第56話 大量発生

 頼んでいた素材が届いた。

 持ってきてくれた商会の人が話していたが、オストロイの橋の周りに人が集まっていたとか。

 なんでも川にカエルが大量発生しているらしい。

 そう言われると、たしかに我が家の周りでもカエルを見かける頻度が高くなっている気がする。


 届けてくれた人が帰ったので、笑顔を消してトカゲ園を見に行く。

 偽ポーションの残りをここに流しているので、その影響かと心配したのだが、トカゲ園の池ではなさそうに思える。一安心。

 ついでにハタノの様子を見に行くが、特に変化はなさそう。キメラになってるので他のカエルとは違うのだろう。

 まあ生物の大量発生というのは度々起こるものなのだし、今のところ蝗害のような影響は騒がれていないのでしばらく様子を見ることにした。今年は、大量発生の年なのかもしれない。



 カエルのことは一旦忘れて、届いた素材の確認をする。

 カエルの素材がいっぱいだった……。

 手に入りやすい素材を頼んだけれど(こういう事ではないんだよなぁ)といった感じ。「恒常的に手に入る」という意味で伝えたつもりだったが、言葉足らずだったようだ。

 カエルのインパクトで見逃すところだったが、他にもいくつか素材があるのでしばらく色々と研究してみるとする。


 数が多いので、とりあえずカエル素材から使う。世界樹みたいに躊躇する必要が無くて、ある意味助かる。

 いくつか種類があるようだが、とりあえず手にしたのは僕の手のひらサイズのもの。皮のみで肉部分は綺麗に剝ぎ取られている。今頃だれかのお腹の中に入っているのだろう。中身が無い状態でこのサイズなら、元は大人の手ぐらいだったのかな。

 いつの素材なのかわからないが、思いの外プニプニとした弾力が残り、触り心地は良い。時間が経てば乾燥しそうなものだが、今のところ不思議と元の状態を維持しているようだ。

 

 一通り触ってみた後、ジジイを呼んで特徴を聞く。

 魔物の素材もあるようで、そちらは魔道具にも使うので多めに分けておく。


 成功するとは思えないが、普通のカエルの素材を砂利と泥に混ぜていく。

 案の定、うまくいかない。そんなもんだよね。

 

 魔物素材の特性も調べる。

 熱を加え乾燥させた後水につけると、劣化するがある程度元に戻る。

 なんだか塩をかけられたナメクジのような印象を受けるが、こちらは何かに利用できそうな気がする。

 ただこちらも建築素材としては、ダメっぽい。

 しかし弾力を維持できて、多少乾燥したところである程度復元するのならば、何かと混ぜて強度をあげゴムタイヤの代わりに出来そうな気がする。

 こうなると建築関係は一旦おいておいて、カエルの魔物素材を研究をしたくなってしまう。


 馬車の車輪に装着させるのも良いだろうが、やはりバイクのような物を作りたい。

 自分用の馬も欲しいのだけど、適当に選ぶのもなにか違う気がするしそのうち出会いもあるだろう。ということで、まずは気軽なバイク。

 先日の銃を作ろうとした時の経験から、現状ではエンジンのような物は無理だろうと推察できる。そもそも細かくエンジンの内部構造を知っているわけでもないし。

 となると、強風を動力として動かすタイプになる。

 筒の様な物にプロペラを取り付け、それを動力としてタイヤを回すのが無難だろうか。直接風の勢いで進むのは、出来なくはないだろうが遅そうであるし、何より土ぼこりをまき散らす迷惑な椅子みたいなになってしまう。


 多少形が見えてきたところで、毎度おなじみの属性問題だ。

 それぞれ想像するが、影響が少なく無難なのは光になるのかな。

 動力部分を覆う素材に気を付ければ、他の属性に比べると問題はなさそう。光属性の効果は無駄になるが、仕方がない。


 とりあえず「試作、試作ー!」ってことで、ドムさんに筒とプロペラっぽい物をお願いに行く。

 やりとりをしてわかった。

 動力部分の強度を考えると、ちゃんとした炉があったほうがいい。

 炉を作成するにも大金がかかる上に、職人さん達は例の鉱山関係で手が空いていないと思われる。「ならば強度のある魔物素材を!」と言いたいが、検証する時間や費用を加味すると職人さん達の手が空くのを待った方がマシだろう。

 仕方がないので「炉を自作だ!」というのも無理だろう。

 結局のところ、泥を何かとまぜまぜして炉に適した素材が出来れば一石二鳥となるわけで、スタートに戻って来た感じがする。


 

 トボトボと歩いていると、母さんに捕まった。

 カエルだけじゃなくてナメクジも最近多いらしく、畑で駆除を手伝ってほしいようだ。

 さすがにパン太達もナメクジなんか食べないし、手作業しかない。

 田んぼのカモならぬ、畑でナメクジや害虫を食べてくれる生物がいればぜひ我が家で労働して頂きたいものだ。

 なんて思っていると、カエルがナメクジを食べてるのを目撃!


 もしかしてカエルの大量発生の原因、ナメクジだったりするのだろうか……。

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