第57話 大量発生2

 ハタノはキメラだが、ベースはカエルだしナメクジ食べてくれるんじゃないかと連れてきたが、それほど役に立たなかった。

 多少は食べさせることに成功したけれど、そもそもナメクジの量が多いのでハタノのサイズじゃ処理しきるのは無理。

 わかっちゃいたけれど、思い付きと勢いでやってみた。これも経験だ。


 元世界の知識からいくと、農薬が無難なのだろうか。とはいえ、自分たちの口に入る物によくわからない薬を使うのも怖い。

 何か良い方法がないかと母さんに聞いてみたが、ここまでの大量発生は経験がないらしい。そりゃ、うちは生粋の農家ってわけでもないから知らなくて当然。知ってるってなると、大量発生は結構な頻度で起きてるってことにもなっちゃうもんね。

 どこかからの情報を待つのが無難なようなので、木の棒を箸のように使いナメクジを地道に駆除していく。時には、諦めることも大切。

 大変なので、カーマイン一家にも手伝いの指示をしている。子供達は、意外にも楽しそう。最初の内は、楽しいかもね。毎日となると違ってきちゃうけど。


 桶の中の大量のナメクジ。

 放っておくと逃げ出してしまうので、潰す。

 液体っぽいので泥を混ぜてみるが、汚いナニカにしかならなかった。もしかしたらと期待したけれど、残念。

 しっかりと火で乾燥させて、ポイする。たしかやつらには、寄生虫がいたはず。

 


 翌日、さすがに昨日がんばったのでナメクジは少な目らしく、母さんに呼ばれなかった。また数日後に増えてたりとか、そんな感じかもね。

 午前中の内に自分の仕事は終わらせたので、不気味で放置していた素材を取り出す。

 カエル素材と一緒に来たものなのだが、ムカデっぽくて避けていた。眺めているとジジイが寄って来た。


「そりゃ蛇の骨じゃな」

「へぇ。蛇の骨って初めて見るかも」


 蛇の死んだあとって、道路で潰れてるイメージしかなかったので少し驚いた。

 離れて見ると『龍』のようにみえ、嫌悪感は薄らいだ。

 ゲームの中に、こんな感じの見た目のモンスターがいた気がする。


「恐らく大量にカエルが発生しとる影響で、ヘビも見つかりやすくなっとるのかもしれんな」

「あー。それはありそう」

「しかし、これはまずいかもしれん」

「ん? どういうこと?」

「ナメクジにカエル。カエルにヘビ。となると、その次も考えられるということじゃな。森の奥から何か出て来ることも考えられる」

「ということは、更にその先もってことになるね。領主様達が理解されているといいけど、どうだろう」

「さあ。まあ先生が危なくなればワシがなんとかするし、大丈夫じゃ」

「あー、うん。ありがとう」


 話の途中で不安になったが、ジジイがいればなんとかなりそうな安心感はあるんだよね。

 だからと言って、自分たちで何もしないってのはダメだ。

 まずは、柵の強化。壁を作ろう!

 建物とするのは強度的に問題があったが、簡易的な壁とするなら砂利と泥でもないよりはマシ。


 祖父達に報告する前に現地調査。

 どこからどこまで柵や壁を設置するか考える。そういえば、大変だけど堀も効果的だろう。幸いなことに、水路もあるので水堀にすることも可能だ。

 ただしトカゲ園も含めると結構な広さがある。水路を作るのにもあれだけ苦労したのだから割と急ぎでとなると、難しいかもしれない。


 ウームと唸りながら祖父の元へ行き、食物連鎖による生物の発生や移動の話をする。改めて言われてみると、祖父達も気付いたようで「過去の経験からあり得る話だ」と協力してくれることになった。

 すぐに動けるわけでもないので、まずは計画するところから。

 地面を掘り起こすだけなら職人じゃなくても、暇そうな冒険者を雇うのもいいかもしれないという話になった。町から少々遠いので馬車の用意が必要だけど、その辺り祖父達は得意か。



 町の話が出たので、制服を作る案があったのを思い出した。

 採寸の問題があるが、全員を町に連れて行くのは大変。

 祖父かだれかが町に行くときに一緒に行って、仕立て屋さんに来てくれるよう交渉してみよう。

 それに、自分自身でも町でこの状況がどう騒がれているか生の声を聞いてみたい。

 

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