第58話『忌み子』
※今回、ほんの少し残酷な描写が含まれます。(化け物の腕や頭が斬られる等。)
苦手な方はご注意下さいませ!
前回のあらすじ
アルファクラスの教室に入ったらヤマタノ
オロチという禍々しい龍が召喚士とアルファ
クラスの生徒の召喚獣や魔力を吸って強くなってました。そんな中、ゼウスはアビスが
居ると場所を移しました。
本当にアビスは居て、彼の召喚獣が
ジャンヌ=ダルクという事が判明。
…そして、アビスが見せた映像には血塗れで倒れているシオン先生が。
…
「シオン先生ぇ!!」
嘘だ…!!
「んっふふ…良い顔だねぇ♪」
「お前…自分のクラスメイトや教師になんて事するんだ!!」
「え?なんて事って…別にクラスメイト全員にこのカプセルあげてぇ、勝手に弾けるように仕組んだだけだよ?僕の居ない教室で弾けさせたからみぃんな薬吸っちゃったねぇ!
…ただ、クラス代表だけは堕とせなかったけどね。」
「天使クラスの1部にも渡したんだろ!!」
「えぇ?どうだったかなァ〜?
忘れちゃった♪知ったこっちゃねぇし。」
僕の怒りは頂点に達した。
「【天帝神雷…ッ」
「えー待ってよォ。
皆がやられる様を見よーよー。」
また指を鳴らした。次はシャル君とローランド君が力なく倒れていた。
…血が…。
「あははっ!流石に無理だったねぇ!!
君たちが戦わずに任せちゃうから出なくていい犠牲が出ちゃったねぇ!!」
響くアビスの高笑い。あぁ、ムカつく。凄くムカつく。人の命を何だと思ってるんだ。
「【天帝神雷…ッ…天誅ッ】!!」
先程のゼウスの様に雷龍を呼ぶ。
が、呆気なくジャンヌの旗に掻き消された。
「っ…!!」
「あれぇ?それって究極魔法〜?すごぉい!詠唱無しで唱えられるなんてぇ!!」
「く…っそ!!」
『マスター、焦るな。確実に潰すぞ。』
ゼウスは手に神杖を持っていた。
僕も杖をゼウスの神杖に変えた。
…
シオン=ツキバミ
カッコつけたは良いものの…思った以上に
しんどいわ…。生徒を傷付けぬよう召喚獣を狙おうとしても召喚獣を庇うために人間離れした動きの生徒に押される。
何や…ホンマに生徒達か?
そんな無理な動きをすると身体が壊れてまう…!こうなったら生徒を眠らせる為に一撃食らわせるしかあらへん…!
「【
魔刃抜刀・春眠は私の魔法を使った剣技。
刀に魔力を込めることで威力を上げる。
魔刃抜刀には種類があり、その中の春眠は
刀で攻撃した対象物を眠らせる力がある。
傷は浅く、首を狙わんように高速で。さっき生徒と召喚獣はざっと15人に減らした。
確実に痛み無くして眠らせる…!私は切り傷が痛む足に力を入れた。一気に斬る!
5…!11…!残り3人!
よし!全員眠らせ…
「ぅぐっ!?」
突如左腕に鈍痛が走った。
それに気付いた時、既に壁へ激突していた。
「がはっ…!」
その衝撃で壁が崩れ、私は倒れた。
な、何だ…!?怪物は…夜叉が…
抑えていたはず……。なのに…!
「や……!」
くそっ背中を強く打った衝撃で呼吸が上手く出来ん!声が出えへん!!
その前にまず、立ち上がらんと……っ…左手
折れたな…。回復魔法なんかやってる場合
ちゃう。刀を保つ魔力を残さんと刀が折れてまう…。杖代わりに刀に力を込めてよろよろと立ち上がる。頭が熱いと思えば視界が赤く染り、拭うと血だった。私は血量が普通の人よりも少ないのだから急がねば貧血、
最悪の場合失血死や。
なら力尽きる前に全員潰す!夜叉は何処や!辺りを見回すと白い化け物は1体が地に伏せ、6体が立っていた。…確実に増えとる。
どっから涌いて出て……アレは…
一体の化け物が何かを掴んだ腕を斜め上に
上げている。アイツが持ってるんは…
「夜叉ぁっ!!!」
頭を鷲掴まれ四肢をだらんとさせている私の召喚獣だ。
「その手を離さんかい!
