第28話『始めよう錬金術!』
前回のあらすじ
僕を虐めた奴の顔にそっくりな奴を
見逃しました。すごく偉い、僕。
あとメルトちゃんと2人でゆっくり箒に乗って怒られました。
…
ヨガミ先生にくどくどお小言を言われている最中にチャイムが鳴る。
「ヨガミその辺で。次は錬金術だ!
ヨガミ任せたぞ〜!」
スピルカ先生はアストライオスと先に戻って行った。
「はぁ…メルト、無理すんじゃねぇぞ。
お前が無理して体調崩すと俺やスピルカが
上から怒られるんだからな。」
「ごめんなさぁい。」
「まぁ良い。気分が優れないのなら保健室へ行くんだぞ。他の奴らは全員制服に着替え
ローブを身につけて錬金術部屋に移動すること!」
各自返事をして戻る生徒達。
生徒達を見たあと、僕達に視線を戻した
ヨガミ先生。
「悪ぃが俺は先に行く。他の生徒も居るからな。メルト、出るも出ねぇもお前次第だ。
ただ…決断は正しく、早くな。
お前ら任せたぞ。」
メルトちゃんが心配な僕達はヨガミ先生から言われたのもあって彼女の考えが出るまで
一緒に居ることにした。
「う〜…皆ごめんねぇ…。」
イデアちゃんに背中をさすられながら申し訳なさそうな顔で僕達を見るメルトちゃん。
どうにかしてあげられないかな。
吐き気って身体の状態異常だよね。
魔法で何とか出来るかな。
本から杖を取り出すと皆が不思議そうに僕を見る。ヨシュアの目もまんまるだ。
「エクス?
魔導書開いて杖持ってどうしたの?」
「やってみたい事があって!
えーと…状態異常回復は…っと…」
独りでに捲られるページの内容を見逃さないように目を走らせる。
「見つけた!」
続けざまに魔法を唱える。
「【クリアオール】」
下から溢れる緑色の光がメルトちゃんを包み込んだ。
「わぁ…凄い綺麗!」
その場をぴょんぴょん跳ねるイデアちゃんに背中を叩かれながらもメルトちゃんの様子を伺う。
「気分はどう?」
聞くと彼女はニッコリと微笑んだ。
「凄い!治ったわ!!
ありがとう、エクス君!皆も心配かけて
ごめんなさい!元気になったわ!」
と言うメルトちゃんに皆が胸を撫で下ろす。
「良かった…。じゃあ皆急ごう!」
ヨシュアに頷いて僕達は召喚獣を戻してから走って着替えに戻った。
…
ローブは着いたら着ればいいと思い、僕達男子陣はダッシュで錬金術部屋に向かう。
「通りゃんせ通りゃんせ…」
ん?何か聞こえる?
しかし足を止めている場合ではない。
ヨガミ先生は遅れても良いなんて
一言も言ってないからだ。
「行きは良い良い…」
パシンッと硬くて薄い物を勢いよく閉じた音がした。
「な訳ありまへん。廊下は走るな!」
凛として怒った声に驚いてつい足を止めてしまった。
階段から1人の和装の男性が降りてきた。
彼は僕達から見て頭左半分が黒、金色の目、頭右半分が白、菖蒲色の目で長い襟足がかかっている胸元までしかないジャケットの裾やインナーが着物に見える男性。彼はブーツを履いておりコツコツと音を立てながら近づいてきた。
げぇっ!この半分ずつな人は確か…
男性の手には綺麗な鉄扇があった。
「そんな不届き者は
このシオン=ツキバミが許しまへん。」
出たぁーっ!!
アルファクラス副担任、
シオン=ツキバミ先生!
漢字で書くと月喰紫苑先生だーっ!!
超がつくほどの真面目で人気先生ランキング
1位(投票者はプレイヤー)のあのシオン先生だぁーっ!!バレンタインに大量のチョコが贈られてきて運営会社を大変にさせたあのシオン先生だぁーっ!!
「君達は…アルファクラスやないですね。
見たところ…おや、紋章がありまへんね。
うん?」
目が合ったっ…。
「君は確かアストレイのところの…
神クラスの代表やないですか?」
「…ハイ。ソウデス。」
緊張してカタコトで答えると小さな溜息を1つ吐いたシオン先生は眉間に皺を寄せた。
「まったく…アストレイやデイブレイクは
何をしてるのですか。」
シオン先生って地方の言葉が出たり標準語になったり言葉遣いが定まってなかったんだよな。
そこが可愛いって言われてたっけ。
イケメンめ…。
「仕方ありまへん。今回は見逃します。
次やったら承知せんで。」
「ハイッすみませんでした!」
と皆で謝り競歩を意識して錬金術部屋に急いだ。
「アストレイにデイブレイクはいつもこう…。
生徒達、気が緩くなったりせんやろか。
ま、他のクラスがどうなろうが知ったこっちゃありませんけど。」
…
チャイムと同時に部屋になだれ込む僕達。
それを見た生徒達は笑っていた。
「お〜お疲れぇ。」
ヨガミ先生もニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「エクス君!皆!」
メルトちゃんとイデアちゃんが黒いローブを纏って手を振っている。
「お前らギリセーフだ。
メルト達の元へ行け。」
ほっと息をついて言われた通りに動く僕達。
中心にある大きな釜の横を歩き、合流を果たした。机や椅子は無く、皆立っていた。
「私のせいでギリギリになっちゃったわね…
ごめんね?」
「ふっ…気にする事はないさ!」
ローランド君が薔薇を差し出した。
そうそう、普通にいい事言うんだ。
「ありがとう!」
メルトちゃんは彼から薔薇を受け取った。
何か複雑ぅ…!
