第44話 初めての遠出

 アルトピを目指して移動中。

 いつもと違う景色に、自然ばかりなのだがワクワクする。


 昨日は、初めて遠出をする僕がいるためにオストロイで一泊した。

 祖父達は、ゆっくり店舗の様子を確認できたのでよかったのではないだろうか。


 今回、僕のお供はオスカー、グレイ、ジジイの三名だ。

 従業員を呼び捨てにする練習中なのだが、元の年齢の影響かドムさんはドムさんのまま。ドムさんは内勤だしいいだろう。

 そのドムさんは、残って売り物を作っている。本当は、彼に職人を選んでもらいたいのだけれど、作業を止めるわけにもいかないからね。お土産は、ちゃんと買って帰る予定。


 オストロイからアルトピまでは、直線距離にするとそれ程でもないのだが、途中に山をいくつか挟む。その為、馬車でも通りやすい道を選ぶ必要があり、遠回りするので移動に日数がかかる。といっても、五日から十日もあれば着くらしい。

 元日本人からすると、アバウトすぎる予定なのだけれど、これが普通らしい。

 元世界の話だが、海外の一部では鉄道でも数時間遅れなんてザラだと聞くし、インフラの整備が進んでいないこの地域では仕方のないことなのだろう。

 幸い今回の移動に、緊急性はないので焦る必要はないし、最悪ジジイに送ってもらえば僕だけは帰れる。



 二日目は、道中の村に泊った。

 アルトピとオストロイ間を移動する主要な道沿いの為、この村には宿があり泊ることができた。村人が生活する家屋より若干立派なので、申し訳ない気持ちというか落ち着かない感じがする。


 三日目は、野営の予定。

 この辺りになると、獣や魔物の被害があったりするらしい。

 昼過ぎ、早めに目的の空き地に到着し野営の準備。テントというよりタープだね。それほど寒くないのでこちらの方が主流のようだ。ただ、個人的に虫が怖い。


 一緒に暮らすようになってあまり離れたことがなかったので少々寂しくなり,

ここらで一度パン太達の様子を見る為にジジイに家に送ってもらおうかと思ったら、ジジイはパン太とリリーをこちらに連れてきてしまった。ちょっと混乱しているようだが、僕がいるので安心はしているみたい。

 迷子になったらどうするのかと怒りたくもなったが「リリーは賢いので問題ないだろう」と言う。そういえば、呼べば理解し戻って来る。ついでにパン太にも期待してほしいところだ。

 最悪、ジジイが様子見するし転移で戻ってこれるので、今は彼らと周辺散策を楽しむこととする。


 短時間だけど、僕もパン太達も散策を楽しめたのではないかと思う。

 焚き木も集まったので、そろそろ戻る。

 家の周りよりも獲物が多そうなので、またジジイにお願いして連れてきてもらおう。

 パンタ達を家に送ってもらい、夕食の準備。

 野営では、ホットプレートが役に立つ。

 光る魔道具も、こういった場面で使ってみると意外に便利だ。

 実際に野営を経験すると、必要な物ってのがわかってくる。

 やっぱりまともに水を得ることができる効率の良い魔道具が欲しいところだ。

 あとは、魔道具じゃなくても乗り心地の良い馬車や、快適なテントなんかもあればいいけど、そんな物まで開発している余裕は無い。ついでに言えば、頻繁に旅に出る予定もない。


 

 その後、野営や村での宿泊を何度か行い、大きな問題もなく七日目にアルトピに到着した。

 母さんから、伯父さん宛てに手紙を預かっているので渡さねばならない。

 伯父さんどんな人なのだろう。

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