第66話『× × × ct』
前回のあらすじ
プロメテウスがヨシュアを庇い消えた。
それによりヨシュアの心と記憶に変化が見えたかと思ったが曼珠沙華のような爆発を見た途端、記憶が混ざり元に戻ってしまったようで。
…
パァンという乾いた音。
それは俺の銃の発砲音ではなく、
メルトが俺の頬を平手打ちした音だった。
痛…。
「め、メルト?ヨシュアにビンタって…?え?流石にスピルカ先生もびっくりしたぞ…。」
「先生に銃向けるって…なんてことしてるの!ヨシュア君何か変だよ!!
おかしいよ!!元に戻ってよ!!」
「っ!!」
[ヨシュア?お前変だぞ?どうした?]
「がぁあっ!!」
またあの声…!
痛い痛い痛い…っ!!頭が…っ!
「皆さん!オロチの頭あと1本です!!」
っ!!そうだ俺はオロチを倒さないと…!
プロメテウスの為に…!!
「リリアン!俺がトドメを刺す!」
「ヨシュアさん分かりました!アーサー!」
『あぁ!我が手に有るのは勝利の剣。開闢の光此処に有り。君に永遠の安寧を!
【聖剣エクスカリバー】!!』
アーサーが煌めく剣撃を放ち、オロチの最後の首を落とした。
そして剥き出しになる胴体のコア。
「終わりだ…っ!」
ぐぅ…っ!また頭が…っ!!
『マスター、ちゃんと守ってやれよ!』
!プロメテウスの声…
「うん…!」
俺は銃を構え、宝石を赤い閃光で
曼珠沙華を咲かせた。
「やった!!!」
喜ぶメルトの声は聞こえるが、ヤマタノオロチは苦しそうな声もあげず黒く染まり、
ボロボロと崩れながら消えていく。胴体が消えた場所に沢山の生徒がぐったりした状態で山積みになった。
「お前達!!」
「テトさん!!」
スピルカ先生とリリアンが一目散にそちらへ駆け出した。
「あわわっ!私も助けないと!
ヨシュア君は座って休んで!
あ、ビンタした事は謝らないから!」
「…。」
メルトは慌ただしくしながら山積みの生徒の元へ。
「…俺、何して…」
頭がズキズキする…何となく今が分かるようになって来た…?
[プロメテウスのマスターよ。…いや、ヨシュア=アイスレイン。この声が聞こえるか。]
「ゼウス…?」
[む?どうした、覇気と狂気が無いが。]
「…頭痛いの。」
[何と戻ったか!それなら大変だ。
断末魔の叫びを聞かずに治療せねばな。]
断末魔の叫び…?
[いーやぁあっ!!ゼウス助けてアビスが!
アビスがぁ!!]
[ちょ、ちょっとマスター今は黙ってくれないか。私今お話中…]
エクスの…悲鳴……?あれ?俺何か忘れて…
「あ、そうだ。
エクスの断末魔の叫びを聞いてないんだ。」
[げ。]
危ない危ない。忘れちゃいけない事忘れてた。っふふふ…
「ねぇ、倒したよ。ヤマタノオロチ。
約束だよね。教えて神様?最高神様?」
微笑みながら聞くと頭に響く声が煩くなる。
[もー!マスターのせいでヨシュアが狂人に戻っちゃったぞう!!]
[え!?僕のせい!?
てかヨシュア正気だったの!?]
[さっきまではな!!マスターの悲鳴が聞こえた途端、狂気に逆戻りだ!]
[えぇ…!?ご、ごめんなさい…!]
[許す。]
[あ、許してくれるんだ。]
[その分プロメテウスの代わりに私達がヨシュアを止める。良いな?]
[うん。友達1人救えないで何が親友だってなるからね。だからヨシュア、僕の元へ来て。]
「…だから居場所聞いてんだけど。
茶番やっと終わった?」
[アッごめん!]
[場所は…校舎の地下、秘密裏の部屋だ。]
「…地下?」
[場所は教えた。行き方まで教えるとは言ってないからな、己で考えろ。ではな。]
「…1つ、思い当たる場所がある。
待ってろ。」
[え、思い当たるの???マジ?]
