第83話『笑顔は仮面』

 前回のあらすじ


スカーレット君がクリムさんを思って吐いた嘘は逆に彼女の心を不安にさせてしまい部屋から出ていってしまった。

クリムさんは女の子達に任せて部屋で待機していたらヨシュアが目覚めました!!

やったね!

だがしかし!新たにヴァルハラ所属の

ゴスロリ服ツインドリル…げふんげふん。

巻き髪ツインテールのアムル=オスクルムさんが現れた!彼女の髪色は黒がベースで所々にピンクメッシュが入ってます。

ゼウスに目を付けたはずなのに僕が目を

つけられてしまったのです!誰か助けて!


 …


「エクス=アーシェくん、

わたくしの物になりなさい!」


「へ…?」


な、何だって…?


「聞こえなかったかしら?

わたくしの物になりなさい!」


「む、無理です…。」


「何ですって!?」


「ひぃっ!!ぼ、僕は僕の物です!

アムルさんの物にはなれません!」


ヨシュアにしがみつきながら首がもげるかと思うくらい横に激しく振る。


『それに、マスターは私のモノでもあり、

私はマスターのモノでもある。

取りたいなら…分かっているよな?』


ゼウスは挑発のような笑みを浮かべ首を傾ける。それを見たアムルさんはクスクスと

小さく笑った。


「えぇ、分かっていますわ。

殺せば良いのでしょう?」


殺す?今殺すって言った?


『…死の匂いの理由はそれか。』


「何のことかしら。わたくしには分かりませんわ。ただ1つ、愛の力は偉大なのですよ。」


腕を組むゼウスを貼り付けた笑みで見るアムルさん。


「ゼウス様?貴方が1番分かっているかもしれませんがね。ご心配ならずとも今日は手出ししませんわ。」


ふいっと顔を背けた。


「シュヴァルツくんとアスクレピオスが

口煩くて堪らなかったので。パーティーまでは我慢致しますわ!エクスくん以外の

皆さんのお名前をお聞かせ願えますか?」


「…」


皆、訝しげにアムルさんを見る。

最初に口を開いたのは


「…ヨシュア=アイスレイン。」


ヨシュアだった。


「あらま、貴方アイスレイン家でしたの。

わたくしの従者がお世話になりましたわ。」


「その節はどーも。」


ん?何かあったのかな。

ヨシュアもアムルさんも口角は上がっているのに目が笑っていない。


「ふふ、貴方は?」


アムルさんはスカーレット君を指さした。


「…スカーレット=アルカンシエル。」


「アルカンシエル…あぁ、あの時の大人びた坊ちゃんですのね!まぁ、こんなに大きくなられて…奥様の事は耳にしてます。

ご愁傷さまでした。」


「どーも。皮肉じゃない事を願うわ。」


「皮肉ではありません。ビジネスですわ。」


「…あ、そ。アタシ、家の事言われるの

大っ嫌いなの。やめていただけるかしら。」


「まぁ、それは失礼しましたわ。」


「…。」


アムルさんは興味無さそうに顔を背ける

スカーレット君をちらりと見た後、

また指を向ける。


「そしてそこの貴方は?」


次はローランド君。


「ローランド=ローゼンさ。」


「ローゼン家!

ならわたくしの事を覚えていますかしら?

