第74話『ヴァルハラからの招待状』

前回のあらすじ


この国を束ねており、学校の上層部の機関でもある医院長さんは何とヒメリア=ルージュ

先生の弟さんでした。

あと…不思議さんでした。


 …


皆分のご飯が届き、ナースさんが机に乗せてガラガラとベッドの上に運んでくれた。

ご飯と味噌汁とサラダと…ハンバーグだ。

匂いも美味しそうだし普通に楽しみだな!


いざ実食!


「いただきまーす!」と皆で声と手を合わせて食べた。


うん!…………ん?あれ?味覚障害かな。

味が…しない。え?何これダンボール??

そんな僕に気付いたスカーレット君が

話しかけてくれた。


「エクスちゃん?

美味しそうな顔してないわね。」


「え??え??

スカーレット君美味しいのそれ?」


「えぇ、いけるわよ。

クリムの料理の方が美味しいけど。」


とハンバーグを上品に箸で小さく切って口に入れるスカーレット君。


「…スカーレット君って美容と自分に

ストイックそうだからこういう味のないご飯とか平気そうだよね…。」


「味するわよ?」


「…え??嘘。」


「食べる?こっちに来なさいな。」


気になりすぎて裸足でベッドに向かい

スカーレット君が切ったハンバーグ1切れを

口に入れる。

…う、うまっ!お肉の味がちゃんとする!

え、じゃあ何で僕のご飯味がしないの?


「???」


「エクスちゃん、変な顔よ。」


「ちょ、ちょっとスカーレット君

これ食べて。」


と僕の皿をスカーレット君に差し出して

食べてもらった。すると


「食べれなくは無いけど…何かしらこれ。

紙の塊かしら?」


「やっぱおかしいよね?

僕がおかしいんじゃないよね?」


「エクスくーん俺も紙食べたーい。」


本当の紙でも食っとけ。

という言葉は飲み込み皿を差し出す。


「あーむっ………っはは!

すげぇマジで紙の塊だ!あはは!まずっ」


「な、何故アーシェさんのお夕飯だけその…味気無いのでしょう?私のお料理は美味しいです。メルトさんはどうですか?」


「私のも普通に味して美味しいよ!

イデアちゃんは?」


「おいひー♡」


と女子陣も美味しそうに食べていた。

あれ?イデアちゃんもう食べ終わりそうじゃん!食べるの早っ!

…誰かが作ってくれた物を残す訳にはいかないし食べない訳にはいかない。

味噌汁くらいは………ぅえっ!味噌少ないのに水が多すぎてぜ、絶妙に不味い…!!

普通の白米とサラダがとてつもなく美味しく感じる…!

それを上手く活用して食べないと。



間。


「な、何とか食べた…!」


口の中がカオス…。

それから少しするとナースさんが片付けに

来てくれた。流石に何で僕のだけ不味かったんですかと聞く勇気が無く黙っていた。

あぁ、ナースさんが去っていく…

僕頑張りましたよー!…ん?あれれ?

医院長が入れ替わりで入ってきたぞ??


「…皆ご飯ちゃんと…食べたね。

…えらいえらい。」


と全員の頭を撫でた。

子供扱いされてる…。


「…エクス=アーシェ、君のご飯…僕が頼んで作らせてもらったの。…美味しかった?」


貴方が作られたんか!!!!

ものすっごく味が無かったです!!!

…とは言えず。


「は、はい…(白米とサラダだけ)

美味しかったです!」


と言うとフッと微笑んだ。


「…良かった。」


「でもお忙しいはずの医院長サンが何で

エクスちゃんのご飯作ったの?」


そうそれ!

良くぞ聞いてくれたスカーレット君!

するとシュヴァルツさんは真顔で


「…興味本位…?実験…?」


と言った。いや?マーク付けられても!

てか実験って何!?


「…君は…優しい。…だから、万が一の時、選択が出来ないのが分かったよ…。」


…僕のこと?選択って?


「…選択というのは……残酷な選択のこと、だよ…。例えば…とても強い魔物が居て…

倒すには犠牲が必要。…仮に犠牲は君以外の生徒、教師全員だとしよう。

でも倒さないと…他の皆も死ぬ…。

君は…友達を犠牲に出来る?」


「……。」


静かにのんびりと、怖いことを言うこの人は氷のように冷たく感じた。

友達を犠牲に…?出来るわけない。


「…他の皆というのは…犠牲の皆の家族。」


「…!」


タチが悪すぎる…!