[マスター、通信切るぞ。]
[あ、ちょっと待って!ヨシュア!
どんなヨシュアでも僕は嫌いになんてならないからね!友達が間違ってるなら友達として正してあげるんだ!]
「…君は偽善者じゃない事を祈るよ。」
そう言って部屋を出たその時、
「よーしゅあくんっ♪」
黒髪の男がそこに立っていた。
「…誰だよ。」
そう言うと男は驚き
「えぇ!?また意地悪言うの〜?」
とニヤけた面で俺と話し始めようとする。
本当に誰かわかんねぇけど本能がコイツは
ウザイと言っている。
「俺は急いでんだよ。どっか行け。」
「おぉっと…機嫌悪いの?
いつもの猫かぶりが解けてるよ?」
「…あのな、俺は本当にお前のことなんざ
覚えてねぇっつってんだよ失せろ。」
そう言うと男はやっと口を閉じた。
「…どうやら訳ありみたいだね。雰囲気も違うし…いつものヨシュア君じゃないのはよく分かったよ。じゃあ改めて…俺はレン。
レン=フォーダン。よろしく新ヨシュア君?」
「…うぜ。」
呟いて1人で歩き始めると横にぴったりくっついてくる。
「えっひど。まぁいいや、数少ない正気の人だしついてこーっと。」
「はぁ?ついてくんな!」
「ねぇねぇ知ってる?さっきから他の生徒がおかしいの。ここまで来るのにルシファーと一緒に沢山の生徒と戦ってきたの。
ヨシュア君は大丈夫だった?」
さも当然のように会話を続ける黒髪。
うぜぇ…。
「…。」
「あ、無視?ねぇどうしたの?それが本性なの?それともまた悪いもの食べた?」
「…。」
「それに召喚獣は?こんな所で召喚獣呼ばないのは危ないよ。」
「…。」
閉じることを知らない口か?
「あとエクス君と一緒じゃないんだね。
ふーん。」
エクス…。
「なぁ、お前エクス=アーシェを知っているのか?」
「そりゃあね。え、君が一番仲いいのに何言って……もしかして今のヨシュア君ってさ、記憶喪失?」
覗き込んでくるレンに首を振る。
「……………いや、そうじゃねぇ。頭の中が
ぐちゃぐちゃなんだ。昔の記憶も…ここまでの記憶も…みんなぐちゃぐちゃ。お前の声も聞き覚えあるけど顔も名前も覚えていないし。」
「うーん、記憶の混在…ってとこかな。
そうなった原因があったんだね。
俺は今のヨシュア君もいいと思うけど笑顔で毒吐く方が君らしいと思うよ。
絶妙に中指立てたくなるって言うかさ!」
「喧嘩売ってんのか。」
「売らないよこんな時に。
…というか目的あって歩いてるの?」
「…さぁ。」
「えっ」
白い怪物…壊れた壁…あそこに行けと本能が言う。道も知らないはずなのに。
この扉は錬金術部屋…?
あぁ、この廊下だ…。
「あれ?此処って白い化け物と初めて会ってエクス君と俺で対処したとこだね。この廊下はダメージ少ないな。人があまり通らないんだねぇ。流石に曲がり角の壁、直ってるなぁ。また化け物が中に居たりして?」
「…」
銃弾は…あと5つ。5つあれば壊せるか?
「どうしたの?
この壁壊すなら俺が手伝うよ。」
無駄撃ちせずに済むからその方が良さそうだ。
「頼む。」
「はーい【
白と金の神々しい杖から光が溢れ、一瞬にして壁が派手に破壊された。しかしこんなに派手なのに破壊の音は聞こえなかった。
瓦礫を避けつつ壁の中を覗き込むと下り階段が中心にあっただけの暗い部屋があった。
「ねーえーお礼もないのー?まぁいいけど。
…わ、此処さぁ…ドアも無かったところを見ると秘密の部屋だね。よく分かったねこんなところ。行くの?」
「あぁ、悲鳴が待ってる。」
「ん?姫?んー…まぁ面白そうだからついてくけどさ。」
俺は闇が広がる階段をゆっくりと降りた。
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