第84話『楽しみな反面』
前回のあらすじ
アムルさんが去りました。
女の子達…大丈夫かな。
…
「クリムが助けを求めている気がする。」
スカーレット君の何かのレーダーが反応したようだ。
「スカーレット君、
此処は病院だし流石に大丈夫じゃない?」
「レン、アタシはアンタを信用してないの。」
「わー酷いなぁ。」
「大丈夫だと…思いたいですね。」
『…。』
……
「リチェルカさん、ですね。覚えました。
ではまた会議という名のパーティーで。」
リリアンちゃんナイス!これで帰れる!
「あぁ、お待ちを。貴女方のご友人に
彼の召喚士が居ますでしょうか?」
手に持っているのは…
確かゼウスが召喚した小さな…
「ヘルメス!!」
『きゅう…』
目を回して頭の上で星が回ってるわ!
「あ、やはりお知り合いでしたか。
彼の召喚士に言っておいてください。
聞きたいことがあるならこっそりとではなく私に言ってくれと。」
言葉の終わりにヘルメスを私に向かって
投げてきた。召喚獣投げるなんて最低!
しかも中指で眼鏡直すタイプ!
キザなのかしら!(偏見)
「大丈夫?ヘルメス。」
『うぅ〜ん…。』
良かった、息してる。
ヘルメスに何したのかしら。
でも聞こうとすると話始めちゃうわよね。
うぅーん…困ったわァ。
「あ!ここに居た!ユーリさん!
勝手に何処か行かないでくださいよ!
アムルちゃんも勝手に居なくなって困ってるんですから!」
中性的な声が右の廊下から…あらま、
紫に黒メッシュのイケメンさんだわ。
「あ、見つかってしまいましたか。アムルの好奇心がうつったみたいで、つい。」
ユリウスさんもよく見たら首筋の髪の毛に
黒のインナーカラーを入れてる…。
ヴァルハラって皆もしかしてメッシュか
インナーカラー入れてる人なのかしら。
「つい、じゃありません!
全く…僕の身にもなって下さい!
それに女の子達困ってるじゃありませんか!」
あ、この人は良い人ね。
「いやぁ悪いことしたなぁとは思ってますよ、うん。でも走ったら危ないですよって
指導もしたのです。」
「とか言って何か聞き出そうとしてるんでしょ!子供相手にやめて下さい大人気ない!
皆、ユーリさんがごめんね?
この人根が悪い人でさ。」
「普通逆じゃないです?
根はいい人じゃないです?」
「ユーリさんに限ってそれだけはマジでないです。」
「ちょっと傷付きました。」
「あの、貴方もヴァルハラの…」
リリアンちゃんに笑いかけた彼は
ぺこりと頭を下げた。
「初めまして!
リンネ=コウキョウと申します!」
あら、シオン先生と同じような響きね。
服も似てるわぁ。
「この子イケメンだけど女の子ですから
ドレスコードとか不安だったら
彼女に聞くと良いですよ。」
「え!?」
じょ、女性だったの!?
「わ、私ったら勘違いしてました!
ごめんなさい!リンネさん!」
私が頭を下げるとリンネさんは
「き、気にしないで!
寧ろ間違えて頂けて良かったから!」
と慌てて手を振った。良かった…?
「あ、アムルちゃん居ました!
ユーリさん行きますよ!では失礼します!」
「え、別に居なくないです?
あ、ホントだ居た。ではまた後日…
あいたたたっリンネさん力強っ」
あ、行っちゃった…。変な人とイケメンさんだったわね…。あ、そうだ。クリムちゃんとイデアちゃんは大丈夫かしら。
「クリムちゃん、イデアちゃん。大丈夫?」
「く、クリムは平気です!」
「…」
イデアちゃんが返事をしない。
彼女を見ると小さく震えていた。
「イデアちゃん??大丈夫??」
「…あの人…怖い…。」
「あの人?」
「さっきの…」
もしかしてあの眼鏡さんかしら。
「大丈夫よ。変な人だったけど…。」
「う、うん…。」
「クリム!!!」
ん?
