第118話『エクス&ゼウスVS他生徒』

前回のあらすじ


ゼウスがプロメテウスをいやらしく倒した為、スピルカ先生が僕とゼウスVS他生徒という無茶振りをしてきました。

僕達は反撃禁止。ゼウスは全てのスキルにEXが付いているせいで攻撃を受けてしまったら即アウト。僕は反撃とか無いけれど当たったらダメらしい。

20分皆の猛攻から逃げ切れば無茶振りの対価は勝った方の成績を上げてくれるそうな。


負けたくない!


『ちょっと待てマスター!いやらしいって何だ!!おいマスター!!?』



ヨシュアは手を挙げ皆の指揮を取る。


「早速話した通りに!

まず円になって一斉射撃!!」


射撃という事は全員遠距離攻撃ってことか!?


「ゼウス、包囲されるよ!」


『そうだな。なら包囲される前に逃げ…

いや、動けば良いな。』


逃げると言いたくないであろうゼウスは

僕の手を掬いあげ、宙へ浮かぶ。

その速度は尋常ではなく、超高速。

箒の時とは違い腕がもげそう。


「うわぁああぁっ!!」


「やっぱ飛ぶね!攻撃班!よく狙って!」


僕達を捕らえんとする魔法は矢の形だったり銃弾だったり水だったりと様々。中には虹色のクリスタルだったり黒い炎が混じっている。


『チッ…流石ゼウス様だ。

このロキもびっくりってな。』


「ロキ!あたしも頑張るから頑張れー!」


『まぁ!流石ですゼウス様!』


「こらイーリス、関心している場合?」


『も、申し訳御座いません!』


イデアちゃんにスカーレット君…ヨシュアは攻撃班とか言ってたな。

てことは他にも班が居るんだろうな…。


『っははは!チョロいチョロい!

こーんな生半可な攻撃なぞ当たるものか!』


高笑いするゼウスに悔しそうな表情を向ける召喚獣達。召喚士はだろうなという顔をしている。


「メルト、どう?」


「うん、多分大丈夫だわ。ね、アテナ。」


『はい。』


ん?ヨシュアとメルトちゃんが何か話してる。メルトちゃん、アテナと顔を見合わせているな…まさか…


「ゼウス、多分アテナが来るよ。」


『そうか。ま、私の娘だ。こちらが手が出せぬ故一筋縄でいけると良いがなぁ。』


うわぁ絶対的な自信だ…。


『一筋縄なんて心外ですね。』


「!」


いつの間にか目の前に盾と槍を構えたアテナが…!


『お主こそこの私と正面とはな!』


『…お覚悟っ!!』


「えっ」


アテナの槍先はゼウスの顔面…ではなく、

僕に向かっている。


「助けてゼウスーーっ!!」


『はははっ!予想してない訳無かろう!

マスターを狙ってくると思ったわ!』


ゼウスは高笑いした後、飛ぶのをやめたのか急降下する。槍の矛先は僕の頭上を掠めた。


「うぎゃぁぁぁぁああああっっ!!」


『速い…流石ですね!逃がしません!』


『はーっはっはっはっ!!楽しいなぁ楽しいなぁ!だぁれも私とマスターに攻撃を当てておらぬではないか!!』


後ろから迫り来るアテナの猛攻、飛んでくる魔法を避けるべく急に上がったり下がったりして僕の腕は千切れそうだ。

もう早く終われーっ!!

ん…?下の方で何か光った?


「ゼウ」


『!』


僕が呼びかける前にゼウスが急停止して顎を上げた。その真横スレスレを光の弧が通る。


「な、何!?」


目を凝らすと弓を構えたヨガミ先生とアポロンが不敵な笑みを浮かべていた。


「ま、まさか……」


『アポロンとそのマスターまで参加するとは…』


「参加しないとは言ってねぇよ!

おらヨシュア!

お前の指示に従ってやんよ!」


「はい!では話した通りに!」


「あいよ!やるぞアポロン!」


『あいあいさー!【太陽の光矢ひかりや】!』


後ろから追ってくる魔法に加えて太陽の光を受けているアポロンとヨガミ先生の矢が

混じって格段に避けにくくなった!


『マスター!魔法を魔法で相殺してくれ!

マスターは魔法も攻撃も禁止されておらんからな!』


「あ、そっか了解!いきます!

【サンダーボルト】!」


杖から雷の玉を何発も出して相殺していく。僕だって魔法でならゼウスを助けられるんだ!


魔法を連発させていると目の前に星に乗った紺色の小熊が来た。小熊は薄紫色で星が

散っている板をこちらに向けた。

板に残り15分と書いてある。

これもしかしてアストライオスの…てことはアストライオスは攻撃してこない??

ならスピルカ先生は無干渉?勝機はあるぞ!


「エクスー!聞こえるかー?」


小熊の板からスピルカ先生の顔が!

文句言ってやろ!


「スピルカ先生!!ヨガミ先生まで参加とか聞いてないですよ!」


「言ってないもん。楽しくて良いだろう?」


「怖いですよ!不利すぎです!!」


「じゃあその状況を楽しんでくれ。

で、言い忘れてたけどエクスも反撃禁止な!」


「へ?」


「魔法出しても良いけどー反撃…

つまり相手を傷付けたら負けー。」


「な…」

『なな…』


何だってぇええぇっ!!?

