第42話『深紅兄妹』

前回のあらすじ


ミカウさんに友達の定義を聞かれました。

怖かったはずなのに口にしたらそうでもなくなりました。結果的にミカウさんのお気に入りになれたようで一安心…しようとしたら

まさかのアビスが作った薬が禁術に触れるか触れないかくらいのやばいモノだったそうです。召喚獣が闇堕ちして召喚士が廃人化するとか!

僕はえげつないものを嗅がされたんだな…。

ひぃー…ってヨシュア達、何してるんだろ。


 …


時間は遡り、エクス達と別行動をとることになったばかりのヨシュア達…。



「エクス達と別れたはいいものの何処かに

行くーとか探すーとか目的が無いと散歩に

なっちゃうよね。どうする?」


ローランドとイデアの数歩前を歩き振り向くとイデアが手を挙げた。


「お散歩じゃダメなの?」


「ダメじゃないけど…

明確な目的があった方が良くない?」


「そー?」


「ではシンプルにモーブを探すのはどうかね?」


まぁ…それが良いか。

俺はローランドに頷いた。


「そうだね、そうしよう。

ぐるっと回ってみようか。」


電気が無くて月明かりだけが辺りを照らして少し不気味でワクワクしてる。


「夜っていいね!あたし、明るい方が好きだけど夜も好き!2人は?」


「僕はどちらも同じくらい好きさ。日光でも月光でも光の下の僕は美しいからねっ!」


イデアの質問に相変わらずの調子で答える

ローランド。自分に自信持てるってすごいわ。


「ヨシュア君は?」


「俺?俺は…夜が好きかな。」


「何で何で?」


後ろから近づきながら聞いてくるイデアを

ちらっと見るとローランドと共に子供のような目を向けられていた。

…え?そんなに気になること?


「だって…夜なら日に焼けないじゃん。

俺日焼けすると真っ赤になっちゃって困るんだ。」


と本当の事を言った。…もう1つの。


「確かに!ヨシュア君の肌は真っ白しろすけだもんね!」


 まっしろしろすけ?


「ふむ…確かに僕もそうだ。だが美しくある為には日光浴も欠かせないのさっ!!」


「…そう。」


ローランドが薔薇を差し出してきて何となく受け取ってしまった。どこから出したのさ。


「じゃあ実技の時大変だね!」


「暑くなるから足だけ捲って腕は捲らないようにしてるよ。というかイデアも色白だよね。大丈夫なの?」


「あたしはよく外で遊んでて慣れたみたい!」


「そう…。」


 慣れるんだ…。


「む、ヨシュア君。

あそこに誰か居るみたいだ。」


ローランドが指をさすのではなく、手を揃えて示した方を見ると、月明かりに照らされながら大理石で造られたモダンデザインの手摺に頬杖をつき庭園を眺める1人の赤髪の生徒を発見した。


生徒と理解したのはこの時間なのにまだ制服を着ていたから。


「本当だね。モーブかアビスを見てないか

聞いてみようか。あ、2人は俺が良いって言うまで喋らないでね。」


と2人に言ってからその人に近づく。

その人…俺より少し背が高い。男子生徒か。

制服はジャケットをちゃんと羽織って紋章

付けてればOKという超ゆるゆるの校則(入学前案内の紙に載っていたのを読んだ)だからこそズボンを履いているだけじゃ男女が分からないこともある。声を聞こう。


「こんばんは。キミに聞きたいことがあるんだけど今良いかな。」


笑顔で聞くと彼?は目線だけ向けてきた。


「アタシに?」


アタシ…?しかし声は男性だ。うん、男声。少し固まってると彼は頬杖をやめて俺と向き合う。あ、胸の紋章は神クラスだ。

同じクラス…。………居たっけこんな人。


「男2人で女の子1人連れて何企んでるのかしら。」


あ、間違いない。

彼はおネエさんだ。イケメンの。

左耳に小さなチェーンに繋がった雫型のピアスがキラリと光る。


「別に企んでいないさ。

ただ一緒に人探ししていてね。」


「へぇ?3人で人探しねぇ。

人探しする割には焦りとか無いのね。」


「そこまで急ぎではないんだ。

居たら良いなーって思ってるくらいさ。」


「ふーん…」


彼は俺らをじぃーっと見ている。

詮索する目だなぁ…特に疚しいことも無いからどうぞご自由に見てください。


暫くすると彼は小さく息を吐き


「で?誰を探してるワケ?