「に、兄様!?」
走ってきたスカーレット君がクリムちゃんに抱きついた。ふふ、仲良いわね〜!
「どうしても心配で走ってきちゃったのよ!クリムが助けを求めている気がして!」
「だ、大丈夫ですよ!クリム元気です!」
「ぜぇ…ぜぇ…める、メルトちゃん…!
リリアンさぁん…!」
汗だくのエクス君がよろよろと走ってきた。
「エクス君!大丈夫?死にそうね!」
「す、スカーレット君が…速すぎて…ぉぇっ…はー…はー…急にペンの蓋を握り潰して“我慢ならないわ!”って部屋を飛び出すんだもん…!足の長さって…ほんとずるい…!」
確かにスカーレット君の足はとても長いわね…。身長も一番高いし。ちらりと彼を見るとクリムちゃんの肩を掴んで「誰に何されたのかしら。言ってみなさい、絞めるから。」と聞いていた。
「に、兄様!クリムよりもイデアさんを…」
「イデアちゃん?あら、どうしたの?
アタシがぎゅーってしてあげようか?」
「すーくぅん…!ぎゅーってしてぇ〜…」
「あら、良いわよ。よしよし。」
あらあらまぁまぁ…よっぽど怖かったのね…。
スカーレット君が来てくれて良かったわ。
「メルトちゃん、リリアンさん。
何があったの?ってヘルメス!?」
私が抱っこしていたヘルメスをエクス君に
渡した。
「ヘルメスとアルカンシエ…いえ、クリムさんがヴァルハラの殿方に捕まりまして。
話していたのです。」
あ、リリアンちゃんそんなオブラートに
包まないで話すと…
「何ですって…?
クリムがヴァルハラの男に?」
あちゃー…スカーレット君がとても怖い顔になっちゃったわ。
「スーくん苦しいよぉ〜…!」
「あらごめんなさいね。
クリム、本当かしら。」
「え、えぇと…」
「まぁリリアンちゃんが嘘を吐くとは思えない。本当なのね。名前は?」
クリムちゃんはスカーレット君から
目を逸らしながら
「…ユリウス=リチェルカ…と言う方に…。」
と声を小さめにして話した。
「ユリウス=リチェルカ…覚えたわ。」
「スカーレット君何する気?」
「エクスちゃん。時には聞かない方がいい事があるのよ。…でもそうね、強いて言えば
クリムに近づいたらどうなるか知らしめてやろうとかかしら。」
「…」
エクス君の顔がこれ以上聞いてはならないと語ったのを察して私も口を閉じた。
するとエクス君が話を変えようと笑顔を作る。
「あ、あのね!ヨシュアが起きたんだ!
今シュヴァルツさんが診てくれていてさ!」
「本当!?良かったぁ!」
「それに貴女達のドレスのデザインも終わったわ。部屋に戻ってファッションショーよ!」
ドレス!!楽しみだわ!!
…
部屋に戻った後、シュヴァルツさんは既に
居なくなっていて部屋を訪れたナースさんに私達の怪我の具合を確認してもらった。
それで朝ご飯を食べたあと、部屋から出ないように気をつけながらの自由時間だと先生からの伝言として言われたの。
だから会議に向けてのドレス試着会が始まるの!スカーレット君に言われて召喚獣を
小さなサイズで召喚する。来て、アテナ!
