に青筋がたっていた。


「おまっ…お前ら…!

避難命令出しただろうが…!!」


「だってスピルカ先生が見逃してくれたから…。」


今の状態アレに心当たりがある故な。コレが終わったら話す。皆の者!あの巨大化したノートに魔法を放て!!』


「んなことしなくて良い!

俺がやる!アポロ…」


夜帷よとばりの羽衣】


「!!」


突如ノートから声が聞こえたと思ったらヨガミ先生とアポロンに黒い霧みたいなものがまとわりついた。


「な、何だこれ…力が入らねぇ…っ!」


先生とアポロンはガクンと膝をついてしまった。


『うげぇっ!!最悪!!コイツ!

支援魔法をボク達に掛けたんだよ!』


「簡潔に!!」


『この魔法は夜を纏わせる力だよ!!

夜で力を発揮する神々を補佐するためのね!!本来なら味方に使うための魔法さ!』


「んだと…っ!!」


そんな魔法聞いたことがない…。

ノート限定の魔法か!


先生とアポロンは太陽によって力を発揮する。夜だと少し弱くなるんだ。

本来バフである魔法を敢えて相手に掛けて

弱体化させるなんて…!


「中々頭良いじゃない。ね、エクスちゃん。アンタ達何か知ってんでしょ。これ終わったら協力の対価として話してもらうから。」


とスカーレット君が僕の頭の上に腕を置いた。


「わ、分かったよ…。」


出来たてのたんこぶあるから刺激しないでほしい。


「で?ゼウス、アタシ達何すれば良いの?」


『魔法を打ち込めば』


話そうとしたその時、ノートは魔法を連発させ紫の球が沢山飛んでくる。

皆が避けようと足に力を入れた時、メルトちゃんが前に出た。


「みんな私に任せて!アテナ!」


『はいマスター!【水神すいじんアイギス】!』


アテナが巨大な盾を構える動作と共に僕達を覆う薄い水の結界が張られ球を弾いていく。


「わぁ!ありがとメルトちゃん!」


お礼を言うとメルトちゃんは


「えへへっ」


と僕にブイサインしてくれた。可愛い…っ!


『む、アイギスではないか。

使ってくれているのだな。』


『えぇ、お父様からもらった大切なモノですから。』


ゼウスとアテナは微笑んだ。

今それどころじゃないけどね。


『よっしゃあ!!畳み掛けるぜマスタァ!』


「うん、派手にやろうか。」


「アタシ達もやるわよイーリス。」


『御意。』


『マスター、俺達もやろーぜ!』


「うんっ!」


ヨシュアとスカーレット君、イデアちゃんが魔導書のページを確定させた時、シャル君とローランド君が杖を振る。


「アルテミス!」

『はぁい!【月光のベール】!』


「アフロディーテ!」

『♪』


アルテミスがオーロラのような綺麗な魔法を掛け、アフロディーテが薔薇が咲き誇る美しい風を吹かす。

何か良く言えないけど強くなったのは分かる!

よし、僕も…


『マスター。マスターはまだ動くな。』


「えっ」


『今はまだ…。』


「わ、分かった。」


僕は1歩引いて皆を見守ることにした。


プロメテウスのバイクに乗ったヨシュアは

とても楽しそうに目を輝かせる。


『オラァアでけぇ図体してんじゃねぇ!!

【プロミネンスインフェルノ】!!』


バイクをかっ飛ばし巨大なノートの周りを走りエンジン音を轟かせながら銃を乱発する。

銃弾は赤い閃光を描きノートに当たった瞬間赤く爆ぜ、赤い彼岸花が全身から咲いているように見える。ダメージも相当だったからか

ノートは四つん這いになった。すっげぇ…。


「イーリス!」


『はい!【虹楔にじくさび】!』


虹色の楔が天から降ってノートの身体を貫く。威力が凄まじくプロメテウスに当たりそうだ。


『おまっお前ふざけんなよっ!!!

俺のマスターまで殺す気か!!』


『ふんっ』


仲悪っ。


『マスター、俺もやっていいかな?』


「うん!」


今度はロキが


『うっしイーリスちゃんそれ利用すんね!!

久し振りに会ったのに何にも挨拶してくれないんだから寂しいよ!

なぁ、ノートちゃん!』


と詠唱もせず右腕を左から右へ動かすと、

イーリスの楔の1本が黒い炎を発し燃え上がる。

炎は次々と他の楔に着火し、ノートの全身を黒い炎で燃やした。皆凄い!


ノートは獣のような叫び声を上げ悶え苦しんでいる。何か可哀想…。

本当はこんな事したくないだろうに。

暫くするとノートは叫び声を上げなくなった。


「おわ…った?」


僕の零れた声を拾ったゼウスは首を横に振る。


『いや。』


何とノートは起き上がってしまった。

傷も塞がっていた。


まさか効いてない!?


『ふん、やはりか。

マスター、今こそやれるだけの力を放つ時だ!!』


やれるだけの力って…?

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