【
これは私が1番威力の出せる技。
5体の猛攻を避け、夜叉を掴んだ右腕と、
大きな右脚を斬り落とす。バランスを崩したところで首を斬る。左手使えんでも斬れる脆さで良かったわ…。まず1体撃破…。
「はぁー…っ…はぁー…っ」
肩で息をしていると夜叉が起き上がった。
『ぁ、主殿…っ…
申し訳ございませぬ…っ!』
「反省は後からや…。
まだ、5体居る。…うぐっ…」
先程の攻撃をする為に身を捻ったりしただけで左腕が目眩を引き起こすくらい鈍く痛む。つい壁に凭れズルズルと座り込んでしまう。
『主殿!左腕が…!』
私の腕は着物の袖で見えないはず…
あ、殴られた衝撃で着物が破かれて紫に変色した腕が丸見えや…。
着物、気に入っとったんに…。
「安心しい、折れただけや。
私は暫く使いもんにならん。」
まずいな。夜叉だけやと負けるんが目に見えとる…使いもんにならんとか言うてる場合やないのに。弱音を吐いとる場合ちゃうのに…!あかん…血を流しすぎて意識が…。
『主殿っ!?』
まだ…まだ…僕は…生徒を…まも、ら……僕は…助ける…術を…見つけ……
……
「っ!!」
勢いよく目が開き、反射で起き上がる。
な、何だ…?床で寝ているのと変わらないくらいの意味の無い敷布団と薄汚れた掛け布団の間に居ることから察するにどうやら寝ていたようだ。
明かりが1つもない、石しかない洞窟のような周り。そして、光が射す外への道を封じる木で造られた牢。
…今居るのは座敷牢。
そうだ、ココは僕の家。僕は…
「まぁ!なんと言う不吉な子供なのでしょう!!髪色も瞳色も別れているなんて!!
まるで1つの身体に2つの魂が入ってるようね!!これは忌み子よ!!
妖の子に違いないわ!!」
「違います!!この子は紛れもない人間ですっ!!貴女とも私とも同じ人間!!お願い
取り上げないで!!私の大事な子なの!!」
「五月蝿い!!
「そんな…っ!!あんまりです!!」
「この気高き満月家で忌み子なんて…!!」
「お願いします!返して下さい!!
紫苑は忌み子なんかじゃない!!
私の子なの…!!」
「これは一定の年齢になったら神へ捧げる。恨むのなら忌み子を産んだ自分を恨むんだな。」
そう、忌み子。
僕は家に望まれなかった子供。
唯一味方だった母は僕を護ろうとこの騒動で殺された。父は僕が生まれる前に病死したと聞いている。
これにより本当に忌み子になった。
この時の僕の齢は八つ。そういう事なら早く殺せば良いのに、と思うには十分の歳だった。けれど殺さずに座敷牢で監禁する理由は“人殺しの一族になってはならない”という考えがあったから。
母親を事故死に見せかけて殺したくせに。
自分達の身が可愛いから神に捧げると綺麗事の様に言って聞かせ、要らないものを神に
押付け人を殺す。
そんな奴らを護る神って何なんだ。
僕は常に空腹で小汚いまま放置された。
たまに子供が沢山来て僕に罵倒と石を投げる。僕に心というものは存在しておらず、
苦しくも悲しくもなかった。
あっという間に月日は流れ、僕はいきなり
牢屋から出され、身体を入念に洗われ、
綺麗な着物を着せられ山を登らされた。
儀式のような道具を見ながら、落ちたら確実に死ぬであろう闇が広がる崖の縁に立たされた。
「その目とその髪は呪いだ。
神様に清めてもらえ。さぁ、目を閉じて
背から神の元へ行くが良い。」
あぁ、この行くは逝くなのだろう。
なんて救いようのない人間達なのだろう。
と思いながら僕は自ら踏み出し崖から落ちた。
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