第55話 サンドイッチおいしい

 アルトピから祖父が帰って来た。

 思ってたより早かったので理由を尋ねると「隠居した者が必要以上に表立って動き回るのも良くない」と言われた。たしかに商会を想像して、いつまでも祖父の顔が思い浮かぶようじゃだめだ。新しい顔、ジェームズ伯父さんに変えていかなければならない。必要な指示などは行ったので、あとは現役のお仕事みたい。


 戻ってきた祖父は、ダーツの存在に気付いた。

 考えたというか元世界の物を再現させたのは僕なのだが、ダーツについては最近ハマっている皆さんが親切に教えていた。

 これはカモが来たと見ているのか、久しぶりに新人が来た古参の歓迎ムードなのかわからないが、祖父も彼らの様になるのはほぼ確定だろう。


 翌日には早くもダーツの大量生産、発売を決めると共に、あわせて大会の開催も決めてしまった。予想通り祖父もあちら側の人間になったようだ。これはもう、大会については任せてしまった方がいいだろう。

 僕が言い出さなくても、大会を開き盛り上げることを考え付く辺り「さすがベテラン商人」だなと感じさせた。


 さすがと思っていたが、別の理由も存在したようだ。

 どうやら女性と思ってなめていた祖母達にボコボコにされた挙句、最年少のラズくんにも負けたらしい。後日、大会を開きそこでリベンジするんだとか。楽しんでいるようでなにより。

 祖父は、今日から猛練習をするようだ。やりすぎて肩や肘を壊さないようにだけ注意しておこうと思う。


 

 同日、偽ポーションの魔道具もバレた。

 別に積極的に隠していたわけではないが、面倒なことになりそうで報告を後回しにしていたのだが、お湯のお風呂があるのに水風呂を用意させる祖母に違和感を感じたことで祖父が気付いてしまった。


「バウ。これはいかん! いかんぞ!」

「うん、知ってる。ジジイにも言われたからみんなにもお願いして内緒にしてる」


 祖父が改めて家族及び、従業員に注意を促した。

 口滑らしそうで心配なのは、アルロさん達護衛の一部くらい。

 だったら教えなければよかったのにって感じだろうけど、オータロウ達の池に残ったのを入れて再利用してるから放っておいてもそのうち気付くことになっていたはずで、だったら最初から教えて「誰にも言わないように」ってした方が効果がある。言っちゃダメなのを知らずに、外で話して罪に問うってのは流石に酷いからね。

 他は、キツネ一家のアリザちゃんやラズくんの子供組は外出しないし、そこからは漏れる心配をしなくてよいだろう。

 


 祖父が帰ってきたし、欲しかった素材をお願いする。

 砂利と泥での建築だが、今のところうまくいっていない。泥を固めるのでそれらしいものは出来るが強度がたりない。

 身近な植物なんかも混ぜてみたが、結果はかんばしくない。

 ということで、植物以外の素材を頼む。

 条件としては「なるべく手に入りやすい物」だ。

 うまくいけば、建物のみならず道を整備する際にも使いたいので量が必要となる。

 ならば簡単に手に入る物でなくてはならない。



 素材の手配をお願いしたら、少し気が抜けたので休憩がてら食堂へ行く。

 何か摘まみたい気分だったのでサンドイッチをこしらえる。

 我が家には、パン太達もいるし肉類が豊富に用意されている。

 その中から、燻製肉を取り出し焼く。あとは、葉物野菜とスライスオニオンかな。

 パンにはさめば、大好物のサンドイッチの完成。

 元の世界だとマヨネーズやケチャップをかけたかもしれないが、案外このままでもおいしい。

 先程から、匂いに釣られた肉食獣達が傍で座っているので、専用に作ってある塩分が控えめな物を焼いてあげる。かわいいけど、食べてる姿は少し怖いんだよね。


 その後ついでに幾つか作り、ダーツをしているメンバーにお裾分け。

 遊びながら摘まめるサンドイッチは好評だ。

 ただ僕は手が汚れるし、そのまま物を触るのが少々苦手。

 ダーツブームと共に、今まで以上にサンドイッチが人気となりそうだが、お手拭きもセットで用意することを定着させたいと思う。

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