思わず口をぎゅっと結ぶと

シュヴァルツさんは


「…ほらね。…その迷う時間が命取り。

これがもし今起こっていたらこの瞬間に

他の皆も、生徒も教師も…

無駄な犠牲に早変わり。


…僕の所属機関“ヴァルハラ”は…全員、確実に生徒教師を犠牲にする道を選ぶ。」


ヴァルハラ…。北欧神話主神オーディンが

住むといわれる宮殿…。


「あ、あの…ヴァルハラって…?」


小さく手を挙げたメルトちゃんに

シュヴァルツさんは説明し始めた。


「…ヴァルハラというのは…この国を束ね、国民を護る最高機関だよ…。…君達ゼウリス魔法学校の運営もしているよ。

…機関に選ばれるのは…この国の王様とその召喚獣オーディンに名を呼ばれた者。

…その者達が集まり王様の指示で動く機関、それがヴァルハラ。

普通の人は機関の存在しか知らないと思う。

…これは国に通じる仕事をしている人達だけが知ってること。」


「ふーん…

ある意味王様も機関の1人なんだ。」


 レンがそう言うとこくりと頷いた。


「…機関のリーダーは王様。

王様が君達を殺せと言えば殺す。

王様が君達に仕えろと言ったら仕える。

…王様の命令は絶対。答えはYESだけ。

どんな残酷な命令だろうが迷っちゃダメ。

王様は国民の事を第一に考えているお方。

だから、多少の犠牲を払ってでも国民を護る。…それが僕達。」


…何か、何か違和感がある。何故国民の事を第一に考えている人が犠牲を許すのだろう。

この考えは綺麗事なのかな。


「…あ、そうだ言い忘れてた。

あのね…さっき、お姉ちゃん達と話してて…決まったこと。

…エクス=アーシェ。」


「は、はい。」


シュヴァルツさんは僕だけじゃなく

皆の名前を淡々と呼んでいく。


「レン=フォーダン。」


「はーい。」


「リリアン=ナイトイヴ。」


「はい。」


「メルト=ガーディア。」


「は、はい。」


「スカーレット=アルカンシエル。」


「はいはい。」


「イデア=ルークス。」


「はーい!」


「シャーロット=アルカディア、

 ローランド=ローゼン、

 クリム=アルカンシエル、

 ヨシュア=アイスレイン。以上10名、


臨時定例会議参加を国家機関ヴァルハラが

命令する。」




 !!


ヨガミ先生やシオン先生の言う通りだ…。

やっぱり開かれる…。

しかも上層部のリーダーが王様ってことは…王様とご飯!!?


「あ、あの…

どのような会議なのでしょう…。」


緊張気味のリリアンさんを和ませようとしたのかシュヴァルツさんは顎に手を当てた。


「…んー簡単に言うと…

ご飯一緒に食べようの会。」


大分丸く答えたな!!!!

ほらリリアンさんの目がまん丸になってるよ!


「…いつもね、定例会議って言って…教師達とご飯食べながら…現状や今後について

話し合っているの。…君達も来て。」


最初からそう言って………待って。

それってもしかして…


「今回の事をアタシ達に聞くのね。

証人ということかしら。」


スカーレット君に頷いたシュヴァルツさん。


「…君達は…教師とは別行動で…事件鎮圧に貢献したって聞いたから。…王様は会議には毎回参加なさらないから大丈夫、怖くないよ。…それにご飯ちゃんと美味しいから。」


と僕を見る。

…やっぱり嘘吐いたの分かってたな。


「…4人の意識が戻ったら日程を決めるね。

…今日はお疲れ様。…もうすぐナースが新品の着替えとタオルとお風呂セット持ってくるはず。…あの扉の奥にお風呂あるから

リラックスしてゆっくり寝てね…

じゃあおやすみなさい。」


シュヴァルツさんの引き締まった背中と引き摺られる白衣をただ何となく見つめていた。

少ししてやっと呼吸が楽になった。


「臨時定例会議…か。怖いなぁ…。」


僕の呟きから皆が話し始める。


「立食パーティー形式なのかしら。

それとも対面式なのかしら。

…どの道アタシ達に逃げ場は無いわね。」


「ヨガミ先生が立食パーティーって言ってたよ。ね、エクス君。」


「う、うん。」


「私パーティーなんて行ったこと無いわ〜!

 マナーとかうろ覚えよ〜??」


「だ、大丈夫ですよメルトさん。

先生方から離れないようにしていれば…!」


「ご飯楽しみだなぁ〜!」


1人だけご飯楽しみなイデアちゃんの隣の

クリムさんと、クリムさんの隣のシャル君が少し動いた。


「クリムっ!!」


「シャル君!!」


 皆で2人の周りに立つ。


「クリム、クリム!アタシよ、兄様よ!

起きて、起きてクリム!」


スカーレット君がクリムさんに呼びかける。


「シャル君!シャル君も起きて!

皆待ってるよ!」


僕もシャル君に呼びかける。すると…


「「う、うぅ…ん…」」


2人同時に唸って…


「「ん?」」


2人同時に起きた。

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