第75話『ドレスコードとへびつかい』

 前回のあらすじ


学校上層部は国家最高機関“ヴァルハラ”

という名前でオーディンの召喚士である王様がそのリーダーだとか。

そのお偉いさんから部屋の全員が臨時定例会議に参加せよとの命令が下された。

意識不明の皆が目覚めたら日程を決めるって言ってて早速クリムさんとシャル君が目覚めたんです。


 …


目を開けたクリムさんはゆっくりと顔を左右に動かした。


「に、にいさま…それに…皆様?」


「あぁクリム!貴女が起きて本当に良かったわ!すごく心配したのよ!!」


クリムさんの手を大きな両手でぎゅっと握りしめるスカーレット君。良い兄妹だよな…。シャル君も起き上がらずキョロキョロしている。


「オレ、いつの間に意識を失って…

あいった!」


「あ、ダメだよシャル君は足の骨に罅入ってるらしいから!」


「え…あ、そういえば…。それで此処は…」


目を丸くするシャル君にリリアンさんは少し眉を下げて口を開いた。


「国で1番大きい病院です。

あの、アルカディアさん。

申し訳ありません、私焦って貴方を女性と

勘違いしてしまって…。」


と頭を下げた。

リリアンさんも間違えたんだ。


「お気になさらず!

格好が格好でしたし慣れてますので!

あの、それより皆さんご無事ですか!?」


ゆっくりと起き上がろうとするシャル君に

気付き、リリアンさんがベッドのリモコンを操作し、ベッドごと起き上がらせる。


「うん、シャル君達のおかげで皆…大丈夫だよ。軽い怪我で済んだみたい。ちょっと意識が戻らない人も居るみたいだけどね…。」


「そう、ですか…。」


落ち込むシャル君だったけどメルトちゃんが


「シャル君とクリムちゃんが起きて良かったわ〜!」


と言って皆が頷いたのを見て笑ってくれた。クリムさんも。

2人にもさっきの事を伝えなきゃと思い、

これまでの事を皆で話した。



 当然、2人も驚いていた。



「こ、国家最高機関ヴァルハラ…?の、

り、臨時定例会議…!?に、オレらが出るのですか…!?」


「えぇ!?クリムやらかしそうです!」


「でも国家最高機関からの命令なのよ。

逆らったら…がぶっと食べられちゃうかもよ?骨の髄まで、ね?」


子供に仕掛けそうな脅しをクリムちゃんに

するスカーレット君。

しかし怯えた彼女には効果覿面だった。


「ぴぇーー!!

クリムを食べても美味しくないですぅ!

脂多くて美味しくないですぅー!!」


大号泣…。すかさずレンが


「兄様が妹泣かせたー。」


と弄り始める。それに対してスカーレット君は中指を立てた。


「アンタは黙らっしゃい!クリム、大丈夫よ。何があってもアタシが貴女を守るから。ね?それにご飯が美味しいって医院長サンが言ってたわ。」


「ひぐっ…それは…後で食べるための…

 えづ、餌付けではないでしょうかっ!!」


あーあ。信じちゃったよ。

流石のスカーレット君も


「…」


言葉を無くして笑顔で固まってた。

スカーレット君が100%悪いね。

しかしクリムさんが怯えた状態だと色々と

彼女が大変そうだ。

何とかして嘘だと分かってもらわないと…。

するとシャル君がふっと微笑んだ。


「クリムさん、何も悪い事をしていないのなら食べられませんよ。ほら、エクス君も仰ってたじゃありませんか。お誘い頂いたのはご飯一緒に食べようの会だって。お偉い方と一緒にですよ?そんな機会滅多にありません。それはそれは緊張しますが…またとない機会かもしれませんし、上手く行けばお兄様は

この上なく褒めてくださるでしょう!」


…あれ?シャル君?途中までうんうんとか

思って頷いてたけど最終的にスカーレット君に戻ってきたよ?

クリムさんはちらりとスカーレット君を見るとスカーレット君は


「えぇ、めいっぱい褒めてあげる。それに

アタシがいっぱいおめかししてあげるわ。」


とウインクした。


「…はいっ!」


泣き顔から段々と笑顔になるクリムさん。

良かった。


「今更だけど定例会議っつってんのに

臨時って何か矛盾だよねー。

普通に招集でいいと思うんだけど。」


とレンが急に言う。そんな変なこと?


「アタシも思ったけど…定例会議を日付

ズラして臨時でやるーっていう考えだから

じゃないの?」


スカーレット君の言葉にフルフルと首を振るレン。


「それなら臨時会議さ。定例っていうのは日付が決まっていることを言うんだからね。」


「それに関しては私から訂正させてもらう。」


扉が開いてヒメリア先生が入ってきた。


「ヒメリア先生!」


「私の弟が失礼した。アイツちょっと天然でな。教師全員とシュヴァルツで話していて…生徒の目覚め次第で今月の定例会議を早めるだけって結論になったんだ。」


「言い方あれですけど機関側はシュヴァルツさんだけで決めていいんです?」


とレンが挙手しながらヒメリア先生に聞いた。するとヒメリア先生は首を少し傾けて

腕を組んだ。


「今回の事件は既にヴァルハラに通じてるし、シュヴァルツがヴァルハラのメンバーに確認とって大丈夫って言ったからな。

信じるさ。…すまないな、巻き込んで。」


今日の先生、謝ってばかりだ。

そんな中リリアンさんが小さく手を挙げた。


「気になさらないで下さい。…あの、先生。

会議は立食パーティー形式なのですよね。

それで…アルカディアさんはどうやって参加なさるのですか?」


ヒメリア先生は体を左に反らしながら

シャル君を覗く。


「足の骨に異常か。アルカディア、召喚獣を

小さいサイズで出してくれないか。」


「は、はい!出てきて下さいアルテミス!【summon】!」


ぽふんっと紫の煙と共に小さなアルテミスが現れた。


『はいはーい!