よく奥様と一緒にお茶してましてよ!」


「うーん…会ったような…無かったような…ご期待に添えず申し訳ないがハッキリとは

覚えていない。」


「あらま。それは悲しいですわぁ。

ならばこれから、わたくしの事を覚えていただきますわね。」


「…お手柔らかに。」


ローランド君が珍しく大人しいな。


「うふふっ!じゃあそこの貴方は?」


次はレン。


「俺?俺はレン=フォーダンです。

まさか俺のような者がオスクルム家の方に

お会い出来るとは思いませんでしたよ。」


「俺…は直さないのですね。フォーダン家のご子息様?まぁ良いでしょう、わたくしは

慈悲の心を持ってますので。…フォーダン家。あまり聞き覚えがありませんわ。」


「そりゃあ貴族の中でも中の中。

1番目立たない部類ですから。」


「あら、そうなのね。なら無理はありませんわ。でも覚えましたわ、レン=フォーダン。」


「それは嬉しいなぁ。オスクルム家次期当主の方に覚えていただけるとは。」


アムルさんは次期当主なのか…

覚えておこう。


「っふふ…わたくしが継ぐとは限りませんわ。わたくし、魔物に殺されて死んでしまうかもしれないし。」


「へぇ〜それは是非見たいですねぇ。

貴女の死に様を。」


「…。」


アムルさんがだ、黙っちゃった。

ちょっとやばばな雰囲気なんだけどやばば

じゃない?アムルさんは顔を引き攣らせた。


「…貴方、恐れを知らないようですわね。

気に入りましたわ。」


「わー。それは嬉しいなぁ。」


「もう結構よ。

最後、貴方様のお名前は?」


「えっ」


シャル君が指さされた。

1番期待している顔だ。


「オレは…」


目を逸らして名前を言わないシャル君。

どうしたんだろう。

こんな変な人に引いているのかな。


「あら、言えないのかしら。

それとも相手がわたくしだから?」


「…し…シャーロット…です。」


「シャーロット?女性のお名前なのね。

可愛らし……貴方男性よね。

まさか貴方…アルカディア家の…!!?」


アムルさんが目を見開いた。

な、何だ?何かやばそうなのは分かる…。

シャル君は弱々しく返事をした。


「…はい…。」


「どーりで男性の割に綺麗だと思いましたわ…。まさか貴方が…。

っふふふ!パーティー楽しみですわ。

めいっぱいおめかししてきて下さいまし。

着飾った貴方を楽しみにしております。

ではその日まで御機嫌よう♪」


またワンピースの端を摘み頭を下げた

アムルさんは微笑んで退出した。

怖い人だなぁ。最後、目が笑ってなかった。


「シャル、平気かい?」


ローランド君から薔薇を受け取ったシャル君は


「…えぇ、平気です…。」


と言ったが顔がどう見ても落ち込んでいる。


「どうしたの、シャル君。

アムルさんと何かあったの?」


僕が聞くと彼は目を合わせてくれた。


「オスクルム家はアルカディア家と一緒の女性が当主の貴族です。故に…その…仲が良くなくて…オスクルム家と仲良くするなという事を教えこまれてまして気まずいと言いますか…。」


「そっか。アルカディア家もオスクルム家くらい上だもんねぇ。」


というレンに頷くシャル君。どの貴族が上なのかとか分かんないからこういう時に困るなぁ。取り敢えずアムルさんとシャル君の家が仲悪いのは分かった。


「クリム…。」


スカーレット君…そうだよな。クリムさん達…女の子達はヴァルハラの人に捕まってないと良いけど…。


 ……


「おやおや。病院で走ってはいけませんよ?

と言ってもここを病院と言うには難しいですかね。ホテルみたいですし。ですがホテルと言ったって走ってはいけませんよ。ねぇ?」


…メルト=ガーディア、今目の前にいかにもお仕事できます感が溢れるぴっしりとした黄緑色の髪、細い銀フレームの眼鏡、シワ1つ無いスーツを着た男の人がクリムちゃんの肩を掴んでいるのを発見しました。ど、どちらさま…?とにかく話をしないと!


「く、クリムちゃん!」


「め、メルトさぁん!」


「おや、君達はこの子のお知り合いですか?」


男の人の笑顔…何かレン君みたい。

笑顔を貼り付けただけのように見える。

怖い人ね。さっさと返して貰わないと。


「その子の友達です!」


と言っても男の人はクリムちゃんから

手を離そうとしない。何なのよこの人!


「ふむ、友達。この子…クリムさんでしたっけ。クリムさん、涙で顔を濡らしていらっしゃって気になって声を掛けたのですよ。前を見ずに走っていて危なかったですしね。」


「…友人がご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。

私達から強く言っておきますので…」


リリアンちゃんが謝りながらクリムちゃんに手を伸ばす。そこでやっとクリムちゃんが

男性から解放された。

スカーレット君が知ったら激おこね。


「君達はゼウリス魔法学校の生徒さんですよね?」


「はい。そうですが…」


私の代わりにリリアンちゃんが答えてくれる。私はイデアちゃんの手を握った。

男性はニコニコしながら話を続ける。


「ならばもしかして会議に参加なされる方達ですかね?他の方々と雰囲気違いますし。」


「…そうです。今回の事件解決に奮闘したからと参加命令が下されました。

貴方はヴァルハラの…?」


「えぇ。お初にお目にかかります。

国家最高機関ヴァルハラ所属、

ユリウス=リチェルカと申します。」


やっぱりヴァルハラ…!!

あの人の目は何か嫌だわ、探られてる感じ!

さっさと帰らないと!

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