悪いけど力になれる可能性は低いわよ。」


と腕を組んだ。

大丈夫、端から期待してないから。


「モーブという同じクラスの男子生徒を探しているんだ。見てないかな。見た目が超地味な。」


彼は俺から目を逸らし

「んー…」と唸ったあと


「モーブ?居たかしらそんな奴。」


と首を傾げた。

あの時に俺も思った。


「悪いけど覚えがないわ。此処を通ったのは

アルファクラス代表のリリアン=ナイトイヴと天使クラス代表のレン=フォーダン。

それ以外の芋野郎なんて覚えが無いわ。」


 芋…。


「ま、アンタら3人は良い顔してるんじゃない?磨けば光るわ。特にそこのお嬢さん?」


彼はイデアを指さした。


「え?あたし?」


「えぇ。ちゃんと髪の毛乾かして寝てる?

適当にしてるんじゃない?」


「んー…

いつも眠くなって乾かしてなーい。」


「でしょうね。髪が少し傷んでるわ。

ちょっと来なさい。アタシがアンタを磨いてあげるわ。ちょっとこの子借りるわよ。」


「およ?」


冗談だと思ったらイデアの手を取り連行して行く。


「「え」」


「あ、名乗るの忘れてたわ。

 アタシ、スカーレット=アルカンシエル。

 アンタらは?」


「ヨシュア…アイスレイン…」


「ろ、ローランド…ローゼン…」


「イデア=ルークスー!」


「ふぅん…アタシと同じお貴族様ね。

覚えておいてあげる。

じゃ、イデアちゃん借りるわね。」


つい流れで名乗ってしまった。

スカーレットはそのままイデアの手を握って歩いていく。


「い、イデア!」

「イデア君!」


俺とローランドが彼女の名を呼ぶと


「だ、だいじょぶ!い、行ってくるね!」


親指を立ててグッドサインを見せ、闇に消えた。


「…行ってしまったね。」


「…ね。色々喋んないと良いけど…。

まぁイデアも嫌そうじゃ無いし…いっか。」


気を取り直そうとしたら後ろから


「あのっ!」


と声をかけられ振り向くと、スカーレットに似た髪色の女性が息を切らしていた。


「大丈夫かい?」


ローランドが背中を摩って上げると女の子は


「す、すみませぇん…」


と謝って息を整えようとしてる。

何だ?この子。


「どうしたの?」


「あ、兄が…っすみませんでしたっ!」


息を整えた瞬間勢いよく頭を下げる彼女。

兄だって?


「君は…?」


「クリム=アルカンシエルと申しますっ!」


勢いよく上がった綺麗な顔。

その右耳にはスカーレットと同じピアスが

輝いていた。


「兄ってさっきのスカーレット…君?」


「はい…。兄は色々な方を綺麗にしたがる癖がありまして…。先程の女の子が連れていかれたのを目にして走って参りました…。

本当にすみません!」


「あ、いや…イデア…も嫌がってなかったから大丈夫だよ。わざわざありがとう。

俺はヨシュア。ヨシュア=アイスレイン。

神クラスだよ。」


「僕はローランド=ローゼン!

僕も神クラスさっ!」


また薔薇を差し出したローランド。

彼女は笑顔で受け取った。良い子だな。


「わぁ、ありがとうございます!

 クリムは天使クラスです!」


天使クラス…レンと一緒か。


「兄妹でクラスが離れてしまったんだね。」


「はい。でも毎夜話そうって約束してるんです!さっきも喋って別れた後だったんですよ。あ、すみません長々と!」


また勢いよく頭を下げるクリム。

若干エクスの面影が見えるような…。

そうだ、クリムにも聞いてみよう。

モーブは知らないと思うからアビスを聞こう。


「ねぇクリム、少し聞きたいんだけどさ。

片目が隠れてる青色の髪に黒メッシュで中指にごっつい指輪みたいなのつけた鮫のような牙の人見てない?」


「青色黒メッシュ…あ、見ましたよ!」


「「!!」」


これは有力情報だ…!

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