う、嘘でしょ??


「俺は干渉しないから頑張れ!」


スピルカ先生は手を振って板から消えてしまった。小熊もぺこりと頭を下げてぽふんっと消えた。


天帝神雷出さなくて良かったぁ…。

でも困ったな…

相殺の為だけにしか使えないのか。


『…妙だな。』


ぽつりと呟いたゼウスの声が聞こえ聞き返す。


「どうしたの?」


『何故アテナ以外全員遠距離なのだ?』


「それは…

直で殴るよりも当てやすいから…とか?」


『実際当たっておらんのに続けるか?

アルテミスやアフロディーテが動かないのも気になるのだ。』


た、確かに…


『ふむ。周りを見ようにも美しい髪の毛が

邪魔だな。』


と自惚れゼウスは長く艶やかな髪を肩くらいまで縮めた。え、マジック?


『短髪の私も美しいだろう?マスター。』


「う、うん…カッコイイけど何か変わるの?」


僕の質問にニヤリと口角を上げたゼウスは


『もう少し速くなる!』


と言って本当に速度を上げる。


「うわわっ」


「うーん…あの2人まだ速くなるのか…

凄いな。ローランド、シャル、どう?」


「僕はあと少しだ!」


「オレはまだ大丈夫です!」


「おっけ。

メルト、イデアはそのままお願い。」


「「了解!ゼウスを追い詰めるよ!」」


メルトちゃんとイデアちゃんが召喚獣に指示を出したな。これは…


『やっほーゼウス様。

今度は真正面だぜー?』


目の前にロキと…


『やっと足を止めて下さいましたね、

お父様。』


後ろにアテナ。これは挟まれたな。


『マスター、失礼するぞ。』


「ん?」


ゼウスは僕を胸元に寄せ、まるで社交ダンスをするかのような体勢になった。


はっっっず!!

赤面する僕を無視し、ゼウスは


『来い、童共。』


と挑発する。

アテナは盾を消して両手で槍を構え、ロキは武器を持たず、自らの手足に黒い炎を纏わせた。じ、直殴りだな…。そんなロキは下に居るイデアちゃんに手を振る。


『マイマスター!支援頼むぜー!』


「任せてーー!」


ゼウスは僕の手をぎゅっと握り


『マスター、共に踊ろうぞ!』


とダンスのようにクルクル回り始めた。

驚くことに、ロキやアテナ、他の召喚獣や召喚士の攻撃が全く当たっていない。どうなってるの?


『こんにゃろ…っ!』


ロキの拳と蹴りは空を切り、


『せやっ!!』


アテナの槍は地を抉る。威力高!怖すぎるって!


『2人がかりでそんなものか?』


『『ぐぬぬ…っ!』』


クルクルしすぎで気持ち悪くなってきた…。


「ロキー!

皆でやっても魔法当たらないよー!」


イデアちゃんだ。ロキはゼウスを視界に捉えつつ、ニヤリと笑った。


『いいや、これでいい。な?アテナちゃん。』


『えぇ、私達の役目は果たしました。』


『…何?』


「今だアフロディーテ!」


『♬︎』


ローランド君の声が聞こえたと思った次の瞬間沢山の茨が地中から生え、僕達を覆うドームとなった。


『おぉー!』


ゼウスの目がキラキラしてる。こんな時に!


「関心してる場合じゃないって!

閉じ込められたよ!?」


『私は此処に誘い込まれていたのだなー

いやぁ〜やられ』


言葉の途中でゼウスは何かを避けるように

身を翻す。


『光矢か。』


茨には隙間が沢山あって日光が届く…もしかして!


予想は正しく、茨が入口を作りアポロンが

入ってきた。


『や!父上、父上のマスター!

よく奮闘したね!』


手には弓。これは結構やばいか…?


『ボクはメインじゃないよ、援護だからね。メインなのは…』


アポロンの作戦なのか話している最中に真上から虹の光が襲ってきた。


『くっ!』

「うわっ!」


虹って…もうこれはイーリス確定だ。


「エクスちゃん、さっきアンタがくれた

クリスタルを試させてね?」


イーリスと手を繋いで上から来たのはスカーレット君。そうか、僕は敵に塩を送った状態か。


「イーリス!武装!」


『はっ!』


何とイーリスは虹の羽衣を身に纏い、ドレスを変え、手と足に金色の金属を付けた。

そして杖が虹色の宝石を付け、どう見ても強そうなものに変わっている。


『イーリスは虹の女神。

アポロンは太陽神…だからか。』


ゼウスが呟いて1人で納得している。


「な、何?何か気付いたの?」


『2人は太陽があれば強い。強くするために密閉ではなく日光を届ける為の隙間を作ったわけだ。』


それは…


「僕アポロンの矢が飛んできた時に気付いてたよ。」


『なぬっ!?』


そんな驚くことかな。けれどスカーレット君とアポロンは笑っている。


「っふふ。確かにそれもあるわ。

でもね?ヨシュアちゃん、結構意地悪よ。」


「んぇ??」


「言わないけどね。

イーリス!アポロン!やるわよ!」


『はい!』『りょうかーい!』


3対1、このドームの中逃げ切るには僕の魔法相殺が必要不可欠だ…やらなきゃやられる!




残り時間8分!

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