第68話『敗北の最高神』

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前回のあらすじ


ヨシュアとレンが地下で僕と合流。

そんな中アビスのホムンクルス1万が放たれました。

けれどゼウスが一瞬で潰したみたいで…?


 …


「い、1万だよ…!?

しかも魔獣の血も大分使って強くした地上のホムンクルスとは出来が違うものなんだけど指パッチン1回でなんて…!!」


焦るアビスに詰め寄るゼウス。


『それがどうした。最高神にとっては全人類がちょっとだけと思うくらいだ。

1万なんて塵よ。【雷霆ケラウノス】』


呟いたゼウスの右手に雷が迸り、


『【アダマスの鎌】』


禍々しいけど何処か神々しい黒い鎌を左手に持つ。あれって必殺技のやつだ…!!


「え、えぇー!?

フルセットは良くない!!」


『何を言う?出血大サービスだぞ。

ティタノマキア以来使う事を避けていた物を今、目の前に出しているのだ。』


「僕が欲しいのはそんな物騒な物よりも神様の恩恵だよぉ〜?」


震える声で話しながら縛られている足と動かせる尻を使ってジリジリと後ろに下がるアビスをゆっくりと追い詰めるゼウス。


「あ。」


アビスは壁に追い詰められた。


『チェックメイトだ。

死なない程度に甚振ってやろう。』


僕、ヨシュア、レンからはゼウスの後ろ姿しか見えない。


「僕殺しても何もないよ?それでいいの?」


『貴様のような人間の命には興味が無い。

故に私が好きにお前を甚振り、この教育機関を運営している者に明け渡すさ。

…その前に、質問に答えろ。』


「えぇ?全知全能なら全部分かるでしょ?」


『貴様は魔獣を殺し、血や臓物を採取しそれをホムンクルスを創る材料、堕天アンヘルを作る材料とした。』


「うん。」


『しかし…それだけではない。

貴様、まだ何か企んでいるな。

答えよ、己の口で。』


バチンッと右手の雷が弾けてアビスを脅す。


「………良いよォ答えてあげる。

…僕はね、悪役なの。」


そりゃね。


「悪役ってさ、この世界がどーでも良いと思ってる人、人々を守るための結果論で敵に回る人…いっぱい居るよね。

極端な話、その2つなら僕は前者。」


『…。』


「僕はどんな手を使ってでも召喚士を殺す。

悪魔を呼んだり怪物創ったりね。

それが与えられた僕の役割。ピカレスクは

始まったばかりだよ。あっははァ…♪」


与えられた役割…?その言い方は…


『…貴様、組織でも組んでいるのか。』


ゼウスが問うとアビスは口をへの字に歪ませた。


「…幻滅したァ。

僕、ゼウス様に幻滅したよォ。召喚獣だからこそ縛られている貴方はつまんない。

何でこんな事話したと思ってるの?」


アビスから笑みが消えた途端、彼を拘束していたゼウスの輪っかがバリバリとひび割れ、砕けてしまった。


『!!』


ゼウスの拘束が!!


首や手首を回しゆっくりと立ち上がる

アビス。


「最高神様が気付かなかったのぉ?

っあ〜〜…痛かった。恨むんならよわぁい召喚士マスターを恨むことだね。

ただでさえ貴方は縛りプレイなんだからさ。本当の貴方だったら困るなんてこと無かったでしょうに。

僕の怯えた振りは上手だったかなァ。」


ジャンヌを見て黒と金の魔導書の表紙を2回

ノックし、彼女は本の中に戻った。


「じゃ、僕もう行くね。ぐっばぁい!」


『逃がすかっ!』


アビスを捕らえようと手を伸ばしたゼウスに向かって


「【スキルロック】」


と呟いた。


『っ!?』


何故か右手を驚いた顔で見つめるゼウス。

そんなゼウスを満面の笑みで見るアビス。


「あはァ!効いたぁ♪」


「ゼウス!!どうしたの!?」


『……この、私が…っ!?』


「エクス=アーシェ君、

ヨシュア=アイスレイン君、

レン=フォーダン君。

またいつか会おうね。」


「「待て!!」」


動かないゼウスに代わって僕とレンが駆け出す。


「【明けの明星ポースポロス】!」


「【天帝神雷てんていじんらい天誅てんちゅう】!」


放った魔法は霧のように消えるアビスをすり抜け壁にぶつかり消失した。


「くそ!逃げられた!!」


「…エクス君、今はゼウスだよ。」


レンに言われ立ち尽くすゼウスの元へ。


「ゼウス?どうしたの!?」


『…』


「…何かショックすぎて魂抜けたみたいになってる。エクス君、魔導書見たら?」


「あ、そっか。」


魔導書を開きゼウスのページを見る。

すると…


【スキルオールロック】と書かれており、

ゼウスが使える技全てに鍵が掛かった絵が表示されて効果も読めなくなっていた。


…嘘、ゼウスが…?


