第14話 六歳

 先日、兄さんの家もとい小屋が完成した。

 実家から三十分くらいの距離で、所謂山小屋。

 この場所は、僕の行動許可範囲にも含まれるようになった。

 オータロウ達には、元世界の一般家庭にあるガレージみたいなスペースが与えられている。

 当初、兄さんの引っ越しで寂しくなるかと思ったが、頻繁に帰って来るので以前とあまり変わった気はしない。子供部屋が広くなったくらいか。


 そういえば、例の神の啓示について兄さんに聞いてみたが、知らないらしい。

 あと薄々感じていたが、僕の働いていたホテルとは関係ないそうだ。

 お互い前世のプライベートについてはあまり詮索しないので、未だに知らないことも多い。

 兄さんと僕の転生は関連がなさそうだが、別ルートでの異世界転生ってことになるのかな?

 元の世界で亡くなったと考えられる時期としても、五年も差はないようだし不思議だ。

 ついでにいうと、僕たち兄弟以外にも『転生者』がいる可能性があるってことは、理解出来た。あくまで可能性だけど。

 居たとしても、会いたいとは思わない。ホテルの人達とも親密ではなかったし。元世界の家族や親友がいるなら話は別だけど……。



 今日は、六歳の誕生日。元の世界では、小学生か。

 多少身長も伸びたし、運動能力も上がってきている。

 スキル関係は、あまり変化なし。制限の多い生活では、しょうがない。

 成果は、川で拾った素材が増えてきたくらい。たまに、父さんでもわからないような物もあるけど、とりあえず倉庫に入れている。

 

 夕食は、兄さんもこっちに戻って来てのお祝いだ。

 今年はすでに、みんなのプレゼントを知っている。

 両親からは、装備品。

 鈍器をお願いした。簡単にいうと『とげとげ付きの金属バット』だ。ただし、子供用サイズだけど。

 元世界の僕らの父親世代だと、地域でのスポーツってのがまだまだ盛んだったようで、結構な割合で家に金属バットがあった。

 我が家にも当然あって、子供の頃によく振り回していた。

 いきなり『剣』を持っても扱えないし、教えてくれる先生もいない。

 ならば慣れ親しんだ物の方が、まだマシかなってことだ。

 兄さんみたいな槍も考えたけど、まだ体格的に厳しそうだった。

 とりあえず、ブンブン振り回して身体も鍛える作戦。


 兄さんからは、先日狩ったアナグマの爪。

 アクセサリーにすればよいのだろうか。それとも、いずれ素材として役に立つだろうか。相変わらず、悩ませるプレゼントをくれる。



 最近、山や森に魔物が増えているらしい。

 それに伴って、冒険者の出入りも増えてきている。

 我が家の周りでは、それほど変化を感じることはない。

 だが、神の啓示の一部『災い 芽吹き 大地 荒れる』の兆候だったりしないだろうか?


 考えすぎてしまうのは、僕の悪い癖なのだろう。

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