ヨガミ先生はやり取りを見ていたのか見ていなかったのかは分からないが話し始めた。
「さぁてお前ら。此処では錬金術を学ぶ。
…の前に、スピルカが馬鹿やらかしてクラスの紋章を渡しそびれたから今から渡す。」
ヨガミ先生が白い箱の蓋を開けて杖を振った。
すると箱の中身が生徒達の元へ行き届いた。
五角形の1番上の部分を下にして少し伸ばしたような形だ。
下に月桂樹と中心に十字架が描いてある。
「これは神クラスの紋章だ。
胸ポケットら辺に付けとけー。」
上の方に紫色のリボンの様な折りたたみの磁石がある。これを剥がして、制服の胸ポケットを挟んでもう1回留めるっと…出来た!
あ、そう言えばローブ着てない。
前の生徒を壁にするように中腰でローブに袖を通した。
「紋章は義務付けられているから外したり無くしたりすんなよ。
ブラックリスト載るからな。」
えっ!?こっわ!!
気をつけないと。付けたまま洗濯しないようにしよう。落としたりもダメだ。
「じゃあまず錬金術ってなーんだ。」
『ヨガミが言っても可愛くないねぇ。』
自分の肩に乗っている小さなアポロンを鷲掴んで上下に振りまくるヨガミ先生。
『ごーめーんーてー!』
「ふんっ…じゃあそうだな…
メルト、答えられるか?」
「あっ、私?はい、錬金術は元々黄金を作り出す為の技術です!」
そうなの?メルトちゃんすごーい!
「そう。だが、それも進化した。
お前らに教える錬金術は物の性質を変化させたり、土や石から何かを作ったりと、無機物から無機物を生み出す、変化させるという想像力が必要になる別名創造魔法だ。」
創造魔法…あ、脳が理解を拒み始めてきた。
「人によって言い方が違うだけだがな。
よし、見てろよ。」
先生は石を手鏡に変えた。
「杖伝いに自分の魔力を出しているんだから元の自分の魔力さえ操る事が出来れば出来る。
お前らはまだ性質を変化させる事は難しいだろう。しかし練習してきゃあ出来るようになる…はずだ。」
はず…。
「もし召喚獣が何かしらの理由で戦えなくなったら自分の身は自分で守る必要がある。
これからやるのは臨機応変に必要なものを生み出す授業だ。」
先生は途端に眼光を鋭くさせた。
「決して、
人を殺す為の武器作り魔法ではない。」
先生の最後の一言が重くのしかかった。
自分の魔力が操れないと出来ない…。
出来ても戻せなかったりするのか。
頑張らないと。人を守るために。
「必要なのは想像力。
イメージすることだ。」
そう言ってヨガミ先生は石を生徒全員に魔法で浮かして渡した。
皆石が手のひらに乗ったのに僕だけ頭に乗ってきたけど…。
「じゃあ早速石を何かに変えてみろ。
何でもいいから。
少し前後左右距離空けろー。
石を床に置いてやるんだぞー。」
あばうとだな…。
何でもいいって1番困るやつだよね。
うーーん…うーん?…ダメだ。
想像力とは仲が悪い。周りを見てみよう。
右を見るとヨシュアもシャル君もまだ考えいた。
ローランド君は薔薇が目立つ自分の杖を見ていた。左を見るとメルトちゃんもイデアちゃんも考えていた。困ったなぁ…。
迷った末、ローランド君のように僕も魔導書からゼウスの光杖を取り出して見つめた。
これやっぱいつ見ても綺麗だよなぁ。
ド派手な金ピカだけども。
あ、そうだ。無理だと思うけどもう一本作ってみるとか良いかも!
僕は杖に魔力を込めて石に放った。
杖先の光線が石と繋がる。
出来てもどうせ粘土細工みたいになるんだろうな。と、絶望しながらゼウスの光杖を見つつイメージする。すると眩い光を放ち辺りを包んだ。
眩しッッ!!
…光が収まったのを確認し、石を見ると…
ゼウスの光杖が1本、転がっていた。
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