第15話『スキルロック中の最高神』
前回のあらすじ
天使クラス代表レン=フォーダンがベヒモスとグリフォンを…?
その詳細は分からないけどゼウスが言うに、
あの場に居たのは確からしい。
何を隠しているんだ?
…
ヨガミ先生の後に続き早歩きすること1分。
とある扉の前に立ち止まった先生は杖を鍵に変えて錠を開け、僕らを招いた。
部屋の中は沢山の棚に沢山の書類がぎっしりと詰まっている倉庫のような場所。
入って右側の壁にある日差しを遮るカーテンに向かって数歩歩いたヨガミ先生が振り向いた。
「此処は倉庫だ。
俺らの授業で使う資料を置いている。」
まんま倉庫なんだ。
「ゼウス、ヨシュアの言っていたことは本当か?」
少し周囲を見回した後、ヨガミ先生に頷いたゼウス。
『うむ、本当だとも。
レン=フォーダンは間違いなく彼処に居た。』
その言葉でヨガミ先生は黒い本を取り出しペラペラと捲る。小さなアポロンが肩に乗っているが無視している。
「ブラックリストには何も載ってないぞ…?」
『大方バレないように分身でも作ったのだろう。何のために彼処に居たのかは不明だがな。』
「マジかよ…。
ったく…今回の生徒は問題児の集まりなのか!」
『ボクらだって同じこと言われたじゃん。』
肩のアポロンの顔面を鷲掴み、
「主にお前のせいでな!」
と今にも握り潰しそうな程に力を込めている。
『あだだだだっ!!ギブ!ギブ!!』
ペシペシとヨガミ先生の手を叩いたアポロンを中身の少ない開いているダンボールにぶん投げた。
「おらぁあっ!」
『ぶへぇっ!!』
ギリシャチックな服のシルク生地が小さな丸いお尻をくっきりと見せている。
あんなぬいぐるみなかったっけ…
あ、もちころ〇んだ。うん、あのお尻だ。
じたばた足を動かしているアポロンを横目に咳払いをするヨガミ先生。
「気を取り直して。レン=フォーダンは天使クラスだ。俺ら全員神クラス。
監視が置けねぇ。どうしたもんかなぁ…。」
「先生。」
ヨシュアが手を挙げた。
「何だ?」
「天使クラスの担任とかどうでしょう?」
天使クラスの担任…確かそれって…
「あー…アイツか。アイツはなぁ…」
ヨガミ先生は何か考えながら首を掻く。
「どうかしたのです?」
メルトちゃんは知らないのか。
天使クラスの先生って確か…メタトロンの召喚士だよな?女性の…。主人公を指南してくれる先生。名前は…何だっけ。
「アイツは…リーレイは…
めんどくせぇんだ。」
溜息が止まらないヨガミ先生から心底面倒くさそうなのが分かる。僕もよく分かる。
リーレイ=テレサリア、彼女は…担任なのに
アポロンに続く、頭ぱっぱらぱーなのだ。
「この事を話すとうっかり喋るかもしれねぇ。
アイツは無しだ。」
先生が首を振ったので別の考えを練る。
「うーん…普通に考えると天使クラスの副担任に頼むのが妥当だよね。」
ヨシュアの言う事は僕も思った。
天使クラスの副担任はミカエルの召喚士。
「まぁ…アイツになら頼んでもいいか…?
いや、でも…でも…アイツなら?いやいや…。
チッ…くっそ…!
ちょっとお前らそこに居て考えててくれ!」
アポロンを放ったままヨガミ先生は退出してしまった。どうしたんだろ?
ちょっとイラついてた。
『へい!そこのお嬢さん!
ボクを助けてー!』
アポロンがじたばたとメルトちゃんに助けを乞う。
「分かったわ!」
アポロンのぷりけつを摘み上げ手のひらに乗せたメルトちゃん。
『わぁい!ありがとうお嬢さん!名前は?』
「メルトよ!メルト=ガーディア!」
『メルトだね!ヨガミは普段使わない頭をフル活用して疲れちゃったみたい。多分一服中じゃなーい?煙臭いの嫌だからボクが香水振りかけてあげてるんだけど気付いた?』
一服?香水?全然気付かなかった。
男としてちょっと気になるし…ちょっと覗いちゃお。良い子は真似しないでね!
僕はこっそりと扉を開けて頭だけを出した。
左側…庭園には…居ない。
ん?タバコ臭い。右側から?