「という訳で、女の子達、皆ベッドの前に立って!アテナ、ロキ、アーサー。このデザインの服を作って頂戴。質感は書いてある通りよ。クリム、召喚獣は?」
「兄様!そ、それが魔導書は出るのですが…召喚獣が…ヨフィエルが出てきてくれません…!」
え!?そんな事が!?もしかして
「ゼウス、頼むよ。クリムさんを診て?」
『うむ。』
エクス君の指示でクリムちゃんに近づく
ゼウス。ちゃんと治ると良いけど…。
『おや…これは…どうやら召喚獣の回復に
時間が掛かっているようだ。
まだ呼べるまで回復しておらんようだぞ。』
「そ、そんな!」
「…(それってアタシのせいかしら。)」
一瞬何か考えたスカーレット君をちらりと見てからゼウスはニコッと笑った。
『なに、私にかかれば簡単よ。
治してやる。』
指をパチンと鳴らしたけど…
それで元気になったのかしら。
「よ、ヨフィエル!来れますか?【summon】!」
クリムちゃんに応えるように魔導書が光って赤い翼を生やした美人な天使が現れた。
「ヨフィエル!!」
良かったぁ…凄いわねゼウス。
何でも治せるんだ。本当に凄いわ。
「じゃあ気を取り直して皆、
マスターを綺麗に着飾らせるのよ!」
スカーレット君に頷いて召喚獣達が魔法をかけた。
『マスター!いきますよ!』
アテナが槍を振って光の粒子を私にかけた。
次の瞬間、私の服が暗めのワインレッドカラーのシックなワンピースに変わった。
わぁ…!!凄い!!鎖骨や袖部分が黒いシースルー素材で大人っぽい!靴も素敵!
「っふふふ…さっすがアタシ!
デザインも完璧ね!」
エクス君に見てもらおっと!
「見て!エクス君!大人っぽくなったわ!」
「アッ!!う、うん!!めっちゃかわっ可愛いヨ!!似合ってマスデスッッ!!」
「ありがとう!」
ホントに流石スカーレット君ね!
リリアンちゃんもイデアちゃんも
クリムちゃんもみーんな可愛いっ!
「皆ちゃんと可愛いわよ!あ、ロキ!イデアちゃんのリボンの素材が違うわ!
エナメル質じゃなくてシルク!」
『んぇ!?』
「アーサー!リリアンちゃんの腰のリボンもう少し大きく!網目は細かく!」
『あ、あぁ!』
変な人に会わなきゃいけないのはちょっと
怖いけどこの服を着れる機会があるのが
とっても嬉しい!
「ありがとう、アテナ!」
『いえ。イーリスのマスターのデザイン
あってこそです。お綺麗です、マスター。』
「アテナに言われたら自信持てるわー!」
『是非お持ち下さい!』
「よし、あとはヘアメイクね…!腕が鳴るわ!それに男ども!見蕩れるのも分かるけどアンタらも早く着替えなさい!センスが無ければ扱かなきゃならないんだから!
会議まで時間無いわよ!」
スカーレット君の指導でエクス君や皆も
お着替えするのねー!楽しみだわ!
…
「…ヨシュア=アイスレインが目覚めました。はい、全員精神状態安定してます。…はい…
日程を……明後日、ですね。
分かりました。…?…アスクレピオス?
…舌打ちばかりですよ。えぇ…貴方の召喚獣の手網、握っておいて下さいね…。
ぼく、争いごと嫌いなので…。ふぁあ…。
えぇ、教員に伝えておきまひゅ…。
寝てません…寝そうなだけで…
はい。分かりました。また後日。」
「明後日とは急だな。」
「…姉さん。」
「お前が身体を壊したらダメだぞ。
忙しいだろうがちゃんと寝ろよ。」
「…うん。ありがとう、ヒメリア姉さん。
…今回の会議、何枚皿が割れるかな…。」
「考えるな縁起でもない。
血が流れないと良いが。」
「…ね。あの子達に伝えてくれる…?」
「分かった。伝えておこう。」
「…うん…ありがとう。…アスクレピオスも苛立ってる。何にも無いと…良いけど…。」
「気分屋の集まりのヴァルハラが異例の会議で何も無いことは無いだろうな。」
「……………違いないね。」
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