第93話『アイツについて』

前回のあらすじ


過去ヨシュアの言葉によりアビスの仲間という事は無いと分かってもらえました。しかしアビスの特別である事に変わりはないと言うアムルさん、シュヴァルツさんの発言により先生達がヨシュアが暴れ、人が死んでしまったらヴァルハラの言うことを何でも聞く責任を負うということになりました。

でも僕達も居るんだからそんな事させない。


それとは別でシュヴァルツさん、急に子供みたいにグズってたけど…どうしたんだろ。


 …


「エクス君が先に言ってよ。

俺、アイツと話してないし。」


レンが隣で僕を覗き込む。

確かにレンはいつの間にかホムンクルスの

元へ行っていたんだもんな。


「えぇ…?分かった。

えっと…ゼウスがアビスの反応を捉えたのは学校の地下です。」


この事は僕が話したヨガミ先生しか知らないらしく、レン以外の皆は驚いていた。


「…」


いや、驚かずユリウスさんが口に手を当てた。何か知っている…?


「エクス君、どうやって行ったんだい?」


「僕はゼウスの瞬間移動です…。けれど…」


レンは僕の視線に気付き、

困ったように笑った。


「えー…と、錬金術部屋の左隣に位置する曲がり角ありますよね。

そこを…破…いや、壊し…そこが壊れてて」


ヨシュアはレンが壁壊したって言ってた気がするんだけど。おい、隠蔽する気か。


「ヨシュア君、さっきレン君が壁に穴を空けてって言ってなかった?」


リンネさんの容赦ないツッコミに肩を震わし、顔に汗を垂らすレン。

コイツ、常に薄ら笑い浮かべて平然としているイメージだったけどこんな顔も出来るんだ。ユリウスさんの手元には黒い羽根が。

ニヤついてそれを小刻みに揺らしてレンを見る。


「……ブラックリストに載りたくなくて

嘘吐きました。

はい、壁に穴を空けたのは俺です…。」


「君、ブラックリストに怯えるタイプだったのですかぁ!意外ですねぇ!」


「う…」


ユリウスさんがケラケラ笑っている。

楽しそうで何よりだけど話が逸れる!


「えー…っと…レンとヨシュアは僕がアビスと少し話してから来たのでそれまでのお話をします。アビスは召喚獣ジャンヌ=ダルクを

連れ、僕達と対峙。ジャンヌはゼウスの攻撃魔法をかき消したのでスキルに魔法無効化があると思います。でもアビスに戦う意思はあまり見られず、ゼウスが拘束に成功しました。