「うぉっ!?え、エクス!?」
あ、バレた。
驚く先生の手には煙が揺らめく煙草が1本。
「…みーちゃった。」
僕がそう言うと先生はいっそう大きい溜息を吐いた。口から怪獣みたいに煙が出てくる。
「お子様のくせに調子乗んな。
中で作戦考えてろ
「先生まだ24歳じゃないですか。
先生こそお身体悪くなりますよ。」
「もう24歳になったの。もう少ししたらそっち戻るから。ほら、しっしっ!」
手であっち行けとやられたので渋々戻った。
「どうだった?」
ヨシュアも男の子。
少し気になったんだろう。
「煙草吸ってた。」
と正直に言うと彼は眉を下げた。
「身体に悪いのになー。」
『まぁほぼ100パーセントボクが悪いから。』
いつの間にかメルトちゃんの頭に乗っているアポロンが反省もしていない顔で告げた。
この場の全員が思っていただろう。
だろうな、と。
『マスター、結局レン=フォーダンについて
どうするのだ?』
「あ。」
ゼウスに言われて忘れていた事を気付かされた。
「どうしましょうね〜…
ヨシュア君、何か思い浮かぶー?」
「全然。というか思ったんだけどさ。
誰が味方なのかも分からないと打つ手が無くない?」
「そうだよなー。
うーん…ゼウス、どうにかならないかな?」
僕が話を振るとうーんと考えたゼウス。
やがて彼は頷いた。
『本当は出来るのだが…。
実は召喚獣だからこそ面倒な点があってな。』
「面倒な点?」
僕が聞くと、プロメテウスやアテナ、アポロンもゼウスの言いたいことが分かったのか視線を逸らした。
『そのー…マスター。言い難いのだが…
マスターの現状だと私のスキルの1部にある程度ロックが掛けられててな…?』
(本当はマスターの強さに解除出来そうだから試みているのだが…
システムが相手だとシステムに作られた召喚獣にとっては難関だ。
それでも私がここまで悩むとは…!
私は何を施錠された?まるで記憶喪失だ。
全知全能ともあろう私が出来ぬ事があるなど許されん。
マスターを不安にさせる訳にはいかない!)
マスターに縛られる最高神…。
召喚獣だからしょうがないのか…?
ゲームの時そうじゃなかっ……あ。
そっか、ゼウス確定は後半のはず…。
というかクリア手前の最後の召喚でカッコよく出るはずだったんだ。
そりゃあ主人公のレベルは上がっているわけでゼウスのスキルロックは外れていた。
今回は初っ端で来てくれたからそういうことがあるのか…!
つ、つまり僕が弱いせいでゼウスは力を制限されているってこと??
「そんなぁ…」
『すまぬマスター。固定スキルの1部だけロックされている状態だ。
今の私に人間の内心や過去は見えん。』
「1部って具体的には?」
『……1部は1部だ。
正直、何が使えないのか分からぬ。』
僕も授業で「分からないところはどこ?」
って聞かれて「分からないのが分からない。」って答えたっけ。
それと一緒なんだろうな。
『けっ!最高神ともあろうお方が分からない?
あんなに偉そうだったのにざまぁねぇな!』
けけけっ!
と笑っているプロメテウスにヨシュアが
「そういうプロメテウスはどうなの?」
と聞いた。プロメテウスはギクリとする。
『んぇっ?お、俺は別に??そんなこと?
ありませんけどぉ??』
嘘吐け汗びっしょりだぞ。
『はんっ!私がそうなのだ。
貴様なら当たり前だろう!』
「ちょっとゼウス!」
喧嘩しないでよ!
『あぁん!?んだとてめぇ!!』
「プロメテウス!」
「2人ともやめてよー!」
ヨシュアと一緒に自分の召喚獣を抑えている最中、メルトちゃんの声が聞こえた。
「アテナもスキルロックされてるの?」
『恥ずかしながら…。』
「私が弱い証拠ね!頑張って強くなるから
見ててちょうだいねアテナ!」
『勿論ですとも。』
自分が弱い証拠…ね。
その通りだな。僕が弱いからゼウスに迷惑を掛けているんだ。これから…頑張らないと。
決意したその時、扉が開いてヨガミ先生が
首を掻きながら戻ってきた。
「お前ら、いい案出たか?」
「「「いえ、何も。」」」
「そうか。んで何でゼウスとプロメテウスが取っ組み合いしてんだよ。まぁいいや。」
ヨガミ先生はメルトちゃんに近づくと彼女の頭の上に居たアポロンの顔面を掴み自分の肩に乗せ、
「どうするか、決めた。」
と静かに呟いた。
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