呼ばれて降臨アルテミスでーす!』


「こんばんは、女神アルテミス。私の不手際でマスターを怪我させてしまってすまなかった。」


ヒメリア先生はぺこりと頭を下げた。


『顔上げて?貴女のせいじゃないわよ。

超カッコイイシャルが見えて嬉しかったわ。それで何かしら?』


「車椅子を創れないか?」


『車椅子?あぁ、シャルを乗せるのね!

魔法で浮かせられるけど?』


「それじゃダメだ。ヴァルハラは魔法に煩くてな…王様の命を脅かす危険分子になるかもしれないとな。だから会議中の彼らの前で

護身で出した魔法ですら目の前で発動していれば許されん。

それが王様のいないパーティーでもな。」


『あら…厳しいのね。分かったわ!

アルテミス特製可愛い車椅子創っちゃう!』


「ありがとう、アルカディアの移動の手助けをしてやって欲しい。」


『まっかせて!パーティーならついでに

服も作ってあげちゃう!

うんと可愛いの作っちゃうんだから!』


「か、カッコよくお願いしたいです…。」


そうか。ドレスコードあるなら服が必要だな。僕、制服しかないぞ?それダメじゃね?


「他の皆も召喚獣に頼んでくれ。

もし作らないと言われたら購買部に連絡を取るから言ってくれ。」


するとメルトちゃんがキラキラした瞳で

ヒメリア先生を見ていた。


「ヒメリア先生もドレス着るんですか〜!」


「あぁ。イフリートに作ってもらったら完全に火のドレスだったから私は買った物だけどな。ドレスコード守らないと小言を言われかねんし。ヴァルハラの面子全員召喚獣が作ったドレスだと聞いたぞ。」


「ヒメリア先生のドレス姿楽しみにしてますね!」


「あぁ、ドレスコードはフォーマルであることだ。私も皆の姿を楽しみにしている。邪魔したな、しっかり寝るように。おやすみ。」


ふっと微笑み退出したヒメリア先生。僕達は自分のベッドに戻って話すことにした。


「ドレスねぇ…良いじゃない。

立食パーティーなら女の子は動きやすい服装が良いわ。長袖と丈長めのワンピースとか

プリーツドレス…いや、それがノースリーブでもテールドレスでも良いわね。

男達はテールコートが無難かしら。」


スカーレット君の口から何か専門的な言葉がツラツラと…何言ってるのか分からない。


「女の子達はアタシがプロデュースしてあげる!ヘアメイクからドレスまで任せなさい!」


スカーレット君に喜ぶ女の子達。

凄いなぁ…ファッションもいけるんだ、

スカーレット君は。


「ねーねー俺達は?」


「ぁ?

アンタは天使長サマにでも頼んだら?」


「えぇー?そんなぁー!」


レンに冷たいな…。


「ヨシュアちゃんとローランドのは

やってあげましょうかね。

いつ起きても大丈夫なように。」


「そうだね。僕もゼウスに頼んでみるよ。」


「そうしてちょうだい。

口は出してあげる。」


ゼウス相手に??

凄いなぁ本当に…。


「シャルちゃんもよ。

アルテミスに口出しするから。」


『のぞむところよ!私のセンス見せてあげるわ!イーリスのマスター!』


アルテミスにまで…?


『ほんっとアイツに私を会わせるとは…!

マスター何を考えている!!

あぁ虫唾が走る!!気分が悪い!!』


な、何だ??聞いたことの無い男の人の声が扉の奥から聞こえる…。


「ごめ、ごめんなさい…彼が会いたいって…言ったから…呼んだの…

た、叩かないで…痛い…」


この声…医院長だ…。

てことは…マスターって言ってたし…もしかして医院長さんの召喚獣のアスクレピオス?


『あぁああっ!!消毒したいッ!!』


「…この部屋の子…見たいって言ったの…

アスクレピオスじゃん…。」


『そうだ!だから我慢して入るんだろうが

邪魔するぞ!!』


…言葉が出ない。随分と怒ってらっしゃる

召喚獣さん…。彼は薄い黄色の長髪、両肩に黒い鳥の艶やかな羽根のファーが着いているマントを羽織った男の人だった。

彼がアスクレピオス…。

やっぱ神様なだけあって顔が良い。


彼は眉間に皺を寄せてズンズンと歩いて僕をちらりと見た。2度も。


『!』


そして目を見開くアスクレピオス。

え?何??僕何か…


『お前…祖父の…召喚士か…!』


黒い手袋を付けた震えている手で僕を指さした。


「祖父?」


『ゼウスだ!!』


「あ、はい…そうです。」


素直に答えるとこれ以上無い嫌そうな顔を

した医神。


『…っ…何でこう…厄介な奴が周りに居るんだ…!!いいか、私に近付くなよ…!!』


「な、何で?」


『何で、だと?私が生涯かけて創った蘇生薬を理由に私はゼウスに殺されたのだから

恐怖し嫌悪するのは当然だろう!!!』


「…ゼウスが…殺した?」

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