第50話 従魔屋

 翌日、まずは従魔を売っている店に向かう。

 さすがに奴隷もとい従業員の皆さんを引き連れてゾロゾロと移動するのは、短時間の方がいいだろうと思い、彼らとは午後に合流予定とした。

 あっちはオスカーに任せたので、今日は違う護衛の人が来てくれている。

 祖父としては、やっぱり専任警備の人を付けないと安心できないらしい。


 従魔屋に着いてびっくり。

 勝手にペットショップみたいなのを想像していたのだけど、動物園に近い。

 時々、どうしても元世界のイメージというか先入観を持って考えてしまう。

 場所は当然、城壁のそば。

 入り口にある小屋で案内役を雇い中へ入る。

 グレイが以前兄さんがリリーを買ったことを伝えると、熱心に説明してくれるようになった。期待できる客だと認識したのだろう。


 狼やヤマネコの魔物、オータロウ達より大きなトカゲタイプに蛇なんかもいる。

 珍しいところで、虫系か。

 馬なんかの騎乗用は、こことは別の馬車とか扱ってる専門店にいるらしい。気になっていたので少し残念。

 水生系も、ここにはほとんどいない。

 あと高額な従魔も、見て回れる範囲にはいないようだ。

 基本的に、どの従魔も落ち着いているように見えた。


 ぐるっと回って来たので(そろそろ終わりかな)ってところで鳥コーナーに到着。

 配置的に、コンビニのレジ横なんかにある物を感じさせる。なんとなく買ってしまうやつ。

 他の従魔に比べると安い値段で、比較的飼い易いため配置されているのだろう。

 欲しがるお金持ちの子供にも勧めやすい。実際、離れているところで、指差しながら何か言っている子供が見える。


 色々いる中で、とある二匹に目が留まる。

 あちらも視線に気付いてこっちを見ている。目が合ってしまった。かわいい。

 まるっこいフォルムの猛禽類だろうか。

 首を傾げ「ピュー」と鳴く。

 トンビによく似た鳴き声に、一瞬田舎の風景が思い出された。


「あれじゃな、先生はここに来たらいかんタイプの人間じゃ。ぜーんぶ欲しそうな顔をしよる」

 ジジイが呆れた顔をしながら言う。

「若様どうしますか?」

 グレイが問いかけてくる。

「いいのかな? いいなら連れて帰ります!」


 ということで、二匹の鳥さんを買ってしまった。

 ここのところ散財しすぎな気もするが、かわいいは正義!

 若いうちに勢い余ってスポーツカーを買ったようなものだと思うことにする。


 黒くて黄色い目がオス。顔とお腹に白い部分もある。

 茶色の普通っぽいのがメス。オスより少し大きくて丸い。

 名前は、見てすぐに決まった。『クロ丸』と『ちゃちゃ丸』だ。

 サービスで革の手袋を貰った。鹿の魔物を使った物らしい。

 片手に二匹は無理だし、両手はきついので肩用の物も購入した。見た目は、アーチェリーの人が着けてそうな片側だけのタイプ。

 ずっと両手を上げた、怪しい人にならなくて良かった。


 何度か手や肩に乗ってもらい確認した。問題なさそう。

 移動中は、籠に入ってもらう予定。

 街を出る際に迎えに来ることにして、従魔屋を出る。


 

 その後宿に行き、まずはみんなで食事に行く。

 同席して「好きなもの頼んでいいよ」っていうと、戸惑った表情をする。

 仕方がないので三種類くらい適当に頼み、好きな物を選んでいくようにした。こうすれば、苦手な物や食べれない物があっても対応できる。


 食事が終わり、新従業員達の服などを買いに行く。

 制服っていうかお揃いの上着を用意したいところだけど、オストロイで作った方がやり取りが楽だろうし、とりあえずは数日分の下着と古着ワンセット。

 元世界の感覚だと、何着か持ってないと不安になるけどこっちだと同じものをずっと着ているのも普通。しばらくは、これで我慢してもらう。

 本当は他にも雑貨とか買いたかったが、やはり都会。少々物価が高い。そのため、基本的な物はオストロイで揃えることにした。


 宿に戻り、明日出発することを伝え別れる。

 そういえば、お土産を買っていないことを思い出し、慌てて探しにいく。

 ドムさんには、お酒。ドワーフってことでこれにしたが、あまり飲んでるイメージはない。

 あとは、両親とパン太にリリー。

 祖母や屋敷の人達は元々こっちに住んでいたし無くていいかな。



 都会はお店が多いので悩む。

 家の人達を想像しても、食べ物以外があまり浮かばなかった。

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