第51話 帰路

 伯父家族やあちらの商会関係者に挨拶を終え、帰路についた。

 予定よりアルトピで過ごす時間は短くなってしまったが、実りある時間だったと思う。

 想定より多くかかってしまった費用に関しては、またもや祖父が一時的に負担してくれた。

 従業員も増えた事だし、開発をがんばらなければならない。


 祖父が手配してくれた人員を含め、護衛及び荷馬車三台となった一行は、アルトピを出て順調にオストロイに向け進んでいる。

 キツネ一家もしっかりした食事と約一日休めたことで、多少体調は良くなっているみたいで安心した。今のところ、移動にも無理なく耐えている。

 それでも心配なので、ゆっくり目に移動するようには指示している。

 

 三日目に、初の野営。

 焚火を囲みながらキツネ一家に名前を付けていく。

 キツネ顔の旦那さんは『カーマイン』とした。

 奥さんは『チェリー』で、子供たちは上が姉の『アリザ』で弟が『ラズ』みんな赤に関係する名前となっている。

 たしか日本にいるキツネってアカギツネって種類だったと思う。子供の頃、黄色なのに赤って不思議だと感じた覚えがあった。当時は、信号みたいなものかと自分を納得させたはず。

 キツネ一家も不満は無さそうなので安心した。

 僕にしては今回の名付け、うまくいった方だと思う。

 あとは、帰ってから何の仕事をしてもらうかだが、最悪使用人でもいいかもしれない。


 空いた時間を利用してジジイの転移で実家に帰ると両親に捕まった。

 忙しくしていたのと、ジジイの宿泊先が別だったのもあって久しぶりに顔を出すと心配した両親に説教されたわけだ。

 今までの経緯を説明し、予定より増えた人数分のスペース確保をお願いした。


 パン太とリリーは知らない匂いが多い為か、念入りに匂いを嗅いできた。

 歓迎してくれると思っていたのに、浮気を疑われるような感じになり少し悲しくなった。僕は、無実だ。



 ゆっくりと進むように指示していたが、八日目にはオストロイに到着した。

 さすがに数日一緒に過ごした一行は、会話も増え雰囲気がよくなっている。

 カーマイン一家なんかは、元々が酷い扱いだったので無理を言わない僕たちの態度に安心した部分もあるのだろう。当初、暗い表情ばかりだったが、少しずつ笑顔も見せるようになってきた。

 他の従業員と会話もしているし、このまま仲良くしてくれることを願う。


 オストロイでは、新たな従業員達の生活雑貨を買い入れる。

 本当は一定額渡して自由に買いに行かせてあげたいのだけれど、警備の人数の問題もあり二グループでの行動に留まった。

 僕は、カーマイン親子と一緒に行動する。

 必要な物を買いながら主要な場所を覚えてもらう。そのうち買い物をお願いすることもあるかもしれないからね。


 今日はオストロイに一泊するが、基本的にここは一日あれば往復可能な距離である為、買い忘れた物があってもなんとかなる。

 


 九日目にして、やっと実家に戻って来れた。

 両親や祖母、屋敷の人達が迎えてくれた。

 軽く紹介をして、まずは部屋に荷物を置いてもらう。

 新たな従業員達は、しばらく祖父母の屋敷の別館で過ごしてもらうことになっていた。

 カーマイン一家は、男女別で二部屋。本当は一緒にしてあげたいのだけれど、別館は家族を想定していなかったので大き目の部屋がない。


 グレイに案内を任せている間に、クロ丸とちゃちゃ丸を籠からだしてあげる。

 腕を上に掲げると「飛んで良い」と判断するようになっていて、飛ばしてやると周辺を確認しながら「ピューヒョロロ」と鳴いていた。

 しばらくして、口笛で呼ぶと戻って来た。

 クロ丸は腕、ちゃちゃ丸は肩に乗ることが多い。

 ドムさんにお願いして止まり木を作ってもらおう。先に頼んでおけばよかったが忘れていた。


 荷物を置き、休憩を終えたところで順番に風呂に入ってもらう。

 リア、クレアの女性二人は驚き、そしてとても喜んでいたらしい。案内は、シエンナさんに頼んだ。

 カーマイン一家は、僕が担当。チェリーさんやアリザちゃんには申し訳ないが怪我の状態も把握しておきたかったので自ら立ち会った。

 痛々しい痣もあり、毛が剥げる症状以外にも何とかしてあげたいところ。

 

 帰ってきて最初に開発するのは、ジジイからもらった治癒関連にしようと決めた。

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