ですが僕もアビスの禁術的な何かによって

身動きが取れず、皆が戦っている場面を映像で見せられていました。それで…」


『…夜叉の召喚士。』


急にゼウスが口を挟んできた。

シオン先生だよね、どうしたんだろ。


「何でしょう。」


『貴様のもう1人の召喚獣についてだ。』


「玉藻前ですか。はい、どうぞ。」


『そいつランクSSSの中でも上位だそうだな。それは誠か?』


あれ?その言葉…アビスが言ってたような。シオン先生はゼウスにゆっくりと頷いた。


「上位、かどうかは分かりませんが

ランクSSSですよ。」


「ちゃんと上位ですよ。前召喚士の満月翡翠みつきひすいとのデータはどれも平均より上ですから。ヴァルハラも…ニフラムさんも目をつけていましたよ。」


そう言うユリウスさんは別の紙をラジエルから受け取って眺めていた。

満月翡翠さんって誰だろ。


『となるとアビスの言うことは本当だったという訳だ。大したものだ。

アイツは映像越しで見ただけでランクも強さも分かるようだな。』


「あ。」


そうか、そういう事になる。


『召喚獣に頼らず分析出来る能力でもあるようだ。もしくはジャンヌとの共有スキルか。(それとも…)』


「へぇ…。情報ありがとうございます。

で、話の続きをどうぞ、エクス君。」


ユリウスさんの笑顔嫌だな。


「はい…で、アビスはそこで人造人間…

ホムンクルスを作っていたようです。」


「…もしかして前にスピルカが持ってきたやつ?白くてデカくて顔がないアレ!」


アーヴァンが言っているのはレンとヨシュアと居た時、初めて会ったホムンクルスだな。ゼウスが拘束してスピルカ先生が持ってったやつ。


「そう、それです。」


「(じとっ)」


こんな会議でタメ口はダメだ…。

不機嫌な顔されてるけど仕方ない…。


「それが今回の事件にも現れていて…。

アビスはそこで約1万ものホムンクルスをつくっていたそうです。」


「1万…!?」


レン以外全員が目を見開く。

初めて伝えたからね…これは。


「君達入学して数日だよね。それで1万…」


少し考えるニフラムさんに向かって手を挙げたレンは彼の頷きを見てから話し始めた。


「俺も着いた時にその辺彷徨うろついてて、沢山の筒状の物が並べられているのを発見しました。中は水色の液体で満たされていて、ホムンクルスになる物体が中心に浮いていました。エクス=アーシェがアビスの気を引いている内に中身だけを攻撃し、消滅させていました。」


「まぁ!そんな魔法を使えるのですか!

凄いですのね!」


「オスクルム家の方にお褒めいただき光栄です。でもその後ゼウスが指を1回鳴らして雷落として全部潰したんですけどね。」


その一言にゼウスはドヤる。


『ふっふーん!』


「その後、自力でゼウスの拘束を解いた

アビスは逃亡。

…僕達はアイツを逃がしてしまいました。」


「拘束も出来たゼウスが逃がしたのかい?」


「それが…アビス、ゼウスのスキルを全て

ロックしたのです。」


 「!!」


聞いてきたリンネさんに説明したら皆が驚いた。先生にも言ってないことで驚かせてばかりだ…。これはヨガミ先生にも伝えていない。アポロンが察してくれていたから。


『うぅむ…迂闊だった。

まさか私が遅れをとるとは。』


「一体どのような感じだったのでしょう。

もしかしてそれも禁術的な何かというやつですか?」


『粗方そうだろう。私は魔法を無効化させて反射させることが可能だしな。物理は軽減出来る。が、物理は絶対に有り得ない。

よってそれ以外の何かとなろう。』


「ゼウスがそうなるとはねぇ…

今は平気なのかい?」


『あぁ、父上の召喚士よ。簡単に解けた。が、私が呆気にとられたせいでアビスを逃がした。それは反省している。

すまなかった。』


「いいよ。

その分これから扱き使うからね。」


『上等だ。』


話していると色々思い出してくる。

全て伝えないと。


「話が前後してすみません。アビスが逃げる前に、“僕はどんな手を使ってでも召喚士を殺す。悪魔を呼んだり怪物創ったりね。それが与えられた僕の役割。”そう言ってました。

ホムンクルスは1から作られたモノと魔獣の血が入った薬を投与され人間からホムンクルスに変えられたモノの2種類を確認しております。」


「うーん。ちょっとシュヴァルツと話したいんだけどさ、アスクレピオス〜。」


なんとアスクレピオスは席の横に立っておらず、彼が席に座ってニコニコなシュヴァルツさんをその膝の上に座らせていた。

アスクレピオスは小さく震えながら話を

振ったニフラムさんを睨み


『これを見て貴様は話せというのか…!』


と怒った。

シュヴァルツさん本当にどうしたんだ?


「や、ごめん。本当にごめん。怖いからそんな蛇みたいに睨まないで…。ホムンクルスの解析してくれてるのシュヴァルツだから聞きたかったんだ。でも薬が効くまで時間が掛かるみたいだね。後で聞くよ…。」


「ではシュヴァルツさんの症状が治まるまではエクス君が言うアビスの言葉…

“悪魔、怪物、僕の役割”

について話しましょう。」


…失言だったか…会議が延びた…。


「…」


あれ、思えばイデアちゃんずっと静かだな。話す機会が無いからなのかな。ロキは平然を装ってても魂飛んでるし。

緊張してるだけなのかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る