「……ゼウスが相当落ち込むワケだね。

ルシファーのスキルは何も変わりないところを見るにゼウスピンポイント、かつ1回だけ使える物だったのかな。」


『……わ、私が…?この私が…?』


「ぜ、ゼウス…大丈」


ドサッ


ん?何か倒れ込む音が…

振り向くとヨシュアが倒れていた。


「ヨシュア!」


「…とりあえず此処から出ない?

ヨシュア君、危ないかもだし。」


「…そうだね。ゼウス、行こう?」


『…』


「…ダメだね。

一旦本に戻した方が良いと思うよ。」


「…そだね。」


僕は魔導書の表紙を2回ノックし、

ゼウスを戻した。


「お疲れ様、ゼウス。」


「ヨシュア君は俺が背負うよ。

あと…ルシファー、来て。」


レンに応え天使が舞い降りる。


「何かあったらよろしく。」


『承認。』


レンはヨシュアを背負い、僕に頷いて階段へ向かう。


レン、アビスの事について何も触れてない…。何で?もしかしてこの世界線では…


レンが仲間…?


いや、確信がない。他人の振りしてるだけで

アビスの仲間かもしれないし。

でもホムンクルスを消していたって言ってたし…でも本当かは分かんないし…


「エクスくーん?先に行くよー?」


「あ、待ってよレンくーん!!」


ヨシュアを持ってかないで!!


 …


「ぜぇ…ぜぇ…っ」


「エクス君体力無いね。」


「う、うるさ…っ…ぉぇっ」


汗やば…っ!階段多い…!


「どぁあ!!?」


この間抜けな声はヨガミ先生だ!


「ヨガミ先生!」


「エクス!と…天使クラス代表の…」


「レン=フォーダンです。

こんにちは、ヨガミ=デイブレイク先生。」


「あーいこんにちは、じゃねぇよ!

どこ行ってたんだ!探してたんだぞ!

(エクスとヨシュアを)」


「あ!!!先生!!話さなきゃならない事が沢山あるんですけどまずヨシュアが!!」


「お、落ち着けエクス…

ゼウスはどうした。」


「あ…それは…」


僕が口篭るとヨガミ先生の横から普通サイズのアポロンが微笑んだ。


『…ヨガミ、父上については触れない方が

良い。頑張ったんだね、キミ達。

ボクわかるよ。取り敢えずキミ達も避難するんだ。ルシファーも居るがボク達が護衛しよう。その間に話そうか。』



アポロンに頷いて僕達は歩きながらアビスのことを話した。


まずヨガミ先生は頭を抱えた。


「マジか…まず地下にそんなところがあるなんて知らなかった…。」


『それにあの化け物はホムンクルスねぇ…

成程、納得したよ。父上については…

何も言ってあげられないけどね。』


「召喚士を殺すって言ってました。

ね、エクス君。」


ヨシュアを背負い直すレンに視線を向けられ慌てて頷く。


「う、うん。悪魔や怪物を創ったり〜とも言ってて…消えちゃって…。

僕の与えられた役割って言ってたから…

アビスは何かの組織所属かも…」


ヨガミ先生は大きな溜息を吐く。


「はぁあ……

絶対定例会議が臨時で開かれるぅ…。」


「定例会議?」


レンと一緒に首を傾げるとヨガミ先生は嫌な顔しつつも説明してくれた。


「お偉いさんと会議する為の立食パーティーさ。ゼウリス魔法学校で起こった出来事、

気になるところを話し合う貴族のパーティーみたいなものだよ。パーティーの理由はリラックスして話し合える場を作るためとか。

ドレスコードの為に着飾って笑顔振りまかなきゃなんねぇんだよ。あーーやだやだ。」


『今回は流石にオーディーンさんにも会うのかなぁ…やだぁ。もしそうだったらボク呼ばないでねヨガミ。』


「ぜっったい呼ぶ。俺だって怖いわ!!」


『昔会ったけど常に父上が怖い時みたいな

感じだもんあの人!

クロノスおじいちゃんよりも怖いね!!』


「それはお前が…」


何やら言い合いが始まった。

アビスについて話さなきゃだけど…

しょうがないか。

するとレンは再びヨシュアを背負い直し


「ねぇ、エクス君。君の知ってる事、

教えてくれないかな。

俺も教えられることは教えるから。」


と言った。

…今までのこと伝えても良いか。

アビスも知っていることだろうから敵側でも問題無いし。


僕はこれまでの事をレンにも話すことにした。

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